Neetel Inside ニートノベル
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「もしかして、ミズキ姫は既に『恥』をお忘れになっているのですか?」
 半ば恐る恐る、半ば戒めるように、イーソがそう尋ねた。公衆の面前においてその素肌、乳房、局部を晒しているにも関わらず、至って涼しげなミズキに見かねての問いかけだった。
 これに対し、髪をかきあげて耳にかけたミズキは答える。
「そうね、恥ずかしいけれど、恥ずかしい事はしていないと思っている。というのが正しいかしら」
「……どういう意味ですか?」
 真っ当な疑問。ミズキは続ける。
「当たり前の事だけど、普段誰にも見せなかった自分の肢体を、誰とも知れない赤の他人に見せるのはとてつもなく恥ずかしい事よ。余り表には出さなかったけれど、最初は顔から火が出るかと思ったくらいだったんだから。でも、こうなってしまった事は変えようがないし、むしろ試練だとさえ思っている。間違いなくこの旅は、かつてない程に私を試しているのを感じるのよ。こんな感覚、分からないかもしれないけれど」
「分かります」
 ほとんど反射的にイーソが答えた。「自分も、試されているのを感じています」
「そう? なら私達は一緒ね。だから恥ずかしいけれど、恥ずかしい事はしていない。誇りさえ持っていれば、最初から服なんていらない。そう思うの」
 街中でも胸を張って歩くミズキの姿を見て、イーソもこの旅を誇りに思うようになった。
 ミズキが呪いを受けてから、3ヶ月という時間が経過していた。幾つもの山を越え、街道を歩き、川を渡り、そして人々のいやらしい視線に晒されながらも、悪意を乗り越え、目的を果たす為、2人の旅は続いていた。しかし未だ2人は男女の関係にはなっておらず、悶々としながらもその貞操は守られていた。
 そんなある時、山中を歩いていると2人の目の前に背の高い美人が現れた。氷のように冷たい目をしており、肌は絹のように白く透き通っている。そしてその耳は尖っており、その人物が純粋の人間ではない事を予感させた。
「失礼します。私はエルフ族のユノーという者です」
 もう随分と前に絶滅したと言われていたエルフの突然の出現に、驚きを隠せない2人だったが、ユノーというエルフは構わず続ける。
「フヴドの呪いにかかった姫とはあなたの事ですね?」
 警戒するミズキに、剣を抜こうかと身構えるイーソ。
「心配はご無用です。人間には呪いの事は話していませんし、私の双子の妹が得意の占いで突き止めた事です。私は決してあなた方の旅を邪魔しに来たのではありません。伝説の泉への道案内をする為にあなた達を探していたのです」
 事実、伝説の泉に行く為にはエルフの案内が必要だという一説が言い伝えにはあった。だがいない者は仕方が無いので諦めていたが、このユノーの提案は、2人にとって願ってもいない物となった。しかし物事には裏の事情があり、世の中とはそう都合の良い事ばかりではない。
「ただし、人間がエルフの隠れ里に入る為には、受けなければならない試練があります」


 イーソ、ミズキ、そしてユノーの3人は、近くの街に宿を取った。ユノーはエルフである事がバレないように変装していたが、街の者が皆注目するのはミズキの肉体の方であり、もしかするとその必要は無かったかもしれない。
「フヴドの呪いは、もしもそのまま放置すればやがて世界を滅ぼす災厄となるでしょう。なので私達エルフとしても、すぐにでも伝説の泉に案内したい所なのですが、エルフの隠れ里にはどんな時でも破ってはならない掟があるのです」
「掟、ですか?」
「はい。エルフの隠れ里に入る人間は、『純粋な心』を持っていなくてはなりません」
 純粋な心、という言葉に疑問符を浮かべる2人。
「仮に私達がその『純粋な心』を持っていたとして、どうやってそれを証明すれば良いのですか?」
 ミズキのもっともな質問に、ユノーは行動で答える。小さな鞄から取り出したのはこれまた小さな薬瓶で、中には七色に煌く液体が入っていた。
「これはエルフの隠れ里に伝わる秘薬で、一時的に人間の自制心を消失させ、本能を引き出す事が出来ます」
「薬というより、それは毒では?」
 イーソの質問を無視して、ユノーは続ける。
「これをどちらかに飲んでいただき、その様子を私は観察します。2人に『間違い』が起こらなければ、純粋な人間であると判断し、隠れ里へ招待いたします」
 しばらく2人は言葉を探していたが、決断はミズキの方が早かった。
「つまり、面接のような物ですね。分かりました、受けましょう。秘薬とやらは私が飲みます」
 と言って薬を受け取ろうとするこの豪胆な姫に、すかさずイーソが止めに入る。
「お待ちください。ミズキ姫に得体の知れない物を飲ます訳にはいきません。どちらかで良いというのなら、自分が飲みます」
「それこそ言語道断です。あなたが自制心を失えば、すぐに間違いが起こるのは目に見えています」
「なっ……」
「いつもちらちらと私の乳首や性器を見ている事に、私が気づいていないとでも思っていたのですか?」
 絶句するイーソに、更に追い討ちがかかる。
「ましてやあなたは男であり戦士でもある。もしもその気になれば、私の事など簡単に組み伏せてしまうでしょう。それともそれが望みなのですか? 伝説の泉の事などもうどうでもいいのですか?」
 弁論においてイーソに一部の勝機もある訳がなかった。トドメとばかりに、ミズキは2人に向かって堂々とこう宣言する。
「私には自制心など最初から必要ありません。何故なら、私の人生に恥などは無く、隠し事も無いからです。例え秘薬を飲んだとしてもそれは変わらず、この試練はいとも簡単に乗り越えられるでしょう。私の本能が純真無垢である事が、これから証明される事を誇りに思います」
 数分後、街の噴水広場の大観衆の前にて露出自慰に興じるミズキの姿があった。


「みんなもっと見てぇ! 私のいやらしい姿見てぇ!!」
 狂ったように叫びながら、よがり狂うミズキ。どうやら秘薬の効果は本物だったようで、口にした瞬間に目の色が変わり、動揺するイーソを殴り倒して外に出ていった挙句、エビ反りになりながら性器を弄り、とんでもなく淫らな姿を晒す事になった。イーソは打ちひしがれたようにその様子を見つめ、独り言のように言う。
「馬鹿な……ミズキ姫がこんなに乱れるなどありえない……何かの間違いだ」
 そこにユノーが冷静に述べる。
「秘薬はあくまでもその人間が持つ本来の欲望を引き出す事しかしない。よって、元々彼女の中には公衆の面前でオナニーがしたいという欲望があったという事になる」
「嘘をつくな! ずる賢いエルフめ! ミズキ姫に一体何を飲ませたんだ!」
 目の前の現実を否定するには、とにかく怒る事しか出来なかったといえる。
「ですがご安心ください。まだ『間違い』は起きていません。これだけなら隠れ里に入る資格はあります」
 一瞬、イーソはユノーの言っている言葉の意味が分からない。
「え、セーフなんですか?」
「セーフです。露出オナニーはギリギリセーフです」
 全く基準が分からないながらも、助かったとはいえる。しかしこれ以上姫に恥を晒す訳にもいかず、イーソは急いで近づき、多少強引ながらもミズキの両手の動きを止め、立たせる。
「あ、イーソだ。ねえ、セックスしようよ。疼いて疼いて仕方が無いの。イーソもそうでしょう?」
 普段ならあり得ないミズキの台詞に、イーソは断固として首を横に振る。
「姫様、なりません。どうかお気を確かに。さあ、宿に戻りましょう」
「やだ! セックスしてくれなきゃ宿には戻らない!」
 じたばたと子供のようにもがくミズキ。流石に乱暴を振るう訳にもいかず、困り果てるイーソ。そうしている内に、ミズキはその攻撃の矛先を近くでその様子を見ていたユノーに向けた。
「じゃあいいもんね。イーソが私としないって言うなら、私はユノーちゃんとしちゃうもんね」
「ふぇ?」一瞬ユノーがそのキリッとした表情を崩し、動揺を覗かせたが、すぐに仏頂面に戻る。
「うふふ、ユノーちゃんかわいい。ほら、脱いで脱いで。一緒に気持ち良い事しましょう?」
 言っている間にもするするとユノーの服を脱がしていくミズキ。ユノーはますますと表情を強張らせるが、頬はどんどん紅潮していく。
「イーソも参加したくなったらすぐ言いなさいね。ほら、ユノーちゃんのかわいい乳首。ぺろぺろ舐めちゃう」
 めくるめくくんずほぐれつちんちんかもかもに、イーソの一部分が完成する。せめてその昂ぶりを振り払おうと、ミズキにどんどん飲み込まれていくユノーに問いかける。
「ユノーさん抵抗してください! どうしてされるがままなんですか!?」
「わ、私はあくまでも……あふぁっ! ……監視者に、ううっ、しゅぎないぃ。彼女が本能のまま行動するのに私を使うというのであれば……ふぁああ! 私は何も……ああっ!」
「ていうかこの状況ってセーフなんですか? 自分にはどう見てもアウトにしか」
「セ、セーフ……! 露出公開百合セックスはギリギリセーフっ」
 どんな基準だとひとりごちつつ、イーソは2人の痴態を眺めていた。

       

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