Neetel Inside ニートノベル
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 しかし、どうしたものか。
 こんな生意気な子供を相手にしたことが無い俺にとって、強く叱るべきなのか優しく諭すべきなのかは難しい問題だった。
 一応妹がいるにはいるが、アレは生意気とかそういう次元の問題ではないので除外する。
 ここで強く言うのは簡単だ。しかし、忍は前の家の事がトラウマになっているのは間違いない。慎重に接する必要は十二分にあるだろう。
 かといって甘やかして忍の勝手にさせるのは忍の性格を曲げてしまうかもしれない。難儀である。
 「なあ忍、もう少しコミュニケーションを取らないか? 俺達家族だろ? もっと忍の事を知りたいって言うか……」
 「家族?」
 その言葉に、忍は顔をしかめる。
 「家族同士は普通、キスしたり、お尻に……その、ち、ちんちんを入れたりするって言うの?」
 突然、顔を僅かに赤らめてのちんちん発言に俺はドキッとさせられてしまう。
 今の台詞だけでご飯が三杯食える。録音しておけば良かった。
 ……ところで、今何を質問したんだ? ちんちんの破壊力が高すぎてそれ以外の言葉が頭に入らなかった。
 「ごめん、もう一回言って」
 忍は俺を濁った目で睨み、舌打ちを一回。本人にとって残念な事に、それすらもかわいい。
 息を大きく吸い込む。



 「家族は普通キスしたり、あなぅせぇっくすするかって聞いてるんだよ!」


 「……するぞ?」
 「するの!?」
 いや、するだろ。普通にするだろ。
 アナゥセェックスは夫婦のみだが、キスくらいは親子でも小さいときならするだろ。俺はしたことないけど。
 どうやら忍の家庭では両親がキスする光景も見る機会は無かったらしい。冷め切った夫婦なのだろう。
 逆に両親がアナゥセェックスする光景を目撃した日にはトラウマで飯も食えないと思うけどな。
 「いや、嘘だね! そうやってまた僕を騙して色々な事をしようとしてるんでしょ!」
 ずびし、と俺を指差す忍。人に指を指してはいけません。
 まーだあの事根に持ってたのか。ケツの穴の小さい男だ。広げてやろうか。
 それにしても、純粋無垢を地で行っていたあの忍が随分疑い深い性格になってしまったものだ。くそ、いったい誰の仕業だ。
 「してないしてない」
 「……本当?」
 本当に決まってんだろ糞ガキ。その人指し指をどけろ。食うぞ指。犯すぞ指。
 むー……とうなる忍に、俺は呆れた視線を返す。
 「忍、お前性教育受けたか?」
 学校でアナゥセェックスは習わないだろうが、それにしてもこの辺の知識が足りなさすぎるのではないだろうか。
 もう小学6年生だぞ。て言うかあと数ヶ月で中学生だぞ。
 「せーきょーいく?」
 忍は右に首を傾けた。髪がふわっと流れる。
 「保険の授業で習わなかったのか? 男女の体の違いとか……」
 「だんじょのからだのちがい?」
 忍は左に首を傾けた。髪がふぁさっと踊る。
 本人の自覚が無いのが恐ろしいほどに洗練された仕草だ。股間よりも胸に来る刺激。
 所謂一つの、「ココロがむずがゆいぜ!」である。
 そして頭、脳に来るものは……憂慮。
 「……忍、保健の授業ちゃんと受けてたか?」
 びくっ。
 忍の体が大きく揺れた。その反応自体が答えになっているのに、忍はそ知らぬ顔で言う。
 「う……受けたに決まってるじゃん」
 嘘をつくな嘘を。
 ご丁寧に口笛まで吹き始める忍。これで本当に受けていたら俺はこれから忍を様付けで呼んで何かあるごとに足舐めてやるよ。
 「じゃあ、赤ちゃんはどうやって生まれるのか言ってみろ」
 と、試しに質問してみると、忍は口端をにぃと歪ませた。
 「あれ? まさかそんな事知らないとでも思ったの?」
 見下した顔でニヤニヤと笑う忍だって当然かわいい。おっきしそう。
 しかし、流石にこれは簡単すぎたか。知らないはずもあるまい。
 今時の小学生は進んでいるからな。ひょっとして忍が非童貞なんてこともありえる。
 ああ、こんな世界が嫉妬するようなかわいい顔して女子を手籠めにしてるなんて……ありえるはずがない。あったらあったで興奮するけど。




 「男の人と女の人のへそをくっつけるとコウノトリがキャベツを運んできて、それを女の人が食べると妊娠して赤ちゃんが出てくるんでしょ?」
 
 

 さも当然と言ったように答える忍。判明したことは3つ。
 1、忍は保健体育の授業をまともに受けていなくて、性に対する知識が皆無。
 2、親だか誰か知らないが、忍に誤った情報を吹き込んでいる輩が存在する。
 3、忍は童貞。 

       

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