口火を切ったのは彼女のほうだった。
「貴方は私の眼に何を見たの?」
間髪入れずに俺は答える。
「なんかでっかいやまかな。俺はあれは単なる強盗事件じゃないと見た。」
彼女は口元を歪ませこう答えた。
「これは始まりよ覚えててね、増田さん。」
そういえば自己紹介してなかった、なのに何故彼女は俺の名前が分ったんだ。
「なんで俺の名前知ってるんだ?」
そういうと彼女は腹を抱えて笑い始めた。
「ふふふっ、だって貴方あんなに同僚さんに増田増田って呼ばれてたじゃない。
それは必然的に覚えちゃうわよ。」
「ははっそうか、そりゃそうだわな。まあ改めて自己紹介というこうか
増田良信っていうだ。よろしくたのむわ。」
「私は、吉良楓って言うのよろしくね。」
吉良?吉良ってあの大企業の娘ということか?
「もしかして吉良グループの娘さんとか言わないよな?」
「ええ、そうですけどなにか?」
だがそれではこの対応はおかしい。まずあの現場は俺の出る幕ではないはず。
そして、この病院に送られることもまずないだろう。なにせ吉良グループの娘さんだ。
「私が、なんでこんなに雑に扱われているか気になってるの増田さん?」
俺顔に出やすいのかな、読まれ過ぎだろう。
「ああ、まあそんなところだ。」
「ふふっ、それは色々あるの。ねぇ、増田さん頼まれてくれない?」
彼女の眼は俺を捉えて離さない。眼を離すことができない呑まれていく。
「なにをだ?」
「私の父親を逮捕してもらいたいの。」
これはまた大変なことに巻き込まれそうだと直感が言っているが俺の口は
そんなのお構いなしに答えを述べていた。
「わかった。協力する。」
俺はその時既に彼女の魅力に取りつかれていたのかもしれない。だが一度引き受けた
ことは必ずやるそれが俺のスタンスだ毛頭崩す気はない。
「で、どんな仕事なんだ?」
そう聞こうとした瞬間彼女はすでに寝息を立てていた。
増田良信の夜はこうして明けていった、様々な悩みの種をふやしながら。