Neetel Inside ニートノベル
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HVDO〜変態少女開発機構〜
プロローグ

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 自分という人間を、一言で分類するならば、「変態」である事はまず間違いなく、また、この文章を読んでいる方達の中に、自分の気持ちを分かってくれる、尊重してくれる人が少しでもいたのなら、それはこの上無い幸せであると言い切れるのです。
 しかしながら、自分の変態を少しも承知しておらず、寝耳に氷水を注ぎ込まれるような気分で読解を進める大多数の人達に対して、断じてこの文章を読むなと、今すぐにブラウザバックしろと訴えるのはいささかの本心でもなく、むしろそういった人達に対してこそ、自分はこの有り余る変態さを分け与え、共感してもらう事によって、ここに自分の存在を主張したい。と、強くそう思うのです。


 それでは、まず手始めに、基礎編から手短にやっていきたいと思います。
 あなたの目の前にいるのは、つい二日前に初潮を迎えたばかりのうら若き乙女。父に褒められて伸ばした長めの黒髪を、赤いランドセルの下に敷いて、未だに学校の規律通り胸に名札をつけて下校する真面目さを持ち、朝は一番に学校に行って、先生の机の花瓶の水を取り替え、褒められると俯いてはにかみ、怒られると泣きそうになりながら堪える。純真、あるいは繊細とも言うべき少女。
 彼女は夏の日差しに汗をかきながら、神妙な面持ちで帰路についています。学区内ぎりぎりの場所にある彼女の家は、学校からはそれだけに遠く、登下校合わせて一時間半程の時間消費を強いられる苦境が今、彼女に災いしてます。
 頬を赤らめ足早に、周りの目を気にしながら、一直線に自宅へと向かう。ここで、重大な事実が発覚します。そう、彼女はおしっこを我慢しているのです。
 通学路の近くには公園が一つあり、そこには公衆便所も一応あるのですが、生憎と区の管理が行き届いておらず汚れに汚れ、一度彼女が母と一緒に使用した時から、「二度と使わないように」との言葉をもらい、それは真面目な彼女の心に深く刻み込まれており、また、昼間なのにやたらと暗いあの空間に、本能的拒否感さえ覚えているのです。
 当然、通学路の途中には個人商店もいくつかあります。しかし買い食いを禁止されている彼女は、個人商店に寄ってトイレを借りても、お礼として何かを買うという事も出来ず、それは礼儀に欠ける行為であるとして、きちんとした教育を受けてきた由来から、どうしても立ち寄る勇気が持てずに素通りしていきます。
 というよりも、「おしっこを我慢している」という状況それ自体が、酷く小っ恥ずかしく思え、もしも万が一我慢出来ずに漏らしてしまったなら、すぐ様この世界から跡形もなく存在を消し去ろうという決意さえ固め始め、想像によってますます顔は紅潮し、尿意は徹底的に彼女を追い詰めます。
 そして、後少しで自宅。安心しておしっこを出来る空間(今の彼女にはそれ以外に自宅の価値がない)に辿りつく。苦しみと恥ずかしさから解放される。明日からはきちんと学校を出る前にトイレを済ませよう。このような事が二度と起きないように、自らの膀胱には細心の注意を払おう。と、そのように決意した瞬間に、不幸は訪れます。
 彼女の隣の隣の家で飼うペスはとんでもない馬鹿犬で、数年来の、面識ある人間に対しても、時々わけが分からなくなり吼える事があります。それは彼女も承知の上でした。しかしながら、緊急事態が優先し、ペスの存在に気づかず、哀れにも彼女は不意打ちを喰らってしまうのです。
「わん! わんわん! わわん!」
 彼女のスカートの中、白いパンツの中身から、ぴゅっぴゅっと黄色い液が漏れます。まだ彼女は、それに気づいていません。突然横から吼えられたという驚きの方が勝り、事態の全容、深刻さを把握するに至ってはいないのです。
 ペスを認識し、吼えられた事を悟り、少しだけ安心した後、五感の内で最も性的敏感さに関連ある触覚が彼女を責めます。ぐっしょりと濡れたパンツ。ふとももを伝い、ふくらはぎを舐め回すように下り、靴下へと辿りつく生暖かい汁。
 尿。意のとれた、紛れも無く現実に存在する液体。
 ペスは変わらずわんわんと叫んでいますが、彼女には最早それどころではありません。小学五年生にもなって、自分はおしっこを漏らしてしまった。しかもその場所は自宅のほんの少し前。あとちょっとだけ我慢すれば全うな人間でいられたはず。後悔はとめどもなく訪れ、しかし尿は止まる事を知りません。ペスに吼えられピスを出した。極刑に値する下らない洒落が脳裏に浮かぶ程に余裕が無く、尿に釣られてか涙まで流れ始め、挙句には鼻水までそれに賛同し、少女の白絹のように柔らかい顔は見るも無残に崩れ、アスファルトに小さな太平洋を作った後は、混乱したまま弱々しい足取りで自宅へと逃げ込み、両膝崩れ委員長の面影も無く、何事かと駆けつけてきた母に「もう、もう!」とやり場のない怒りをぶつけながら、小さなお腹に少しだけ残ったおしっこさえも玄関に滴り落としてしまうのです。


 このような一連の、自らのおしっこを巡る少女の話を、この上なく敬愛し、性愛するのが自分という人間なのです。ここで誤解を防ぐ為にあえて断言しますが、自分は決してロリコンなどではございません。一番自然な、分かりやすく「そそる」シチュエーションを提示しただけであり、別パターンとして、会議中に漏らすエリートキャリアウーマン編や、彼氏との初デート中に観覧車で漏らす大学生編という物も用意している事からも分かるように、繰り返しになりますが、ロリコンではないのです。
 この異常とも呼べる愛情の一片でも、これを読んでくれた方に理解してもらえたならば、自分はまさしく果報者であり、一人前の変態になれたのではないかと思えるのです。
 変態というマイノリティ。この世界に確かに存在する魂。
 自己紹介が遅れました。自分の名前は五十妻 元樹(いそづま もとき)景気の良い苗字に反して、彼女の一人もおりません。

       

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