Neetel Inside ニートノベル
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振り回されること二時間。
「うん、パーフェクトですよ増田さん。」
「ああ、なんともまあすうすうするわ。」
俺のぼさぼさだった髪は見事に奇麗さっぱりなくなり変りに頭皮が
お見えになった。なぜスキンヘッドなのだろうか?俺の髪型は海坊主
のようになった。
「そっちのほうが男前ですよ。」
「ああ、そうかいそうかい。もうなんでもこいだよ。」
そして極めつけはこのサングラスだ、マトリックスだよ。
「貴方は臨時のボディーガードとして私が雇った事になっています。」
「お前会社じゃ立場上なのか?」
「ええ、そうですね。少なくとも社長の次ぐらいには偉いかも知れないです。」
人は見かけによらないということか、歳は聞いてないが俺と近いことは間違いない。
こういう飄々としたやつが世の中を上手く渡るんだよな。
「さて付きましたよ。」
これまた度肝抜かれるぐらいでかいから困る。ここら一帯の中では一番
高い高層ビルだった。何人もの警備員があっちこっちにいる。
「ですが表からは入りません。社長室直通のエレベーターがこの先にありますから
そこから向かいます。」
藤堂がかつかつと前を歩く、警備員だけではなく通る社員全員が会釈をしていた。
こいつは、本当にここで偉い立場なんだな。
「ここです。」
数分ほど歩いた先に、黒い扉があった。藤堂はその扉に近づくと扉の真ん中あたりに手を置く。
ガチャリという少し重い音がしたあと扉がスライドした。
「もうこれは直通エレベーターになってますから、さあ行きましょう。」
指紋認証式の扉ということは一部の人間しか開けることができないのだろう。
俺は藤堂に誘われるがまま乗り込んだ。
「びっくりしますよね。僕もこれに慣れるまでは時間が掛かりました。」
「ああ、たしかにな。俺はお前がここではかなり偉い立場ということのほうが
びっくりしたけどな。」
「ははっ、僕も苦労しましたよ。何人の上司を土台にしたことか。」
笑顔は崩さないが、俺はこいつだけは敵に回したくないと思った。
「さてもう着きますよ。なにせ直通ですから。」
扉が開いた瞬間。豪勢な装飾品の品々が目に飛びついた。中世の王宮を
思わせるその内装は社長室ですと言っているような感じだった。
「真っ正面に見えるあの扉の先に社長がいます。」
藤堂はまた俺の前をかつかつと歩き始める。その後ろ姿は堂々としていて
俺とは全然違う世界の住人だった。
「社長、例のボディーガードの件で伺いました。」
藤堂が扉の前でそう言うとガチャリと鍵が開く音がした。
「では行きましょう。」
「ああ…。」
多々ある不安を押し殺して俺は社長室に踏み行った。

       

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