Neetel Inside ニートノベル
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 まずは何よりも作戦が必要だと私は判断しました。闇雲に向かっていっても、すぐに絡め取られるのは目に見えています。何せこちらは両手両足、あとは頭突きか噛み付き程度の攻撃しか出来ないのに対し、敵の化け物は1、2、3……数えてみると、合計15本。15本もの触手を自由自在に操れるのですから、1本1本の力がどの程度かは計りかねますが、まず手数で言えば2倍以上の差がある訳です。
 では、15本の触手を支えている本体はどうか。ここ数日の試合で人間の急所はわざわざ見なくても勘で当てられる程度には戦い慣れてきた私ですが、このゴムまりのような質感の、訳の分からない肉塊の一体どこに攻撃を喰らわせればダメージがあるのかなどは想像もつきません。人間と同程度の臓器が中に入っているのなら、発勁を用いて内部破壊を試みる価値もありそうですが、内臓があるという保障すらありません。
 相手は変態した変態なのです。人間を超越し、自らを怪物にした男が相手となれば、まず常識は通じないと言っていいでしょう。
 やはりここは主催者側が言っていたように、15本の触手の中に隠れた本物の生殖器とやらを探すのが最善かもしれません。もちろん、主催者の言葉に嘘が無ければ、という前提でもありますが、私の知っている限りの触手知識を総動員するに、信憑性はそこそこあると見ました。
 女騎士が敵に捕らわれ、触手の相手をさせられるというシチュエーションはエロゲー、漫画、果てはAVまで鉄板の流れとなっています。女騎士が忍者や盗賊や戦隊ヒロインに代わったり、触手とのプレイ前にオークと一旦絡ませたりなど色々アレンジはありますが、大抵の場合、触手と1度絡んだ少女は子宮に卵を植えつけられ、そこで終わるパターンもあればボテ腹になって子供を産まされるパターンもあります。ちなみに触手と幸せに暮らすパターンはこれまで1度も見た事がありません。
 いずれにせよ、異種間というか哺乳類と無脊椎動物の間で生殖が行えるというのは実に理解不能な概念ですが、その辺りはご都合主義という名の魔法でもってカバーし、とにかくエロに集中させるのが定石という物です。
 また別の角度から見れば、繁殖を目的としない性行為を触手が行うというのはやや合理性に欠けると私は思います。そんな女性を悦ばせる為だけに生きている生物は不自然ですし(加藤鷹氏を非難している訳ではありません)、犯した後に捕食をするというのも効率的とは言い難いはずです。それに、目の前にいる触手は元人間。それも稀代の変態な訳ですから、自ら生殖能力を断つというのも考えにくいように思います。
 色々と話が寄り道しましたが、要するにこの触手の中に本体由来の生殖器があると言うのはまず間違いなく、攻略の鍵はそれを見つけられるかどうかにかかっていると断言します。
 私は慎重に距離を取りながら、一本一本の触手を観察しましたが、遠目では判断がつきかねました。長い物、短い物、その柄には微妙に違いはありますが、それぞれ先端は亀頭風ないやらしい形に膨らんでおり、尿道口と思わしき穴もあいているのでますます見分けがつきません。
 結局の所、物理的手段をもって選別を行うしか方法はないようです。
 しかし方針は固まりました。数多ある触手の中から本物の生殖器を見つけ、破壊する。その間に犯される事は許されません。もしも私が捕まって、アヘ顔ダブルピースで卵をぽんぽこ生み出せば、マスターの心はおそらくきっと私から離れていくでしょう。そんな事はあってはならないのです。


 ゴングが鳴ると同時に慎重に怪物へと近づきながら、私は声をかけました。
「始めますよ? 良いですか?」
 未知の敵に対し、少しでも情報を集めるには言語は強力な武器になると思ったのですが、どうやら意思疎通は不可能なようでした。怪物はぐねぐねと蠢きながら、なめくじのように這って私へと近づいてきます。スピードはそれ程でも無いのか、と私が思った矢先、長い触手が凄まじいスピードで私に伸びました。
 私はそれを反射的に、手刀で叩き斬ります。
 触手の先端部分が千切れ、リングの上に転がると、何度かびちびち撥ねた後、大人しくなりました。
 確かに、その攻撃のスピードはなかなかの物があり、もしも私が普通の幼女でしたらその開幕の一撃にて手の自由を奪われていた事は間違いありません。しかし私の格闘能力は今、対魔忍のそれと張り合う程に研ぎ澄まされています。
 今の一撃で分かった事は、私の腕力があれば触手それ自体を破壊するのは容易い事と、私の動体視力であれば攻撃を見切れる事。そしてもう1つ、重要な事が分かりました。
 どうやら触手は再生するようです。
 切断したはずの触手の切り口から、新しい先端部分が生えて来たのを私は確認しました。
 少しだけ予想はしていましたが、目の前にするとちょっとした絶望感を抱かずにはいられない私に、怪物は連続で攻撃をしかけてきます。
 今度は4本。。
 目標は……両手両足の拘束。
 直感すると同時に私は重心を低く構え、まずは右手を狙ってきた触手を叩き、左手で対応する触手を掴みます。その時既に左足には触手が絡みついていましたが、右足を後ろに下げて踏ん張り、左足にまとわりつく触手を空いた右手で切断しました。そして右足を担当する触手が肌に触れた瞬間、私は左手で掴んでいた触手を全力で引っ張りました。
 私の身体は本体へと引き寄せられ、反対に本体も私へと引き寄せられました。
 射程を確認。勢いを利用して、ローリングソバットを叩き込みます。
 ほんの一瞬でしたが、触手が硬直したのを確認しました。私は怪物本体を踏み台にし、両足で蹴って再び距離をとります。それと同時に握っていた触手を再び引っ張ると、確かな手ごたえと共に根元から引っこ抜けました。
 この攻撃は危険な賭けではありました。もしも本体へのダメージが全く無ければ、私はすぐさま触手に絡め取られていたでしょう。しかし成果はありました。いくら怪物といえども、攻撃を受ければ怯むし、ならばおそらく疲労もあるはず。無敵ではないのです。
 それと、複数の触手を同時に動かすと複雑な動きが出来ないというのも今の動作で理解しました。私が飛び込んだ瞬間、反応出来ていた触手はごく僅かで、他のほとんどは後ろでうねうねとしていただけなのです。
 更に好材料として、私が根元から引き抜いた触手は、再生はしているものの、先端部分を切った時よりも随分とそのスピードが遅いようです。紫色の体液を流しながら、ずるずると少しずつ突起を伸ばしています。この分なら、完全に動かせるようになるまでに30秒以上はかかると見えました。
 新しく得た情報を整理し、再び策を練ります。今のような攻撃を繰り返し、カウンター気味のヒットアンドアウェイで行くべきか。しかし1度攻撃のタイミングを読まれれば、近づいた瞬間に囚われる可能性があがります。ここは死角を見つけるべきです。死角からなら安全に攻撃を仕掛ける事が出来ますし、何本かの触手を根元から破壊できれば、生殖器を見つけるチャンスも生まれるはずです。
 これらはわずか5、6秒の考察でしたが、その間に私は致命的なミスを犯しました。
 見えているのに見えていなかった。
 気づいた時には、2本の触手が私の両足に完全に巻きついていました。


 何が起きたのか。
 瞬時には理解できませんでした。
 足元を見ると、そこに触手があったのです。
 私の動揺を、怪物は見逃しませんでした。再び複数、それも今度は6本もの触手が、今度は私の腕のみ目掛けて伸び、振り払おうとは試みたものの、足を拘束されているのはやはり大きく、結果的には両手も封じられました。
 その時、ようやく私は気づきました。
「リングの……下!?」
 数が足らなかったのです。最初15本あったはずの触手が、私が距離をとって情報を整理している間に、12本に減っていました。1本は破壊したので、都合2本。この時、怪物は後方の触手で私に悟られないようにリングを突き破り、足元まで伸ばしていたという事です。
 触手ならではの戦闘スタイル。
 私は身を捩って触手から逃げようと試みましたが、合計8本の触手で捕獲された身体の自由はきかず、1本の触手に噛みつきはしましたが、そのまま本体の方へと引き寄せられ、完全に全ての動きを封殺されました。
 絶体絶命。
 これはほんの一瞬の油断と、観察力不足が招いた失敗です。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
 私は絶叫し、全ての力を振り絞って、もう型や定石などどうでも良く、滅茶苦茶に暴れました。しかし暴れれば暴れるほど触手はそのぬめぬめの感触を私の肌に食い込ませ、より深く、逃げ場のないように緊縛を強めました。
 こうなっては脱出は不可能です。怪物は私を頭上に持ち上げ、服の中へと平気でその触手先端を侵入させてきました。
 胸、脇、太もも、二の腕、足の指の間を、複数の触手が同時に這いながら、その先端からは何らかの分泌液をじわじわと出しています。その液体は私の唯一の着衣であるレオタードを溶かしているようでしたが、痛みはありません。どうやら無機物だけを溶かす都合の良い液体であるようです。
「や……やめ……触るな……!」
 と、せめて口で抵抗を示してはみるものの、聞く耳は見当たりません。むしろ私の嫌がる様を見てより一層興奮したようで、触手の動きは活発になりました。それでも、既に四肢の自由を奪われた私に出来る事は少なく、悦ばせる罵倒ではなく、抉るような罵倒を必死に考えます。
「私みたいな幼女を触手でおかしたいなんてまさに変態野郎の考えね! そんな奴は大人しくPCの前で1人オナってるのがお似合いよ! この犯罪者! あんたなんかに絶対負け……もがっ」
 唯一の反撃も、口に捻りこまれた触手で封じられてしまいましたが、私は即座に歯を立てて、その触手を噛み千切ります。すると、もう1本の触手が私の頬をひっぱたきました。更に続けて、腹部を鈍痛が襲います。怪物は何も語りませんが、「大人しく咥えろ」とでも言いたげに触手をうねうねさせていました。
 くやしくてくやして涙が出てきました。負けている事が、ではありません。マスターに頂いた身体を、このような下劣な存在に傷つけられてしまった事がたまらなかったのです。


 反抗もむなしく、私は触手フェラを強制させられました。再び噛み千切る事は容易ですが、それでまた打撃を喰らうとダメージを蓄積する事になり、結果的に反撃の機会を失うことになります。今は耐えるしかない。私は覚悟して、口の中で暴れるそれを受け入れました。
 触手による全身の愛撫はなおも続き、しかもそれは私の性感帯を刻一刻と正確に突いてきていました。私の反応を確かめながら調整してきているのでしょう。
 そしてこの時、私は少しばかりの快感を得始めていたのです。
 これは私にとって死ぬ程恥ずかしい告白です。しかし言い訳をさせてもらえば、おそらく触手の出す分泌液には服を溶かすだけではなく一種の催淫効果も含まれていたのでしょう。どれだけ都合よく出来ているのか感心したくもなりましたが、そんな場合ではありません。
 頬張った触手が口内で勢い良く分泌液を吐き出すと、私には時間が残されていない事を理解しました。レオタードはすっかりと溶け落ちて、本来隠さなければならない部分はもう丸出しになっています。両胸の突端には触手が吸い付いて絶え間なく乳首を刺激し続け、性器の周辺も念入りにマッサージするように触手が這っていました。更には肛門にも、触手はぐりぐりとその突起を押し付けてきました。
 ですが、それでもまだ挿入はされていません。
 痛みを与えないようにと気を使っているのか、それとも焦らして快感を高めているのか、おそらく後者でしょうが、その戦略は実りつつありました。
 私は口の中に溜まった分泌液を吐き出しました。飲んで欲しかったのか、今まで突っ込んでいた触手がやや寂しげに俯いていましたが、そこまでしてやる義理はありません。それにこれは私が仕掛けた策でもありました。私はそのぬるぬるの分泌液を、心底嫌そうに吐き出すフリをして、自らの右腕にかけておいたのです。滑りやすくして、脱出の可能性を高める。今更腕が1本自由になった所でどうにもならない現実がありますが、しかし私の予測が正しければ、あと1度だけ、チャンスは私の元に舞い降りるはずです。
 いよいよ、その時がやってきました。
 性器への愛撫が止まると、何本かの触手が更に追加されました。そして今度は乱暴に、私の性器を広げ始めます。ぴったりと閉じていたすじがゆっくりとこじ開けられ、小さな穴が白日の下に晒されました。
 私の身体を束縛し、愛撫を加え、生殖の準備をする14本の触手。
 そして、最後の1本がその姿を私の前に現したのです。

       

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