「志村さん、職員室へ。」
最近は、呼ばれないことの方が珍しくなった。
受刑者やししゃーない、春子は投げやりな感じでそう自虐した。
「…クラス移動…?」
「そう、アナタと山本さんが同じクラスにこれ以上いるのは、難しいと判断しました。」
お嬢様先生は淡々と述べる。
「そう言うわけで、山本さんは今まで通り3年4に、志村さんは来週から3年1組に移動となりました。」
そんな
クラス移動って、違うクラスに?
何の前触れもなく?
どうしたらいいの?周りにどう言うの?
「アナタもその方がいいでしょう。」
何がや、何がええねん。
こんなこと、これからずっと、卒業するまで続くんか。
「山本…さんは、何て言ってるんですか?」
春子はそう尋ねた。
「山本さんですか?彼女は同意しています。と言うかクラス移動を提案したのは彼女です。」
山本は、春子をとことん拒絶したいようだ。
「山本さんが提案したのに、何で山本さんはクラス移動しないんですか?」
春子はそう尋ねた。
嫌味で言ったんじゃない、本当にそう思ったのだ。
志村春子を違うクラスに移せと言って、それを担任が了承した。
そんなことがあっていいのか。
「元はと言えばあなたが悪いんじゃないんですか!?」
担任は、正しきものが悪を裁くと言わんばかりの顔でそう言った。
今まで山本に対してやってきたことは本当に反省している、それで許されるモノではないのは分かっている。しかし、二度と同じ事はしない。
この担任は、そして山本は、まだ自分が同じ事を繰り返すと思っているのか。
「もうやらないです…もうあんなことしないですよ…クラス移動なんて…いやです」
「山本さんは被害者です!彼女はアナタと会いたくないと言ってるんです!それから3年4組の出入りも禁じます。」
この中学は3年間クラスのメンバーは変わらない。その中で、春子は、少ないながらも数人友達がいる。
3年1組なんて正直、顔さえ知らない人もいる。
これからあるのだ
これからあるのだ
これからあるのだ
最後の合唱コンクール
最後の運動会
最後の文化祭
修学旅行
それらを想像した。
きっと、卒業アルバムの3年4組には、春子の顔はないのだ。
きっと、名簿に名前はないのだ。
3年1組だから。
きっとそうなる、おそらくそうなる。
涙が溢れそうになった。いや、もう泣いていたかもしれない。
そして、これから来る未来に吐き気がした。
「…お願いします…他の…他の…方法を…。」
担任である女は、春子の泣きそうな顔を見ている、キョトンとしている。
女は、今春子がどんな気持ちなのか理解できないだろう。
女は春子に新たに言葉をかけた。この不良生徒を更正させなければ、正義、正義の言葉を。
「山本さんが可哀想だとは思わないのですか!!!!」
女は、こんな最低なことがあるか、と思っている。春子は悪だと思っている。春子はハイパー糞虫だと思っている。
クズだから、悪だから、非難せねばなるまいと考えている。
完全に善の存在である私が、このこをみちびかなくては。
この後女は、決して春子の願いを聞き入れなかった。