Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 この時を待っていた。というと何だか私がとっても淫乱であるように思われるかもしれませんが、決してそういう意味ではありません。怪物の触手15本の中には本体の男性器、ひらたく言うとちんぽが1本紛れており、それを探し出して破壊する事によって私は勝利を得られるという理屈は先に述べた通りです。ちんぽを破壊してなぜ勝てるのか。それは実の所やってみないとわかりません。HVDO能力が一時的に解除されるのか、それともHVDO能力自体が消滅するのか。いずれにせよ、相手の急所を破壊した時点でそのダメージは勝負を決するのに十分だと思われます。
 そして最初に私の性器への侵入を試みてくるのが相手のちんぽである事はあらかじめ予測済みでした。伊達に私もマスターという生粋の変態に仕えている訳ではありません。変態が、まず最初の挿入を自らの性器で行いたがるのは容易に想像がつきましたし、特に、他の触手でがんじがらめにされて全く身動きのとれなくなった格闘幼女をレイプする瞬間などは、ちんぽ以外にありえません。
 15本目の触手を間近に見る事によって、私の推理は確証を得ました。なぜなら最後に姿を現したその触手だけは、先端から分泌液を出す事なく、更に他の触手達よりも気持ちちょっといきりたっていたからです。
 それが分かった所でどうなるのか、あとはもうただただ挿入を待つばかりの状況ではないか。既にちんぽは私のつるつる恥丘に触れ、今か今かとその瞬間を待っています。常識的な人からすれば、ここから一体何が出来るというのかと疑問に思うかもしれません。
 しかしまだ最後の手はあります。私は触手の分泌液のぬめりを利用して右手の自由を得つつありますし、幸いな事に敵がちんぽに集中しているせいか他の拘束は今ほんの少しではありますがゆるんでいます。
 とはいえ、ここで右手を一気に引き抜けば、敵は一気にちんぽを引っ込め、再度私を強く拘束するのは分かりきっています。敵もそれが分かっているからこそ弱点であるちんぽを曝け出したのです。
 ではどうすればいいのか。
 妙案が1つあります。
 しかしこの案を採用する事ははっきり言って屈辱です。また、成功するかも分かりません。最悪の場合、更に敵を喜ばせる事にもなるでしょう。
 ですが、私はこれをしなければなりません。勝つ為にプライドを捨て、利用できる物は利用し、マスターの期待に応えるのです。絶対ちんぽなんかに負ける訳にはいきません。
 意を決し、私は股間に集中しました。既に準備は出来ています。
 そして私は本来緩めてはならない道を緩めました。
 ちょろっ。
 第一陣が放出された後、すぐに本陣が続きます。一筋の液体はちょうどそのまま相手の触手ちんぽに命中し、敵は突然の奇襲を受けて私の狙い通りに硬直しました。
 この作戦を実行に移す事は、あの五十妻などというおしっこ好きの変態に習うようで気乗りしませんでした。しかし四肢が封印された状態で出来る事など高が知れています。これはその中でもおそらく最低な部類に入る行為でありますが、効果は覿面でした。
 隙をつき右手を脱出。そのまま真っ直ぐ、私のおしっこを浴び、驚いて固まった触手ちんぽを掴み、一気に握力を強めます。
「Ghyaaaaaaaaaaaaa!!」


 勝った!
 言語を解さぬ叫びをあげる怪物に、私はついに勝ったのです。触手の動きは鈍くなり、かろうじて私の身体を空中に支えていますが、それもこのまま握力を更に強め、握りつぶしてしまえばおそらく解除される事でしょう。私はキリキリと、万力のような力を込め、この数ヶ月間で鍛えに鍛えた手でトドメを刺しにかかりました。
 その時ふと、心に余裕が出来たからか、観客席の最前列で見ているマスターが視界に入ったのです。
 私がその姿を見てしまった事を後悔するのは、それからほんの数秒先の事でした。その前に疑問が生まれ、疑問は解答を得て、解答は見る見るうちに葛藤へと姿を変え、最終的には私に敗北という結果をもたらしました。
 マスターは勃起していました。
 それも私がこれまで見た事無い程に激しく、最大レベルまで勃っていたので、座っていても服の上から分かる程でした。
 そして絶体絶命の状況から逆転した私を見て、2割は嬉しそうに、しかし8割方は残念そうにしていたのです。
 私はその時全てを悟りました。
 マスターはSです。生粋の鬼畜です。
 挫折する私に努力目標と称してこの闘技場を与え、闘士としての実力をつけさせる。絶対に負けないようにと命令をして、私の頑張りを引き出す。そして順当に勝たせ、自信を持った頃に最大の敵が現れる。なぜなら闘技場もHVDOが運営している物であり、HVDO能力者への対策を怠るはずがなく、そういった事態に備えている。あるいは最初から触手のHVDO能力者がいた事をマスターは知っていたのかもしれません。知っていて、私を触手にぶつけたくなった。これはドSの思考としてはむしろ正常。頑張ってもがいてあがいた挙句に、どうしようもない敵が現れて無残に犯される。その姿をマスターは見たかった。
 しかしマスターは、マスターだけの理想の幼女を求めている。
 誰か他の人間(この場合は微妙ですが)に姦され、手垢のついた幼女など興味を持つはずがありません。私の肌が滑らかで美しいのは穢れを知らないからであり、私の秘所がひっそりと閉じているのはたった1人を待っているからです。そして私が幼いのは、マスターがロリコンだからです。
 つまり私は用済みになったという事です。
 物理的に殺す事の出来ない私を処分するには、マスターが自分の理想を1度壊す必要がある。実に合理的な手段です。マスターらしい賢いやり方だと思います。死なない気がするといった私の言葉は、ある意味では正しかった。
 私にとって重要なのは、マスターの幸せです。
 いつかは私もマスターの愛を求めた事もありましたが、私はようやく気づけたのです。ただ相手の幸せを祈る事が真の愛であり、もしもそれを私が得られたならば、私はきっと本当の人になれるのです。
 中途半端な生命ですが、誰かの為にありたいと思います。
 やがて私はゆっくりと触手ちんぽを手放しました。触手は戸惑っている様子でしたが、これを好機とばかりに私を再度強く縛り、いよいよ本当の脱出不可能となりました。
 怖くてマスターの顔が確認出来ません。しかしその必要もありません。後りの人生で私がする事は、ただただ無残に犯されて消滅する事のみです。皮肉ではなく、今までマスターに仕えてきた中で1番楽なご奉仕です。
 しかし結果を言えば、私はこの後も死にませんでした。死なずに、こうして今日もマスターの言いつけ通りに日記を書いているのです。


 触手が再び私を犯そうと蠢きだしたその時、白と黒の服が視界を掠めました。清く正しいロングスカートに、何でも出来る万能エプロン。ホワイトブリムにエナメルシューズ。いわゆるメイド服という物であり、着ているのはもちろん女装好きの変態親父ではなく、正真正銘のメイドさんでした。
 謎のメイドは今まさに挿入しようとしていた触手ちんぽを、巨大なペンチのような拷問器具で横から挟み込み、締め付けました。再び怪物の例の悲鳴が聞こえ、今度は流石に支える事すら出来なくなったのか、私は宙に放り出されました。
「そこまでよ!」 
 威勢よく叫んだのは、謎のメイドではなく私のライバルでした。いえ、相手はまずそう思ってはいないのでライバルと呼ぶのはおこがましいかもしれませんが、私には対抗意識がありました。
「やあ、三枝委員長。妙な所で会うね」
 観客席で立ち上がったマスターは、股間の物をビンビンにさせたままリングに近づいてきました。名前を呼ばれた三枝瑞樹も、反対側からリングに近づき、やがて私の目の前で対峙します。
「どうして邪魔をしたのか、一応理由を聞かせてもらおうかな?」
 あくまで和やかに接するマスター。対して突き放すような三枝瑞樹。
「つい今さっき、私がこの闘技場の支配人になったからよ」
 これには流石のマスターも黙りました。
「私がHVDOの幹部になった事はもう知っているでしょう?」
「ああ、遅れたけれどおめでとう」
「ありがとう。それと、私の闘技場での勝ち分が支配人の資産を超えたのはご存知?」
「……いや、それは知らなかったな。ギャンブルでも優等生なのかい?」
「ギャンブルを真面目にしている内は勝てないわね」
 一理あるかもしれない。しかし今はそんな事よりも、状況整理が必要です。
 ちんぽが破壊された事により、既に触手は消え、本体らしき男が曙状態で寝そべっており、その前に拷問器具をぶら下げたメイドが立っています。私は危機を脱したのかそれとも更なる危機に陥っているのか分からなくなり、しかし肉体精神両面の疲労で立ち上がる事も出来ませんでした。
「こっちはうちのメイドの柚之原。春木君は初対面だったかしら?」
「どうだったかな。覚えてないな」
「小学生以外には興味ないものね」
 変態同士の会話には一部の隙もなく、ごくごく自然に異常性が流されていきます。
「それで、この試合は結局どうするつもりなんだい?」
「支配人権限で没収試合とさせていただくわ」
「何故だい?」
「あなたに恩が売れるから」
「僕が君に感謝を? どうして?」
「不思議な事を聞くのね。私はあなたの小さなお友達を助けてあげたつもりだったのだけれど」
「確かに、り……いや、彼女は君が登場したおかげで助かったようだ」
「あら、余計なお世話だったかしら?」
 私の胸が締め付けられます。マスター、どうか遠慮なさらずに私を見捨ててくださいと、強く願います。
「いや、そんな事はない。助かったよ」
 私の目に溜まった水分に気づかれないように俯き、手で目を覆います。


 試合が終わり、自宅へ戻りました。
「どうしてあの時、わざと負けようと思ったんだい?」
 その質問に、私はどう答えるか一瞬迷いましたが、こうなれば正直に打ち明けた方が、マスターも私も楽になると思い、そうしました。
「自分を消滅させる為です。マスターが私に飽きられているようでしたので、新しい幼女を構築する為に私を破壊しようと思いました」
 マスターがじっと私を見つめたまま数秒の間があいて、その後、今までに見た事のないマスターの本気の大笑いが押し寄せてきました。
「あははははは! りすちゃんはそんな事を考えていたのかい? 僕が君に飽きたから、捨てようとしていると」
「だ、だってそうではないですか? 私が勝ちそうになった時、マスターは残念そうな顔をしていました。私がそれを見間違える訳がありません!」
 性奴隷としてはやや強めの口調になってしまいましたが、ここは譲れない所です。
「ああ、もちろん。それは残念だったよ」
 マスターは笑い涙を拭いながら、「ですから私は……」と食い下がる私を手で制止しました。
「でも、僕の目的は他にあった」
 一転、真剣な顔になるマスター。
「僕が本当に試したかったのは、君ではなく僕だ。君が触手にレイプされた後、それでもまだ君を愛せるのか。僕のロリコンが本物かどうかを試してみたかったんだ」
 唖然とする私に、更にマスターは続けました。
「それでもしも汚れた君を僕が愛せなかったら、僕はロリコンをやめてHVDOともすっぱり関係を断つつもりだった。僕が本当に幼女が好きなら、ロリビッチだろうとNTRロリだろうと関係ないはずだ。それを実戦で確認する為の作業を、君に手伝ってもらってたって訳さ。もちろん、格闘には本気で挑んでもらう為にこの事は伏せたけれど」
 私はマスターの顔を見つめていましたが、気づくと視界がぐにゃぐにゃと曲がり、それが感情による液体である事に気づきました。それでもマスターの優しい顔が、私にはよく見えていたのです。
「マスターは……私を……愛しているのですか?」
 おそるおそる尋ねた質問は、何の確証も得られない、実に無意味な質問であるにも関わらず、せずにはいられない、重要な質問でした。今にもせつなくて消えてしまいそうな私に、マスターはしっかりと実在を与えるように答えます。
「もちろん。君は僕の半分だ。僕が僕を愛するのと同じくらい、僕は君を愛している」
 私にとって、それは何よりも嬉しい言葉でした。
 しかし何と言って良いか分からず、ただただ涙を流し続ける私に、マスターはすっと近づき、ごくごく自然に、あくまでも日常の範疇で私の唇を奪っていきました。そして少しだけはにかみながらこう告げました。
「今日はこれくらいにしておこう。明日からはまた、もっといやらしい事をするからそのつもりで」
 こうして、私はマスターの虜となったのです。


       

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Neetsha