Neetel Inside 文芸新都
表紙

柔術で勝つ喧嘩
窒息

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 ツナコロは、161cm、80キロであり、みかけはチビデブである。土日ともなると彼は、県外に旅行に行き、よく喧嘩を売る。相手はできるだけ頭がわるそうな1人でいるDQNだ。ちょっと肩を当てたり、ドロを跳ねさせたり、ちょっとしたことで喧嘩を誘い、相手を怒らせる。

 今夜の相手は、茶髪の20代前半といった男だ。
 「おいこらおっさん! 何肩あててだまっとるんじゃ! 謝れや!」と茶髪は、ツナコロの胸ぐらを右手でつかんできた。
 ツナコロは内心歓喜していた。ツナコロは、もうすでに勝っている。ツナコロの左手は茶髪の右手首を軽くつかみ、ツナコロの右手は、茶髪の右胸にそえられている。一見弱弱しそうなこの体勢、もう相手は強くは殴れない、強くは蹴れない。なぜなら、殴ったり蹴ったりすると、ツナコロに右胸を押さえられれ、威力の無いパンチ、キックとなってしまうからだ。しかも、ツナコロは、柔道で身につけた小内刈を持っている。袖を持ったこの状態、100%倒せる。倒せば寝技である。寝技は、技を知っているだけで勝てる、分からん殺しである。負ける要素がもう無いのだ。
 ツナコロが黙っていると、茶髪は左腕を振りかぶって殴りかかってきた。ツナコロは、右胸を押した。軽く、パンチが頭をなでた。パンチを受けたのは、犯罪にならないためだ。相手から殴ってきた、そして殴られた、その事実が欲しかっただけだ。もう、容赦はしなくてもいい。
 ツナコロは、茶髪の右足が前に出ているのを組んだ感じから分かり、小内刈をかけた。茶髪は、あっさりと倒れる。ツナコロは、茶髪の頭を左手でかかえる。倒れた時、地面に頭をぶつけると、死んでしまったり、半身不随になったりするので、それを防ぐためだ。たとえ相手から手をだしたとしても、死なせてしまったら、刑事事件だ。
 ツナコロは、あっさりマウントポジションになった。ツナコロは、もう隠さずニヤニヤしている。ここから、茶髪は地獄なのだ。ツナコロが押さえ込み、鼻と口を防げば、窒息で落ちる。関節を捻り上げれば、確実に、折ることができる。折るのは犯罪になるからしなくとも、全身の関節をはずすギリギリまで壊す事はできる。マウントからは、殴り放題でもある。もちろん、顔など、傷が残るようなことはしない。腹、太もも、背中、首、耳、腕、全身を殴りつくし、筋と筋膜をボロボロにすることができる。
 ツナコロは、まず、茶髪の口と鼻がふさがるように茶髪の右腕を置いた。茶髪は、息を吐くことはできるが、吸うには、自身の腕の隙間から吸うしかない。圧倒的に、呼吸効率が悪くなる。そのまま、ツナコロは、相手のみぞおちに、右足の膝を乗せた。ニーオンザベリーという体勢である。相手は、ツナコロの体重の大部分をみぞおちでささえることになる。みぞおちには、横隔膜がある。横隔膜を圧迫され、茶髪は息を吐く。そして吸えない。
 1分ほどで、茶髪はオチタ。泡を吹いて、顔が紫色になっている。ツナコロは、イッタン膝をのけ、相手の頬を叩き、ペットボトルの水を相手にかける。茶髪が起きるのを見て、また、同じ体勢をとる。オチル、戻す、落ちる、戻す、落ちる、戻す。4回目で、茶髪が泣き出した。
 「許してください、お願いします」
 「いくらだ?」
 「……3万しかもっていません」
 「キャッシュならあそこで作れるぞ」
 ツナコロの指した先には、消費者金融の自動契約機があった。

 その夜のツナコロの収入は、33万であった。

       

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