Neetel Inside ニートノベル
表紙

わが地獄(仮)
それでも俺は、俺を信じてくれた人を信じたい

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 批評家ほど生きている価値のない男もいない。やつらはいつも他人の粗探しばかりして、常に自分の優位を保とうとする。どんなものも自分の分析眼にかかれば欠損を見つけ出して大衆の前に晒し上げ、そうして自分より愚かな連中に正か誤か教えてやるのが社会正義かなにかだと勘違いしている。よく思い出せ。お前らみたいな連中は、いつだって自分自身が空っぽだっていうことを隠そうと躍起になっているだけだ。お前らみたいな連中は、自分に何もできないというただそれだけの真実から一歩でも遠く逃げ切りたいのだ。お前自身がお前の弱さだというのに逃げ切れると思っているその馬鹿さ加減が、お前らが否定する『無駄なことばかりしている阿呆』には哀れに思えるんだよ。
 やつらはいつも無駄を嫌う。常に正しいことを効率よくやれと言う。それが誰にとっても自然なことだと。自然なこと? お前らごとき低能に何がどう自然か、気ままに流れる心の何がわかるというんだ? わかりもしないことを「こうだ」と断言できるのは天賦に羽交い締めにされているやつだけだ。お前らは自分が偽物だということを隠すため、そいつが本当に立つべき壇上を奪って相手を永遠に蹴落とそうとする。最低の生き方だ。お前らには生きている価値がないんだ。誰も言ってくれないなら俺が言ってやる。
 死ね。
 死ぬことだけがお前の至福だ。常に飢えた獣のように眼を血走らせ、よだれを垂らし、破裂しそうに興奮した睾丸をぶらさげて狂ったように走り回る。お前らの正体がそれだ。無様なんだよ。
 お前らはいつも何かを成し遂げようとした男の邪魔をする。挑戦しようとする者には臆病風を吹かそうと聴きたくもない常識論を影のようにつきまとってそいつの耳の中に流し込み、失敗し膝をつきそれでも立とうとしているやつには背中から蹴りをくれて大声を上げ人を集めそいつの恥を永遠に消えない傷にする。そうした時にお前らの心に吹くのは爽やかで心地のいい優越感の風だ。お前らはそれが欲しくて欲しくて仕方がないんだ。己自身のちからでそれを奏でることが決して出来ないから。
 そんな生きている価値のない男がなぜ消えないかといえば、女という生き物が馬鹿だからにほかならない。女は決して自分で物事を決めようとしない。いつだって誰かがケツを拭いてくれると思っている。いつだって誰かに責任をなすりつけ自分を慰めどんな残虐な行いも「仕方ない」で済ませることができる。恐ろしいほどに残忍なこの生き物には、知能がどうしても足りない。その知能を埋めて欲しがっているこの生き物に、お前ら批評家はいつだって道を示してみせる。これはこう、あれはだめ。馬鹿な女はすぐに騙され、騙されても相手の責任にすることの快感を麻薬のように覚えていき、やがて最低限のことも自分では決められずに男の名前を呼び続けては用件だの自分の気持ちだの愚にもつかないゴミを嘔吐し続ける。お前らは女が吐くのを見るのが好きな変態野郎だ。女がどうすればいいのか道に迷い指針を欲した時に、お前らが与えるのは嘘だ。心地のいい嘘を与えて相手がそれを無心に信じてくれるのが気持ちよくて仕方がないのだ。そうして決して自分には損を被らないようにして、それが己の賢さと男としての価値の表現方法だと思い違えている。お前らなんぞは掃いて捨てるほどいる代替品のパーツに過ぎない。代わりの効かない逸材は、産まれた時からお前らゴミを一歩も二歩も超えている。お前らがどうして俺たちに恐怖するかと言えば、所詮は決して超えられぬ理外の溝があることを認めたくないからだ。それを認めれば、お前は永遠の不具者になるからだ。
 片端は俺じゃない。
 お前なんだよ。
 だが俺は、いつだってこの批評家と友達になりたかった。感情に身を任せて全てを力でねじ伏せようとする俺を諌め、常識と非常の境目を分析してくれ、俺が俺の道をゆく上での最高のパートナーになってほしかった。俺はお前らに、俺に知らないことを教えてほしかった。俺がしくじる未来ではなく、お前ならこれができるかもしれないとアドバイスしてほしかった。そうすれば俺達は最高の友人になれただろう。だがいつだって批評家は俺を拒絶する。所詮、やつらが俺たちに近づいてくるのは、分析できないものに火影が当たる程度に近寄って、それを分析し解体し顕微鏡で念入りに痛罵できる傷を探して、最後には俺たちを攻略してしまいたいからだ。処理し解析しキングファイルの中に綴じ込んで、『俺はこいつを分析した』とラベルを貼って終わりにしたいからだ。その分析が違っていたって構いはしない。なぜならその分析はやつらが俺たちに絶対に勝てないというファクターを除外した自分勝手で汚物くさい計算結果に過ぎないからだ。やつらは俺たちを批評して、勝ったつもりになろうとしている。だが気をつけろ、そんな小賢しい真似をするやつが、何かに勝ったと心の底から感じることなど決してない。お前らは永遠に、ほかのなにかで誤魔化し続けるだけの懲役囚だ。
 お前ら本当に自分が幸福だと思うのか?
 こんな惨めな生き方を俺に分析されて、まだニヤニヤ笑って逃げるのか? お前にできるのはそれだけか? いつだって味方になってくれる頭の弱い馬鹿を従えて、たったひとりで死地へ赴くことなどこの世界には存在しない夢の道だと思っている。それをやれば、お前はまぎれもなくしくじるだろう。何一つ上手くいくこともなく、お前のお気に入りの仲間どもがニヤニヤ笑って「それでいいんだよ」と言ってくれるだろう。まだわからないのか? お前は軽蔑されている。都合のいい賑やかしだから生かされているだけだ。本当のお前なんて、誰の興味を惹くものか。空っぽの器に何を注ごうともせず、他人がやった行為を狂った万華鏡に写すだけのお前に、価値なんてものはないんだよ。
 価値は自分で創るものなんだよ。
 ほかの誰にも代行してもらえない作業なんだよ。
 しくじることがそんなに悪いことか? しくじらずに何かを為すことができると思うのか? 俺は思う、失敗が全てだと。どう失敗するかが本当に価値あることだと。それは負け惜しみでも強がりでもない、あえて言うなら勝つことには、正しい行いに従うことからは得るものがあまりにも少なすぎる。お前らお得意の効率に則ってないんだよ、勝つなんていうくだらん積み木は。勝つという一句をはめ込んで終わりのワンショットパズルだ。何が楽しい? お前らから何も産まれてこない理由が少しでいいからわかったか?
 なぜ恐れる。
 どうして怖がる。
 苦しむことがそんなに嫌なら、せめて他人を苦しめないようにすることだ。それがいつかお前に価値を与えてくれるかもしれないチャンスなのに、どうしていつもそれを棒に振る? 深呼吸して、失敗してもいい、そう思ってやるだけだ。挑戦なんて全部それだ。どう勝つか、いかに完璧な計画を練るか、そんなのはまぐれ勝ちしただけのクソボケ勘違い野郎にやらせておけばいい。勝つか負けるか、うまくいくかどうか、そんなことはどうだっていい。勝てないとわかっていてなぜやるのか己自身で決められなきゃ生きてる意味なんかどこにもない。どんなに否定したって、現実は変わらない。俺の現実も、お前の現実も。
 俺はお前らのことが嫌いじゃなかった。
 確かに軽蔑はしていた。所詮は恵まれぬやつと思ってもいた。だがそれは否定されたからだ。もし何もかも否定だけされていなければ、俺はお前らの魅力を感じてみたかった。知ってみたかった。だがもう遅い。何もかも終わりだ。
 俺は王様でいることしかできない。人口が増えすぎて、集落の中に一匹いるだけのはずの王がこの社会には大繁殖していてとてもカオスだ。戦争で調整することもできない。自殺や他殺で少し減る。だがそれでも俺たちの遺伝子は王を産む。善き物を創ろうとする人種を。
 俺は確かに身勝手だが、お前はどう頑張っても偽りの王だ。何かを導くことはできない。お前の心にあるのは1+1=2、それだけだ。俺のことは嫌いでもいい、否定してくれても構わない。それでもお前が本物になることは永遠にないし、みんながお前は偽物であることを知っている。それは通貨みたいに流通している情報で、お前はたぶん恥ずかしくて眼を開けることもできないと思う。もしもそれでも眼を開けられるなら、お前の心はもうこの世界のどこにもない。死者の心だ。
 それでもお前は俺を拒むだろう、いつものように鼻で笑って、俺が次にどう言い返してくるかを冷たく予想して。
「知ってる? お前がやってることって、ぜんぶ無駄なんだよ。無駄だから誰もやらないの。そんなに頑張ったって結果につながるとは限らないし、諦めた方がずっと利口なのは誰だってわかるだろ」
 そして少しお前はイラついて、
「あのさ、なんで俺の言ってることがわかんないの?」

































「お前なんか少しも信用してねぇからだよ」






























































「あっそ」







       

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