Neetel Inside ニートノベル
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電波ジャッカーBLUE 【完結】
第一話【中学生】

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学校では良くある……
のかどうかは伏せておくとして、イジメというものが世の中に蔓延してる。

いっちょまえにイジメにも推移というものがある。
昔は、ひとりの人間がいっぱいの人をイジメる「ジャイアン型イジメ」が多かった。
しかし最近は、ターゲットを絞ってイジメるスタイルが目立つ。
名前を付けるとしたら、「なんかあんまりよくないイジメ」とかそんな感じ。


志村春子は「なんかあんまりよくないイジメ」の経験者だ。


     


「イジメ?御冗談を!そんなものあるわけないでしょ!」

何の根拠もなくそう言って笑う初老の男性、もとい校長。


中学校だ。
公立のありふれた中学の、ありふれたワンシーン。
そこに2人の生徒の会話が聞こえる。

「ごめん……ごめん……。謝るから、もうやめてぇや…。」

「謝んなやキモい。お前学校来んなって言ったやろ。」

クラスの女子が、同じくそのクラスの女子の髪の毛を引っ張る。

クラスメイトは気付いているのか、多分気付いているだろうが、助けない。
助ければ自分が……といったそういう気持ちではないだろう。

自分が被害者でも加害者でもない、その安全さを噛みしめている
そんな気持ちか、もっと違う気持ちか、まあ別にそこの所はどうでもいい。

とにかく、その辺に歩いてる人に
「これってなんでしょう。」
と聞いたら
「イジメじゃないでしょうか?」
と帰ってくるだろう状況が、そこにあった。

イジメの理由って何だろうか。
あるっちゃああるし、ないっちゃあない。
気に入らない、生理的に受け付けない、どんな理由にせよ理不尽な理由だ。

しかし、イジメる側からしてみれば
イジメる対象の人物は、理不尽に不愉快な存在に感じたのだろう。

今回のケースでは、イジメる側は具体的な理由を定められないでいる。
ただただ理不尽に不愉快。

分かり易く言うなら、引っ込みがつかなくなった状態。


「あんまりよくないと思うで」

ひとしきりのイジメを見届けた後、クラスメイトの一人が言った。

「アイツが悪いねん」

いじめっ子はそう言った。

「ウザいしキモイ、顔も見たくない、イライラする。」
「じゃあわざわざ関わらんかったらえーのに……。」

こういった会話はたまに行われるが、いつも平行線だ。
お互い解決するなんて思ってない。
いじめは良くないよって言う事を周りにアピールするための儀式だ。

「でもホンマにいい加減にしとかなエライことになるで、志村さん。」

志村と呼ばれたいじめっ子は、友人の言葉には耳を傾けず
自分の席で指をコネコネしていた。

     

ガリガリガリガリ
いじめられっ子、「山本早苗」はノートに反省文を書かされる。
志村春子に書けと言われたからだ。

その前に…志村春子といちいち表記するのは面倒なので
春子とこれから言うことにする。

山本早苗は「山本」とする
なぜ名字なのかは、後々分かってくると思う。

山本は反省文を書き続ける。

「ごめんなさい。
学校に来てごめんなさい。
不快な思いをさせてごめんなさい。
どうか私の事を許して下さい。」

書かなければ何をされるというわけでもない。と思う。
でも山本はすでに

いじめられてるのにはじぶんにもげんいんがあるんじゃないの?

と思い始めていた。

     

「他の子はいじめられへんやん、私だけやん
それって私に問題があるからとちゃうの?」

自己嫌悪と罪の意識の塊
自分は悪い事をしたんだから制裁されてるのだ。

そう山本は考える。


春子は山本がそう考えていることを知っていたので少し安心していた。
立ち向かってこない、自分はセーフティ。

…だが実際は違う

春子は自分でも実感していた。
罪悪感とかそういう気持ちもあるだろうが、もっとリアルな気持ち。
これほどの事をしているのだ、もし事が重大になったらただじゃ済まない。
でもだからといって 今手を引いたって…

もうやりとおすしかないのだ。

楽しくない楽しくない、こんなこと楽しくない
どうしてこんなこと始めたんだろう

理由なんて忘れた。でもやらなければならない。
やり続けなくては…。誰だこんなつらいことをさせるのは。

山本だ

アイツのせい、許さない、ムカつくんだ。

そう考えると春子の気持ちは楽になった。



そしてある日を境に山本は学校に来なくなった。

     

『山本さん、学校に来て下さい。みんな心配しています。』

同じような内容のメッセージが後30程
山本の自宅に寄せ書きとして届けられた。

「ほらぁ、みんな心配してくれてはんねんでぇ。」

山本の母親はそう言って可愛い娘を励ます。
山本は反応しない、ただボーっとしている。


山本は分かっている。
100%とは言わないけれど、おそらく殆どのクラスメートは
自分のことなど心配するはずがないと分かっている。

どうせクラスのリーダー的な子が

「みんなぁ。山本さんに寄せ書き書こうやぁ!」

とかなんとか言ったんだろう。

そしてその予想は大体当たっている。


どうあれ、まだ山本はクラスメートたちに心を許さない

     

春子は、志村春子は内心うわあああああってなりそうだった。

山本が不登校になるなんて思わなかった。
嘘だ、想定パターンの中にはあった。

でも目をそらしていた。


勿論春子も寄せ書きは書いた、当たり障りのない文章を書いたつもりだ。
クラスメートの奴ら、イジメの犯人は誰か知ってる癖に…。
ウザイウザイウザイ


何でやろ、何でイジメてたっけ、楽しかったっけ。

全然楽しくないし。

なら初めからイジメんなよ。

うっさい黙れカス!
何でやろもう分からん!

もう…

死ねよ!

死ねっ死ねっ
死ね自分!


怖い


アイツがみんなの言葉に励まされて、学校に来るようになったら

みんなに本当の事を言うのかな。

みんなはもう知ってるねんし一緒か。
一緒ちゃうし!

一緒ちゃうし!

親とか先生とか
今は知らんもんな。

バレたらどうなるんやろ。


もう、山本、黙っててくれ。
もうやめるから、反省したから。
あげるから、何かしらを。
もう不毛やから、なあ!

ふざけんな!


春子は反省なのか自己防衛なのか自分でも分からなかった。

       

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