Neetel Inside ニートノベル
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黄色い向日葵と青い空
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 斜陽

 朝、残り物のカレーを一口、ぱくりと食べて上前津は、「げ」と幽かな叫び声を上げた。
 「ゴキブリ?」
 カレーの中に、また変な物でも入っていたのか、と思った。
 「いや」
 上前津は何事も無かったようにまた一口カレーを口にいれ、すました顔で手元の携帯電話へと視線を送り、そして俯いたまま、また一口、カレーを食べた。案の定カレーは匙からこぼれ落ちて、膝の上に落ちた。上前津は「あーあ」と呟くと、そのまま立って、布巾を取りに台所へと向かった。
 上前津は、度々そんな子供のような失態を犯した。上前津の彼女の茶屋々坂がいつか、酔いつぶれた上前津を尻目に、薩摩の芋焼酎を飲みながら、私に向かってこういった事がある。
 「顔がいいから、格好いいというわけには行かない。顔が悪くても、格好いいは成立するし、こいつのように顔だけはよくても行いは子供どころか賤民に近いやつもいる。別院なんてのは(と彼女の同期生をあげて)ああいうのは、名駅の西口の客引きより下衆じゃないか。この間も、妙音(と、また彼女の同期生を挙げて)の姉の結婚式に、あの尼、整形までしてきやがって、なんで整形する必要があるんだ、隣国じゃねぇんだぞ、まあそれでも私が勝っているからいいとして、スピーチの時に、あの尼、アネハワタシヨリブサイクデスカラとか、そんな感じでけなしたのはげっとなった。顔なんか二の次三の次。顔がいいからつって威張るのは、容姿以前の問題だ。町中でスカウトされただとか、よくナンパされただとか奴らはよく言うけれど、実際顔がいい奴らの大半は、高級水商売人みたいなもんだ。本当の格好良さは、あんな顔だけに表れるもんじゃない。本当の格好いい、イケメンってのは、砂田、お前みたいなやつの事を言うんだ。お前は本物だ、モテないのはお前の遺伝子が優秀すぎるからに違いないんだ。顔が悪いからって言ってめげる事は無い。だれもお前にはかなわない」
 私のどこがいったいイケメンと言うのか、幾度となく精査を試みたが、挙る要素は皆無だった。カレーもこぼさないし、結婚式のスピーチもやった事は無い。もし頼まれたとしても、最大限相手を揚げる努力をするだろう。そんな性格を指して茶屋々坂が私をイケメンだと言ったのであれば、それは大きな間違いである。人生は顔なのだ。私はそれを、上前津の友人として数年間そばにいて実感していた。
 茶屋々坂が何を言おうとも、人生は顔がすべてである事を私は知っている。

       

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