わが地獄(仮)
紅白を見て、すずもんが倒れて、とりあえず俺はみかんに手を伸ばした(エッセイ)
今泉が休養しちゃいましたね。
最近、欅坂にハマって、昨日も紅白ですずもんが倒れてみかん喰いながら愕然としてたんですけど、やっぱり不協和音はやると必ずダメージが残るみたいですね。てちも頭から落ちて放送事故みたいになってましたが、聞く側は無事でもやる側にとってはとんでもない曲なんだろうなあと思いました。
今泉はドクターストップ発表ですが、紅白に体調が間に合わなかったのか、それが心身どちらのバランスなのか、凄い心配ですが、あのエネルギーの中に万全の状態ではなく挑むのは危険だったんでしょうね。もし出てたらすずもんと一緒にぶっ倒れてた気がします。そういう意味ではやむをえない休養だったのかな、と。
心配なのは、このまま卒業しちゃったり、ゆいちゃんずとして独立したりしちゃわないかなあっていうところですよね。今泉は小林とのつながりがなかったら欅坂に戻ってこれなかったんじゃないかなとインタビューを読んでいて思いました。もともとグループ活動に納得していない部分があるようなことをカタカナケヤキの虹彦先生が言ってましたが、なんとなく当たってそうな顔してましたよね。
もともと今泉はローカルアイドルだったみたいで、欅坂には即戦力としてすずもんと一緒に入って、すずもんはダンス、今泉は歌唱力でいわば推薦組みたいな感じだったんじゃないかと思うんですよね。それで素人出発の平手のサポートとしてサイレントマジョリティーのフロント両サイドに置かれたわけですが、今泉的には最年少センターが終わったらいずれサードシングルあたりで自分がセンターに、とか考えてたんじゃないかと思うんですよね。まさか平手が愛知から落ちてきたダイヤモンドだとは予測してなかったでしょうから。
だからずっと平手がセンターで、かろうじて保っていたフロントからも落ちて2列目になり(欅坂は平手をセンターに据えて支柱にさせた分、全員にフロントを経験させる変則シフトでしたから、ずっとフロントというのはありえないわけで、むしろ3列目まで落とされなかったと判断してもよかった気がしますが)、ファンからは「センターになるんでしょ?」などとテキトーこかれて傷ついたみたいで、なんというか、ツイてないですよね。本来であればセンター適性が高いはずなのに平手がいるばかりに永遠のNo.2止まりだったわけで、鳴り物入りで入ったエース候補としては精神的に失調してもおかしくない。次のシングル発表のたびに、尾関ならともかく(尾関好きだけど)今泉は「もしかして次こそ自分がセンター……」って覚悟しながらポジション発表聞いてただろうし、「自分がどこか」だけじゃなく「センターかどうか」までありうる位置にいた今泉だからこそ病んだんじゃないかって思うんですよね。
すずもんとかは平手と同じ憑依派っぽいのでセンターやりたくないだろうから発表後は一息つけるんですが、今泉はその逆で、唯一深刻なダメージを受けざるをえないメンバーだったと思うんですよね。いやもしかしたら守屋もセンターになれないたびに泣いてたのかもしれないけど。
なんで急に欅坂の話をし始めたかっていうと、やっぱり俺も平手の眼力に魅了されてハマった口なんですが、でも話題にしたいのは今泉なんですよね。俺を知ってる人からすると「ああ、顎は平手好きそうだよね」になると思うし、実際そうなんですが、俺は推しメンは今泉なんですよね。
平手は確かに凄いというか、あそこまで自分を捨てれるっていうのは天性のモノだとは思うんですが、あのままいけばいつか限界が来るような気がします。どこかで休養とか、自分を仕切り直して何をやって何をやらない、みたいなのを決めないと(バラエティでほとんど喋らなくなったのも、そのへんの線引を自分でしたのかもしれない)潰れると思うんですよね。
欅坂は、俺は箱推しの面もあるんですが、それでも平手がいなければここまでのグループにはなってないだろうなとは思います。いまのところ全シングル連続センターで、心身ともにズタボロになっている平手をいつセンターから外すのか、外してやっていけるのか、卒業するのかしないのか、なんかアイドルグループというより危険な新兵器を運用している反政府組織みたいな感じですが、でも平手は外したくても外せないんだろうなと思うんですよね。実際にあれだけ凄まじいパフォーマンスをしてみせられて、外せば一気に悪くはないけどふつうのアイドルになってしまう。俺は平手がいなくても応援する気でいますが、平手がいるかいないかというのは、完全に別グループになるかならないかぐらいの変化になると思います。もし外すなら全部変えなきゃいけないし、外せないなら平手が壊れる。完全にチキンレースと化していますね。
でもやっぱり、俺がもし運営だったら、外せないですよね。だって置けば勝つって凄い快感なんですよ。人間っていろいろ苦労してあれやったりこれやったり、やっぱりダメだ人生クソ~ってなって茶しばいて終わるのが普通なのに、平手を置けば必ず結果が返ってきて、しかも運営側というのは使う側であって実際にやる側じゃないですからね。
ブラック企業とかもそうですけど、目の前でキラキラしているものって我慢できないのが人間なんですよね。それに手を伸ばせば自分の両手が切断されるくらいの恐怖心を与えないと、絶対に手を出すのはやめない。それが『使う側』の人間の考えだし、俺も逆の立場に立ったらそうなる。昔、絵師と組んでたことがあるんですが『いいもの』を作るために相手の労力が必要だった時、俺は『やってくれ』と言ってしまったんですが、今でも後悔しています。それは相手とモメたからじゃなく、『自分にできないことは、諦めなければならない』という物事の基本原則を破ってまで『いいもの』を作ろうとしたところにあるんですが、俺でさえこんなざまですから、平手を間近で見ている人間にとってその輝きは強烈に脳を灼いていることだろうなと思います。
だから平手を推しメンにするっていう意味が俺にはよくわからなくて、平手はすでにオーバーヒートしているから、これ以上いまの体制で続ければ必ず潰れるし、平手自身を心配してその未来とか人生を推すなら卒業を願うのかというとやっぱりそれも難しいし、応援するにも緊張感のあるやばいアイドルなので、俺としては『実力で負けてセンターから下ろされる』のが平手にとって一番いいんじゃないかなと思うんですよね。
で、そこで登場するのがこないだの休養明けに「センターやりたい」って言い出した今泉が満を持してなんですのよ。
今泉がセンターをやって成功するかどうかはともかく、あの空気感の中で「センターに立ちたい」って言えるのは凄いと思うんですよね。冗談とか、いろんな前置きとか、そういうのなしに「やりたい。平手だけのグループと思われたくない」って今泉は言ったんですよ。
何言ってんだおまえに平手のパフォーマンスができるのかって切って捨てるのは誰にでもできるんですけど、そんなことどうだっていいと思うんですよね。むしろ平手にとっても、センターをやりたいと言ってくれて、目指しているメンバーがいるのは気が休まるような想像もしてます。平手はずっとセンターで孤独と戦ってきたわけですが、凄い凄いマネできないと言われてさらに孤立するよりは「ぜってー潰してやっかんな」(志田語録)って言われた方がマシだと思うんですよね。
凄いね、凄いね、凄すぎてなんて声かければいいかわかんないし、とりあえず無理せず頑張ってみたいな他人行儀なこと言われるのが一番傷つくんじゃないかと。
そんなの無関心と変わらないというか、「へぇ、そんなブラック企業あるんだ。大変だね」ってホワイトカラーに言われた時みたいな気持ちすると思うんですよ。最悪だよね。他人事かよっていう。
今泉は、はっきり言って平手の代わりは無理だと思います。あの表現力は平手だけのモノで終わると思う。だから欅が平手卒業後に体制を立て直す時に、「平手っぽさ」みたいなのを残そうとしたらまず破綻するでしょうね。だから、全然違うグループに生まれ変わる必要がある。だから今泉か、現実的にはねるが次期センターだとは感じてますが、いずれにせよ平手っぽさを全て捨てて新生するのであれば、まったく違うタイプ(真逆と言ってもいい)の今泉は、少なくとも平手の気配を完全に断つことができるメンバーだと思います(平手っぽさを残すなら鈴本ですが、今度は鈴本が倒れると思う)。
俺は思うんですけど、絶対に自分では勝てない相手に挑む時に、相手の土俵で戦うことほど虚しいことはないんですよね。負けるのがわかっているのであれば戦わない。絶対に勝てる自分の土俵に引っ張り込んで袋叩きにする。戦いというのはそういうものだし、生きるか死ぬかってそういうことなんですよね。いやべつにメンバー同士で戦争してるわけじゃないですけど、俺が言いたいのは、結局ずば抜けた才能なんてあろうがなかろうが人間はいつか潰れるということです。だからそれを気にしたり、今まで相手が出してきた結果をプレッシャーに感じることなんてないんですよね。どうせ潰れるんだから。相手も自分も。
だから平手ができてたことを今泉ができなくたって、平手ができなかったことを今泉がやればいいだけなんです。大切なのは自分の武器を認識することであって、総合的な性能差で相手を上回る必要なんてない(むしろスペック的には今泉の方が高い部分は多いような気がする)。平手は一点突破型で全て粉砕するタイプですが、努力家で負けん気が強く凹みやすくてウケすぎてゲラ泉呼ばわりされる今泉の方が俺は応援したいんですよね。
いまちょっとマウスの電池が切れたんで一呼吸入れたんですけど、凄い偉そうですね俺。上から目線で威張りくさってるオタそのもの。でもいいんです。NOといいなよサイレントマジョリティー。
やっぱりそうは言われても本質的に才能で勝てないことがわかるのはつらい、という面もあるかとは思うんですが、でも才能でややリードされてるからって、それだけで自分を全部否定してしまうなんて自分自身が可哀想だと思うんですよね。
今泉は確かにちょっと高飛車でプライドが高く誰にも相談できないまま長期休養してしまったり、メンバーが修羅場をくぐってるときに休んでいて戻ってきて合わせる顔がないのかもしれませんが、歌唱力にはズバ抜けたものがありますし、やっぱりけやかけとか見てても面白くて『もってる』タイプですし、逸材だと思うんですよね。サイレントマジョリティーで平手が画面抜きまくってる隣で、今泉とすずもんは確かな存在感を放っていましたし、そりゃ自分でもセンター候補やろって気持ちになりますよね。
平手は才能があろうがなかろうが自分自身を好きになれない、永田カビ先生が著作で言及していた『心にどれだけ蜜を入れても穴が空いててこぼれちゃう』タイプなので、自分を好きになるのはきっと永遠に無理なんじゃないかと思うんですが(そのままどう生きていくかしかない)、好きになれる自分がもしあるなら、好きになった方がいい。
たぶん平手は、お兄ちゃんが凄い優秀みたいなんですが、それがコンプレックスだったんじゃないかと思うんですよね。優秀な子を持った親御さんってハシャいじゃうというか、自分の子にミーハーになるというか、今の平手がそうされているように『置けば勝つ快感』に魅入られた両親がお兄ちゃんばかりをチヤホヤしていて、「ゆりなはちょっとどこかでいい子にしててね」みたいに脇に置かれて育ったんじゃないかと。あの表現力とか、闇とか、ああいったものは家庭環境か学校で嫌な目にあってきたか、いずれにせよ自分の根っこに傷があるまま育った子のような気がします。そして誰しも少なからず持っているその『傷』をダイレクトに表現するから、平手は自分の同類以上の大勢の人間にインパクトを与えられる。
対して今泉はお兄ちゃんがたくさんいて、あんだけゲラゲラ笑うんだから明るく育ったんじゃないかと思うんですが、たぶん平手と違って「素晴らしいものを素晴らしいと素直に感じる力」が平手よりもあると思うんですよ。それがストレートに「歌がなければ生きていけない」とか「センターになりたい」とか、ポジティブな気持ちや発言に繋がっている。平手と本当に逆ですよね。平手は「やめたい」とか「無理」とか「僕は嫌だ」とかそういうネガティブを力に変えてるタイプですけど、今泉は根っこが明るい。こんなに対照的な二人が同じグループのワンツートップやってるなんて、奇跡的なおもしろさだと思うんですよね。
だから、平手がわかってあげられる人を今泉はわかってあげられないし、逆に平手が救ってあげられない人を今泉は救ってあげられる。なので、平手に勝てないぐらいで今泉が諦めちゃったら、今泉が笑顔にできたはずの人たちが笑顔になれないんですよ。つまり俺が。
俺も『サイレントマジョリティー』とか『不協和音』とか『月曜日の朝、スカートを切られた』は確かにヘビロテしてるんですが、元気になるかというと、むしろ逆でつらくなる。原稿に向かう前のファイトソング的な感じで、仕事終わりとかに聞くとなんか神経が休まらないんですよね。神経を休ませちゃダメだよって曲だし。僕はイエスと言わないし。首も縦に振れないし。しんどいですよね。
で、すげーしんどいなって思って、職場でぶっ倒れてる時に今泉の『渋谷川』を聞いてみたんですが、これがすげー……すげー染み渡ったんですよね。心に。かっさかさに乾燥した肌に軟膏塗ったみたいにスーッとライフが回復したんです。そして気づいたんですよね。この原稿の気配に。で、書いちゃったわけなんですけど。
だから、才能なんていらないんです。才能がなんだっていうんですかね? 置けば勝つ、そりゃ気持ちいいし、平手はずっと見ていたくなる月ですけど、手を伸ばしても冷たい感覚しか残らない。ゾッとするような戦慄が迸るばかりで、ほっとするような、家に帰ってきたときみたいな安心感がない。それは確かに平手が持っていない欠落であり、補い難い弱点です。平手は平手でしかいられない。ずっと平手を続けるしかないっていうのは、やっぱり悲しいですよね。美しいけど。
なんか平手サゲ今泉アゲみたいな原稿になりましたが、復帰明けで紅白休んで、またメンバーとの溝が深まりそうな今泉の味方をするやつがいてもいいと思うのです。平手は不協和音をやりきったし、すずもんはぶっ倒れたし、ウッチャンは「俺たちは何かとてつもなく罪深いことをしてしまったんじゃないか……」みたいな顔してましたが、そんな紅白も今は昔、年が明けて新年は平手と今泉どっちかが卒業したりしたらスゲー僕は嫌だ。たのむ尾関、今こそ吹き込んでくれ、欅坂にニュー尾関スタイルを。