Neetel Inside ニートノベル
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文化祭当日

1組の出し物は
「身近の文化に触れる、社会風土研究。」
だった。

春子は
「資料が乱雑になってないかたまに点検する係」
になった。

1組のクラスメイトは自分たちの教室にはおらず
みんなでわちゃわちゃと出店を回っていた。

春子はどうしようかとちょっと思った。
4組の友達のところに行こうかと考えたのだ。
別に文化祭だし、いいよな。もともと、4組の友達と喋るな!ななんて言われてないし
それに、そんな事言われる筋合いもない。

でも足がすくんだ。

もういやなんだ、関わるのが怖い。
4組の友達は自分のことどう思ってるんだろう、拒絶してくるかな。
もし笑って接したとしても腹で何を思ってるか分からない。
じゃあもういいや、今日は一人でいよう。

一人でいると、凄く違和感があった。
一人でいるのは悪い事なんだって思えた。不自然なんだって思えた。

座り方も、顎に手をやるしぐさも、目のやり場も
足の位置も、座ってる場所も、呼吸も
全て間違っているようだった。

自分のすべてが「違反」に思えた。

一人でいるのが不自然じゃないところを探した。
トイレに行くのは一人でも不自然じゃないけど、長時間は居られないし
徘徊しても、凄く自分が浮いて感じるし

そうや、体育館のステージを見に行こう。

春子は体育館へ向かった。
体育館は暗くて、ちょっと暖かくて
人はいっぱいいて、ライブだの、劇だのやっていた。

今日は無難にここにいようと思った。

『えー次は、3年4組の発表です。』

拍手とともに春子が以前いた3年4組のメンバーが見えた。

3年4組の出し物は合唱だった。
合唱と言っても、音楽の時間に習うような硬い曲ではなく
歌謡曲を合唱用にアレンジしたものだった。

男女混成だが、女子、男子の中でもそれぞれ
「声の高いのが得意な人、低いのが得意な人」に分かれていた。
伴奏のピアノも滑らかな指遣いで曲を奏でる。
演奏の合間合間に、演奏者の遊び音も入る。
指揮者はスーツなんか着ちゃってちょっと大げさなぐらいにタクトを振る。
でもちゃんとリズミカルに指揮は行えている。

そこには顔をよく知ってるみんながいた。

そこにはよく授業中に眠ってるあいつもいる。
人の弁当をすぐ貰おうとするあいつもいる。
勉強ばっかりしてるのになぜか成績の悪いあいつもいる。
体育の時間だけめっちゃテンション高いあいつもいる。
音読の時にやたら感情こめて読むあいつもいる。
ポーカーのルールについて聴いてないのに言ってくるあいつもいる。
リップクリーム塗りすぎなあいつもいる。
学校になぜか麻雀牌をもってくるあいつもいる。

歌っている一人ひとりが、精いっぱいの声で歌う。
怒鳴りもせず小さくもなく、きれいな音色で。
いっぱい練習したんだろう。
学校の無い日もみんなで集まって練習したのだろう。

春子は涙が出てきた。
周りに見られてもいい、感動して泣いてるんだって思われるだろうから。

春子は顔がぐしゃぐしゃになるぐらい泣いた。

鼻水とか涙とか、泣いた時独特のにおいが鼻の中に広がって。

こめかみがやけに疲労して、おでこが疲れて。

しゃっくりが出て、息がおかしくて。

まぶたが疲れて、それでいてどこか変な感じになって。

眠くなった。

       

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