Neetel Inside ニートノベル
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電波ジャッカーBLUE 【完結】
第四話【陰キャラ】

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中途半端に下品な住宅街。

襟のゴムは完全に伸びきっていて、袖の部分は黄色く変色したような、
そんな子供たちが、交通の安全など考えず、自転車を蛇行運転させる。
親たちは子供たちに目もくれず、門前でタバコを吸いながら、世間話をする。

そんな住宅街に、春子の実家はあった。


春子はそこから、徒歩で駅まで向かい、電車で三十分ほど揺られる。
そこからはバスだ。
バスの中では、同じように着崩した制服の学生が、立ったり、座ったりしている。
横に置いてあるカバンをどければ、あるいはもう少し一人ひとりがつめれば、
もっとたくさんの人が座れるだろう。

春子はそのバスで座った事は無い。
たとえ、座れるスペースがあったとしても、座らないのだ。


そうして、十分ほどバスに乗っていると、春子が通っている「高校」が見えてくる。

春子は、高校生になったのだ。


決して、その高校が家から最も近い高校というわけではない。
ではなぜ、春子は近所の高校に通わなかったのか。
学力的な面もあったが、「知ってる人がいない」というのが、最も大きな点だろう。

春子は「中学時代の自分」を知らない世界へ行きたかったのである。

     

話は急に変わるが、「陰キャラ」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
「いんきゃら」と読む。別に「かげきゃら」でもいいけど。

世の中には陰キャラと言う言葉に過剰に反応する人がいる。

「陰キャラって言い方嫌いです><
 だってだって、いろんな人がいていいじゃないですか!
 どうせ僕たちの事、ひとまとまりにしか見ていないんでしょ!?
 最低の言葉ですよね!こんな言葉使っちゃ駄目ですよね!
 個性ですよ、個性!本当に嫌いな言葉です。
 ぶつぶつ。」

だが、ここではあえて「陰キャラ」という言葉を使わせてもらう。
気分を害する人がいるだろう。「なぜわざわざこの言葉を?」と思う人もいるだろう。
あえてだ。
あえての陰キャラ。

「クラスで目立たない方」?
ちゃう。
「おとなしめな子」?
ちゃうちゃう。
「個性的が故にクラスになじめないでいる子」?
ちゃちゃうちゃう。
「友達の数が他者と比べ著しく少ない。または皆無であり、それらを打開するすべを持たぬもの。」?
ちゃいまんがな。

いや、真実は、そうなのかもしれない。
だが、その表現では駄目なのだ。
本当に言いたい事が、かすむ。

「陰キャラ」だ。
真実はどうであれ…、
さまざまなカテゴライズが本当はあったにせよ…、
「陰キャラ」だ。
そう呼ばれ、そういう思いをしてきた人間は、
客観的に陰キャラであり、それが事実なのだ。

あえて今後…
あえて今後は陰キャラと言う表現を使わせてもらう。
オブラートに包んでいる場合ではないのだ。
オブラートに包んでチュルンと飲みこんでいる場合では全然ないのだ。

陰キャラという言葉を風化させ、無かったことにし、
耳触りのいい表現で上手く文章を連ねる事はどうしてもできないのだ。

だから申し訳ないが、今後は、あえて、不完全で文学的では無い、
「陰キャラ」という言葉を使って表現させてもらう。

     

さて、話を戻そう。

志村は高校生になった。

「春子」ではない、いや、春子だけど、でも、志村だ。
「志村」だ、あんな奴。

志村は、陰キャラになったのだ。

中学生のころからあまり友達が多い方でも無かった。
中学のころから陰キャラだった。
だが、今はそれすらもはるかに凌駕した陰キャラへと変貌を遂げたのだ。


高校一年生の春、志村は、友達をつくるタイミングを見誤った。

高校というのは中学と違い、同じような「レベル」の生徒たちが集まる。
学業レベルにおいてもそうだし、民度のようなものも、大体同じレベルだ。
その中で友達をつくることは、中学時代に友達をつくることよりも容易い。

…にもかかわらず、
志村は友達を作りそこなったのだ。


理由はそんなに難しい事じゃない。

志村は、中学時代の出来事がトラウマになってしまったのだ。

イジめ、そしてイジめられた事が…だ。
(正確に言うとイジめられた訳ではないが、
志村はアレを「イジめと限りなく等しいもの」と定義している。)

人と関わるとき、相手が自分に対してどう思っているか、
必要以上に勘ぐってしまう。
本当は自分と喋るのが嫌なんじゃないか。
早く切り上げたいんじゃないか。
自分なんかと喋るより、他のみんなと喋りたいんじゃないか。

人に極力話しかけないことによって、
「自分と話す」という「苦行」からクラスメイトを解き放つ。

そんな気分なんだろう。


本当は、そんなことする必要全く無い。
厚顔無恥に、何の気づかいも無く、面の皮を厚く、厚く。
いや、それすらも考えず、ただただ無作法に人と話せばいい。
人と話すことには、本来何の技術もいらないのだ。
いやいや、むしろ逆。
「相手に無配慮に関われば関わるほど、人気者になれる。」
ぐらい思っていてもいいかもしれない。
(高校ぐらいだとそんな感じでいいだろう。)

だが、十代であり、陰キャラであり、あらゆる経験に乏しい志村が、
この事に気づくのは、まだかなり後である。

       

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