Neetel Inside ニートノベル
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 人間万事塞翁が馬。何が災いで何が幸いなのか、分かった物ではありません。
 マラソン授業の時、クラスはちょうど半分半分くらいに、「寒いから上にジャージを着て走る派」と「走ってれば暑くなるから最初から体操着のまま派」に分かれ、自分は前者、くりちゃんは後者であった事が、よもやこのような展開になるとは、思ってもみませんでした。
 公園の、マラソンコースから少し外れた所に、背の高い、手入れの行き届いた茂みがあり、人目を凌ぐにはちょうど良い、夜には格好の青姦スポットとしても有名なその場所に、自分と、くりちゃんと、等々力氏の三人は避難してきました。
「ジャージを貸せ!」
 くりちゃんは、体操着から丸出しになった胸を両腕で隠しながら、自分にそう怒鳴りました。自分が、「そんな大声を出すと誰か来ますよ」と大人の対応を見せると、やはりそれは困るらしく、くりちゃんは口をくやしそうに歪めて、声を小さくして自分を何度か罵りました。
 等々力氏のジャージは下のみで、あいにく上着は無く、今、くりちゃんに上着を貸せるのは、自分のみというこの状況。これを生かさない手はありません。一応、勝負の件で確認しておきたい事があったので、しておきます。
「等々力氏、そろそろ自分の攻撃に移っても良いですか?」
「……ああ、だが俺は勃たたないぞ」
 と、言いつつも既に勃起率70%なのは、目の前におっぱい丸出しの女の子がいるからでしょう。後手には後手の有利という物があるようです。
「お、お前ら、何の話してるんだ? やっぱりこれもお前らの……!」
 くりちゃんの怒りが頂点に達する前に、自分が釘を打ち込みます。
「くりちゃん。今、ジャージを貸せるのはこの場には自分しかいませんよ。それとも、クラスメイトの助けを呼びますか?」
 くりちゃんが気軽にジャージを貸してもらえる相手など、クラスには一人もいない事は分かりきっていましたし、このような「恥」を晒す事は、くりちゃん自身が絶対に許さない事をも承知の上での、脅しに近い愚問でありました。くりちゃんは心底激怒した様子で、ふるふると体を震わせて、鋭く自分を睨みつけました。
 快感。
 支配される女性とは、かくも美しいものでした。


「……何をしろって言うんだよ?」
 表情に見とれていると、幸いにもくりちゃんの方から提案をしていただけました。「おっぱいもっかいみせろ」と早口で等々力氏が横から口を出しましたが、自分はその要求を却下して、代わりに上のジャージを脱いで、突きつけました。
「これと、くりちゃんのブルマ、プラスパンツで物々交換しましょう」
 目の前の男が、一体何を言っているのか把握する事すら出来なかったのか、くりちゃんは一瞬呆けたような顔になり、その後、「はぁ!?」と大声で、片方の手が使える物ならば殴りかかる勢いで、明確に威嚇してきました。
「布面積で言えば自分の方が多いはずですから、交換は成り立ちます。それに、胸の部分が破れた体操着を隠すのは難しいですが、ノーパンを隠すのは簡単でしょう」
「な、本気で言ってんのか!?」
「ええ、本気です。それが嫌ならば、自分と等々力氏はここからただ去るだけです」
 そうなれば、くりちゃんはこの後のマラソンをおっぱい丸出しで完走するか、あるいはここから教室まで、見つかったら人生終了のスニーキングミッションをこなす羽目になります。今、くりちゃんに選択肢と人権はありません。
「くそっ……くそぉっ……」
 半泣きになりながらも、状況は飲み込めているようです。くりちゃんは嗚咽に近い声で鳴き、自らのでっかいおっぱいをぎゅっと締め付けました。
「自分のジャージは大きいですから、余裕で下まで隠せるはずです。それに、『コト』が済めばブルマはすぐに返します。そのパンツは元々自分の買ってあげた物ですので……おっと、口が滑りました」
 くりちゃんの脳裏に、今朝の惨劇が浮かんだのでしょう。握られた秘密、そして抜き差しならないこの状況。確実に、一歩一歩、追い詰められて、王手までは後一手と言った所でしょうか。
「『コト』って……何するつもり?」
 いやらしいくりちゃんは、そっちの心配をしていたようで、自分ははっきりと、
「挿入はしません」
 と、断りを入れて、「なんで脱ぐ必要があるんだ!?」と食ってかかってきたので、「くりちゃんの為です」とだけ答え、「いいから、早くしないと授業が終わってしまいます。そうしたら、教室に帰って着替える事も難しくなりますよ」と付け加えました。
「脅し慣れてんなぁ……」
 等々力氏が感心していました。


「そんなに……じろじろ見るなっ……」
 言われても、背中に穴が開くくらいに、自分と等々力氏はくりちゃんの着替えの様子を凝視し続けました。くりちゃんは背筋を丸めて、なるべく低く屈みながら、片腕で乳を押さえ(当然、収まりきるはずがないので、正確には乳首を隠すだけなのですが)、もう片方の手で、ずりずりと、のろのろと、ブルマを下ろしていきました。自分の買った黒の生地が見え、「黒かよ」と等々力氏が笑うと、くりちゃんは睨んで精一杯の抵抗を見せました。
「パンツも一気に下ろした方が良いですよ」
 余計なお世話を焼いてみますと、渋々くりちゃんも納得してくれたらしく、パンツとブルマを同時に、左を少し下げて、右を少し下げてとやっていき、やがて尻が割れ始めました。
「まだ負けるには早すぎますよ、等々力氏」
 等々力氏の勃起率は、80%まで急上昇していました。分析するに、乳とか尻とか関係なく、この異常なシチュエーションその物に興奮をし始めているようで、自分はというと、ここから更に先の展開が見えているので、男根の方は元気いっぱいになっていました。
「当たり前だ。まだまだ俺は……うっ」
 ストン、とくりちゃんのブルマとパンツは仲良く地面に着地しました。今日ほど重力に感謝した日はありません。
 雪のように白い、生ケツ。
 内股で、もじもじと揺れるそれを見て、衝動的に襲いたくなったのは、自分だけではないはずで、隣にいる等々力氏も、コメントをくれる皆様も、みんなが一斉にルパンダイブを決め込むに足るエロいやらしい、見事なお尻でした。
「は、早く! ジャージ!」
 しかし自分は変態ではありますが、同時に紳士でもあるのです。約束は、守ります。叫んだくりちゃんの背中にジャージを被せ(触らないように細心の注意を払いました)、くりちゃんは素早くそれを着ました。やはり、背の高い自分が着ている上着でしたから、くりちゃんの背ならば十分股間まで隠れはしましたが、その下は「ノーパン」という事実ただそれだけで、満足出来るのが漢であると、そう感じもしました。
「お前ら覚えてろよ!」服を得て、やや強気になったのか、くりちゃんは悪役の捨て台詞のように、「戻って着替えたらボッコボコにしてやる!」
 そう言って、コースに戻り、反対向きに走り出しました。自分はくりちゃんが置いていったブルマとパンツをポケットに丸めて入れて、等々力氏と共にくりちゃんの後を追いかけました。


 自分のジャージを短めのワンピースのように着こなすくりちゃんは、尻にかかる布を手で制しつつ、コースを逆走していきました。すれ違う他のクラスメイト達は、ぎょっとしてくりちゃんを見つめますが、話しかけたり、笑う者など一人としていません。もしそんな事をしても、ヘビのような鋭い目で睨まれ、無視されるのが分かっているからでしょう。
 くりちゃん、なんといけない子なのでしょうか。
 自分の前から逃げ出さず、大人しくこちらの指示に従っていれば、少なくとも恥は最低限で留められたはずです。ほら、向こうから、三枝委員長を先頭に、その取り巻き四、五人の姿が見えてきました。自分と等々力氏も、もう少しでくりちゃんに追いついてしまいます。まさにくりちゃんにとっては最悪のタイミング。しかし自分にとっては、これ以上無い程の、最高のシチュエーション。
「き、木下さん?」
 三枝委員長がくりちゃんの姿に気づき、心配そうに声をかけました。学級の長として、何があったのか正確に知り、対策を立てる必要があると判断したのでしょう。しかし、何があったのか、ではなく、これから何が起きるのかの方が、ここでは重要な事なのです。
 自分は走りながら、右手を伸ばしました。くりちゃんは必死に、それでもジャージが翻らないように気をつけて、前へ前へと進みます。時間がゆっくりと流れていきました。自分は、その永劫の中で、もがくように、味わうように、くりちゃんの背中に、指先だけでそっと触れたのです。
 プシュッ。コーラのペットボトルを開けた時のような音が鳴りました。三枝委員長と、その取り巻きが、くりちゃんの表情を見て、驚いています。クラスメイトには見せた事の無いような顔をくりちゃんがしている事は、容易に想像がつきます。
「だ、大丈夫? 木下さん!?」
 三枝委員長がそう声をかけても、くりちゃんには返事さえ出来ません。くりちゃんの股間からは、理科室の水道みたいに勢い良く、黄色の液体が現在進行形で「噴射」しているのです。くりちゃんの局部と股下の空間を遮る布は、何一つとしてないのですし、許容量を越えた尿が爆発するのは極々自然の事です。哀れくりちゃんは、一日に一度ならず二度までも、他人の前で、自らの放尿シーンをご披露してしまったという訳です。
 くりちゃんはよろよろと、おそらくはその場から逃げたい一心で、自分、等々力氏、三枝委員長軍団から離れようとしましたが、足が絡まってコケてしまいました。そしてよつんばいの、ジャージの裾で局部がかろうじて隠れているような、まさに獣か何かのような格好で、しばらくの間おしっこを垂れ流し続けたのです。
「う……うぅ……うわあぁぁぁん……」
 あのくりちゃんが、子供のように泣き出してしまいました。上からも下からも、液体を垂れ流すくりちゃんに、その場にいた全員が釘付けになりました。
 その時、背後で「BOMB!」と、鳥山明の漫画のような効果音が鳴り、自分は振り向きませんでした(くりちゃんの放尿シーンを目に焼き付ける事が最優先です)。後で確認した所によると、その爆発音は、等々力氏の陰茎が爆発してしまった音だとの事です。

       

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