Neetel Inside ニートノベル
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顔の嵐
十一の思惑

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 =十一人のカードリスト=
 ・玉木 宏 ・佐々木 蔵之介 ・遠藤 章造 ・森田 剛 ・櫻井 翔 ・亀梨 和也
 ・戸田 恵梨香 ・蛯原 友里 ・持田 香織 ・森 泉 ・奥菜 恵
 出揃ったカードについて、それぞれ勝手に相談し合っている。あくまでも、栄和のこの提案は結束なんてものではない。少しでもライバル達のカードの情報を仕入れ、それを今度のゲーム展開に活かす。十一人全員が自分以外の10人を出し抜こうと目を光らせている、上っ面だけの同盟。もちろんそれは言うまでも無い大前提であり、その事についてお互い非難するつもりもない。
(……とりあえず、“森泉”を持っている奴は消えたな)
 まず皆の意識が集中したのは“森泉”のカードだった。出揃った十一種のリストの中にあって、明らかに他と比べて弱い。その判断が正しいのかどうかは別にして、“森泉”について共通意識を抱く十一人。
(あ~あ、やっぱり皆カード強いなあ。こりゃー、この中でのビリは私なのかなあ)
 “森泉”の持ち主は特に悲観する様子もなく、冷静に自身の置かれている状況を理解した。
 恐らくは、それぞれの容姿レベルは拮抗しているであろう十一人。故にその中の一人だけが弱いカードを握っている場合、総合レベルで他を勝ることは難しい。
(……俺のランキングだと、この十一枚の順位はこう)

 =十一枚のランキング(栄和作成版。左から強い順)=
 戸田恵梨香 櫻井翔 玉木宏 亀梨和也 持田香織 蛯原友里 佐々木蔵之介 森田剛 奥菜恵 遠藤章造 森泉

(戸田恵梨香から奥菜恵まではほぼ等間隔。少し離れて遠藤章造、更に離れて森泉。総合順位では森泉を持っている奴が十一位、遠藤章造を持っている奴が十位となる可能性が高い……更に、この場にいる11人のランキングはこう)

 =十一人のランキング(栄和作成版)=
 後藤仁 東山桃子 高坂千里 中村彩乃 本条亜由美 大川光介 吉向しのぶ 栄和真太郎 五日市美花 麻柄杏一 六田翔之介

(後藤や東山。あの辺りが戸田恵梨香や櫻井翔を持っていたらお手上げだが……果たして……)
 細めた視線で十人の挙動を確認しながら、静かに思考回路をフル回転させる栄和。
(――俺に配られたカードは“玉木宏”。自分の顔とも合わせて上位に食い込む自信はあったが、周りがこの面子では……。前提としてこのゲーム、カードは男子生徒には男性芸能人、女生徒には女性芸能人のカードというように同姓のカードが配られている可能性が高い)
 栄和が立てていた一つの仮説。たしかにここまで発表されたドロップアウト者の所持カードは、この法則に則っている。
(そしてこの場の比率。男子六人女子五人に対して、男性芸能人と女性芸能人の数がぴたりと一致している。……これは恐らく偶然ではなく、そしてそう仮定すると……、例えば後藤に“遠藤章造”が配られていた場合、俺でも後藤を上回れる可能性は高い)
 大川と談笑している後藤にちらりと目をやった。
(しかし女子は最も俺に都合の良いパターンで配られていたとしても、『五日市+戸田』が『栄和+玉木』を上回る可能性が高い……)
 ギリリ、と歯を軋ませる栄和。
(クソ……、“戸田恵梨香”の存在……。これで、少なくとも俺が総合一位である可能性は限りなく低くなった)
 どん。周りに聞こえない程に音を抑えながら、栄和は机に拳を下ろした。
 もちろん、前提からして栄和のランキングが間違っているという可能性も高い。が、他にこれ以上の情報が無い以上、それぞれ自分で作ったランキングだけが唯一の頼り所なのである。
「あらら……、これキッツイねえ。“HYDE”も“加藤あい”もここには無いんだあ」
 本条 亜由美(ほんじょう あゆみ)。“普通に”美人という表現の似合う正統派美系。ほぼ完璧に整った顔のパーツは若干薄い顔の印象も与えるが、栄和のランキングでも五位に名前を連ねている美人。
「私はここの人達を意識するだけで精一杯だよもう」
 そう言って本条はとても自然に笑顔を振り撒いた。
 実はこの“HYDE”と“加藤あい”のカードはほとんどの生徒がトップ5以内に想定しており、特に栄和のランキングでは“HYDE”が芸能人一位、“加藤あい”が二位となっている。
 栄和は荒々しく舌打ちをした。
(HYDEと加藤あいなら、ここの十一人以外が持っていたとしてもそいつは総合順位でかなり上に来る……。その上他にも柴咲コウ・木村カエラ・上原多香子・福山雅治・小池徹平・岡田准一……。まだまだ上位のカードが残ってやがる)
 栄和が深刻に頭を悩ませている後ろで、東山と吉向の二人は「カード教えっこする?」なんて談笑している。
「はっは。もう、皆心配症だなー」
 陽気に笑う後藤。ぐいっと栄和の肩を抱き寄せると、ポンポンとお腹を叩いた。
「サカちゃんサカちゃーん、大丈夫だって。ちゃんとカッコイイからさー。この十一人が総合順位の一位~十一位独占なんてなことになってんじゃないの!?」
 後藤のその陽気さは天然なのか、それとも余裕ぶって見せることで威嚇しようとしているのか。栄和にその真意は計れなかった。
「えーほんとー!? 大丈夫かなー」
「ダイジョビダイジョビ。モモちゃんも亜由美もブッチギリで可愛いってば! こりゃ俺も敵わないかなー!」
 今度は東山と本条の肩を両手で抱き寄せて、口を大きく開けて笑う後藤。東山も本条もいきなり抱き寄せられたことについて不快感は無いようで、キャーキャー言いながら笑っている。
「と……とにかく、今後も何か分かったら教えあってこうな。この十一人はライバルでもあるけど、協力すれば皆で大金を得つつ生き残ることもできるんだからさ」
 もちろん、そんなのは栄和の詭弁。自分が何かの情報を得たとしても他の連中に教えるつもりなど全く無い。東山など、浮かれ気味の女子連中ならば自分の言葉を鵜呑みにして一方通行的に協力してくれるのではないかと期待してのことである。
(……ま、そりゃあお互い様だけどな。五日市のブスを助けることにもなるのは癪だが、五日市が持田香織のカードを持ってるってことは誰にも教えてやらねえよ)
 六田は細目で五日市の目を見ながら、パキッと首の骨を鳴らした。
「……フン」
 鼻で笑って目を逸らす五日市。
『第五節面会時間終了となります。別室で面会を行っている皆さんは本教室にお戻り下さい』
「お、時間か」
「ど~にもねえ。どうせこんな段階で死ぬ訳無いし、イマイチ退屈なんだよなー。体育館でバスケでもやってたいっつの」
 また、わざわざこういう事を言うのは六田。
「あはあ~。じゃあ今回誰死ぬか賭ける?? やる? 賭けちゃう??」
 大川 光介(おおかわ こうすけ)。人懐こい性格で誰からも愛されてはいるが、ブラックジョークを自重できないきらいがある。身体障害者をネタにして笑い話にしたり、腕の無い人がTシャツを着ている姿を携帯で撮影して待受け画面にしていた事もある。もちろん、それが唯一大川の欠点なのかもしれないというだけの話で、クラス一を争う程の人気者でもある。
「俺はねえ、さーすがにそろそろ佐藤が危ねえと思ってんだよ。ブスで漫画オタクだから」
 そう言ってケラケラと笑う大川。
「良い読みだ。……でも、二人とも佐藤に賭けるんじゃ勝負にならないだろうが」
 すると、大川と六田はじっと真剣に見つめ合った。口も閉じ黙り込んでしまう。
 そして一拍置いてから、大口を開けてギャハハハと笑う二人。
「…………」
 誰も咎めようとしないその二人の様子を、高坂だけが睨むようにじっと見ていた。

       

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