Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 音羽 白乃(おとわ しろの)女子。14歳の中学二年生。
 血液型はB型。誕生日は2月2日。みずがめ座。
 長女。裕福な家庭に生まれ、両親とも健在。
 高校生の兄が1人おり、共に実家で暮らしている。
 視力が悪く、常に赤いフチの眼鏡をかけている。
 つい三日前に髪を金に染めて、担任に注意をもらう。
 特技は料理。昼食のお弁当も自分で調理している。
 好きな言葉は「QWERTY配列」座右の銘は「栄枯盛衰」
 進路は清陽高校への進学を希望。
 趣味は漫画、ゲーム、アニメ。
 典型的なオタク女子ながら、女子の友人は多い。
 また、理由は不明であるが、男子との接触を避けている節がある。
 以下、知人の印象。
「オタクだけど面白い」
「いざと言う時頼りになる」
「たまに何を考えているのか分からない時がある」
 住所は郵便番号○○○-○○○○ Y市M区K町○-○○○ 
 電話番号は○○○-○○○○
 携帯電話は○○○-○○○-○○○○
 携帯アドレスは○○○○○○○○@○○○.○○○
 Twitterのアカウントは○○○○_○○○
 それから……。
「いや、もういいから!」
「そうですか。まだあと4、5ページ程続いているんですが……」
 くりちゃんが思い当たった人物、「音羽」という名前を聞いた後、三枝委員長に調査を依頼した所、1時間でこれだけの資料を用意して渡されました。
「委員長、怖っ……」
 くりちゃんは青ざめて、俯きながらそう言いました。
 放課後、件の音羽君の家へ向かいながら、自分は能力者討伐作戦会議も同時に進行させていました。


 そもそも自分が「能力者は女である」と判断できた理由は、自分がする事なしに戯れでしたHVDO能力の考察に基づいているので、所々綻びのある理知ではありますが、かいつまんで整理したいと思います。
「対象に3回触れるとおしっこが漏れる」
「対象を手で囲った視界に捉え、徐々に乳を膨らませる」
「無条件で瞬時に自分が裸になる」
 等々力氏の第二能力は、後から追加された物ですから例外として、ここまで出た能力は、相手に与える影響が大きければ大きいほど、発動する条件が厳しくなっているという事が分かるはずです。おしっこを漏らす事によって失う社会的信用は大きいですが、乳が大きくなる事によって困る事は、それはいわゆる贅沢な悩みという奴ですし、自分が裸になるというのはもはや自分の勝手で、見せられる方は迷惑かもしれませんが、能力の対象者である自分に被害が及ぶ訳ではないという理由から、一切の準備動作が必要無いのだと解釈できます。
 つまり、自分がこれらの例から何が言いたいかというと、もし仮に「相手にちんこを生やす能力」があるとすれば、それはかなり厳しい発動条件が無ければならないという事です。無論、ここまでの能力が偶然そうで、これから「無条件で半径1km以内にいる人物が全員エクスタシーに達する」というチート能力が出てきても何ら不思議ではないですが、それを懸念するのも労力の無駄という物でしょう。
 発動条件が厳しいという事は、これ即ちくりちゃんへの接近を意味します。既に周知の通り、くりちゃんには自分以外の友達がおりません。男子はおろか、女子も距離をとって彼女と付き合っていますが、それでも女子の方がいくらか彼女との距離が近いのは事実です。
 また、くりちゃんにちんこを生やしたタイミングも重要です。くりちゃんの証言によれば、昼食が終わり、教室に戻ってくる時、股間に違和感を覚えたそうで、そのまま一旦トイレに避難し、ちんこを確認して困惑していた所、授業が始まってしまった。本物のちんこなのかどうかを確認したり、なんとか引っこ抜けないか頑張っている内に勃起してしまって、そのまま五時限目はエスケープ。その後、休憩時間を利用して自分をトイレに引っ張ってきたとの事です。
 能力者が任意のタイミングで能力を発動できるという前提で言えば、くりちゃんにちんこを生やすタイミングとして、これは適切とは言い難いと断言できます。突然股間から今まで無かった物が生えたら、いくらくりちゃんと言えどもすぐに気が付くはずですし、その後トイレに避難して、いじっている内に勃起してしまう事も、経験者ならば簡単に予想できます。そう、ちんこを扱った事のある経験者ならば。
 導き出される結論は一つ。能力者は女であるという事です。
 以上が自分の推理ですが、ぶっちゃけた言い方をさせてもらえれば、「ちんこを欲しがるのは基本的に女じゃね?」というたった一行に不時着します。


 そしてこれら自分の推理は的中しつつあります。 
 昼休み、いつも屋上で一人寂しく昼食をとるくりちゃんの下に、1週間ほど前から、後輩である音羽君が尋ねてくるようになり、最初は無視していたものの、めげずに何度も話しかけてくる音羽君に、性根はコーギーよりも遥かにさびしがり屋のくりちゃんはついに折れ、今日、音羽君が持ってきたお弁当を、少しだけいただいたとの事なのです。それが発動条件だった、と見るのはいささか短絡的すぎると思われるかもしれませんが、付け加えて、6時限目の終わりに、このようなメールが届いた事が決めてとなりました。ゴテゴテとした絵文字は省略します。
『木下先輩、放課後、私の家に来て下さい。先輩が今困っている事を解決してあげます!』
 メールには分かりやすい地図が添付されており、一緒に帰るのではなく音羽君が先に帰り、後からくりちゃんを呼ぶという所に底知れぬ不穏を感じました。
 確定。
 そう言っても差し支えない状況です。
「あらかじめ言っておきますが、『速攻』で決めますよ」
 言葉の意味が分からなかったらしく、くりちゃんは「は?」という口の形をして、声を出さずに自分を睨みましたので、「『速攻』……で、決めます」と若干格好つけて言い直してみましたが、真意は汲んでもらえず、
「頼む。変態の思考回路は分からないから、1から分かるように説明してくれ」
 と、突っぱねられてしまいました。
「これから音羽君と接触した瞬間、自分はすぐに攻撃を仕掛けるという事です」
「……攻撃?」
「そうです。大変申し訳ない上に、全くもって自分の望む所ではないのですが、くりちゃんには再び盛大におしっこを漏らしてもらう事になります。ええ、自分も辛い所なんです。これではくりちゃんから授かった掟を破る事になってしまう。だけどどうか分かってください。本意ではないのです」
 腕を組んで強がりながらも、くりちゃんが若干紅潮したので、その脳裏に三枝委員長の眼前でノーパンで漏らしたあの光景がまざまざと蘇った事は、想像に難くありませんでした。
「……どうしても、それしか解決方法は無いのか」
「ありませんね」と、自分は断言。
「はぁ……なんで私の周りには、変態しかいないんだ……」
 確かに、至極最もな疑問でした。
「素質があるのではないですか」
 変態に見初められる素質は、変態の素質とほぼ同義である。というありもしない格言が視界を掠めました。


 到着。土地は自分の家の2倍ほどでしょうか、3階建てで、ガレージもあり、塀も高く、表札は大理石風。三枝委員長のリサーチ通り、なるほど裕福な家庭のようです。
「音羽……ここで間違いないようですね」
 くりちゃんは頷いていました。すぐに攻撃に移れるよう、くりちゃんの膀胱には既に3分の2以上の尿が溜められており、緊張もあってか、尿意を強く感じている様子でした。
「では、自分がインターホンを押しますので、音羽君が出てきた瞬間、パンツを下ろしてください」
「な!? パンツも下ろすのか!?」
「当たり前です。音羽君はふたなり好きなんですよ。パンツ越しのおもらしでは、普通のおもらしと変わりません。それに出来るだけパンツも汚したくないでしょう」
「そりゃ、そうだけど……え? ここですぐ漏らすのか?」
「『速攻』で決めると、さっき言いましたよね?」
「い、いくらなんでもここは……」
 周りはもちろん住宅街。人通りが少ないとはいえ、誰かに目撃される可能性もゼロではありませんが、自分にはそう、関係ありません。
「あのですねくりちゃん。正直、自分はどっちでも良いんですよ。今、困っているのはくりちゃん。それを助けるのが自分。その辺の認識を間違わないでいただきたいですね」
 くりちゃんはくやしそうに、ハンカチがあったら間違いなく噛み千切る勢いで自分を睨みました。
「さ、押しますよ」
「ちょ、待て待て!」
 ポーン、と自分の家のチャイムよりも気持ちやや上品な音が鳴って、耳を澄ませば、ドアの向こうから足音が聞こえてきました。
「ど、ど、どうちよう!?」
「ほら、くりちゃんパンツ脱いで!」
 ドアが開く瞬間、くりちゃんは意を決し、パンツをずり下ろすと同時にスカートもめくり、局部を露にしましたので、自分は目に毒が入らないように配慮し、くりちゃんの後ろに位置し、くりちゃんの肩を叩きました。
 じょぼぼぼぼ……。くりちゃんのちんぽ(略称くりちんぽ)から、尿がじゃんじゃん排泄されているようです。自分は目を瞑り、しばらくの間排尿が静まるのを待って、最後に「ぴゅっ」と出たのを耳で確認してから立ち上がりました。
「あれ?」
 実に奇妙な空間でした。くりちゃんはまるで時間が止まったみたいに硬直し、スカートもたくしあげたまま、目は光を失っていました。そしてそのくりちゃんの痴態を見ているはずの、ドアにいる人物は、予想とは違った人物で、彼もまた硬直していたのです。
 上下同じ色のスウェットを着た、高校生くらいの男。自分は三枝委員長の調査資料にあった一行を思い出しました。

>高校生の兄が1人おり、共に実家で暮らしている。

       

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