Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

 何度も何度も申し上げてきた事ですし、これからも何度だって申し上げますが、自分はふたなりに興味を持った事も、性的興奮を覚えた事もありません。ですが、今音羽君が、くりちゃんに対して実行しようとしている行為を目の当たりにした場合、勃起せずにいられるかというと、まるで自信が無い、というよりは、そろそろティッシュの準備をした方が良いのでは、とさえ思います。
「音ちゃん、それは、ダメ」
 かろうじて紡いだ言葉が、くりちゃんの唇から零れるその刹那に、音羽君は顔面をくりちゃんのスカートの下にすべりこませ、くんかくんかと、すうはあすうはあと、まさしく狂人、いや変態その物として実に正しい姿を、ありありと見せ付けてくれました。
 流石にこれにはくりちゃんも、貞操の危機を強く感じたのか、死んでる場合ではない、と再起して、スカートの中に突っ込んで暴れる音羽君を突き放そうとしたのですが、どこかに遠慮があるのか、自分に対して惜しげもなく見せるマーシャルアーツは使わずに、まるで乙女、内気近眼図書委員のように、いじらしくもささやかな抵抗を見せるのみで、それでは到底、性欲の権化と化した音羽君を止める事は出来ませんでした。
「み、見てないで助けろ!」
 両目を限界まで見開いて、脳髄への書き込み作業に忙しい自分に気づいて、くりちゃんは助けを求めてきました。
「フェラくらい良いんじゃないですか」
 と、喉仏を通り越して奥歯のあたりまで出かかったのですが、そこで自分もようやく、幾ばくかの冷静さを取り戻し、かかっている物の大きさに気づきました。
「音羽君、やめなさい!」
 くりちゃんの両足をがっつり抱き、その先のパンツに顔を埋めていた音羽君は、まるで聞く耳を持ちません。ああ、この人がこんなにくりちゃんの事を好きなら、ふたなりでも、女同士でも、別に良いんじゃないかな、自分に止める権利はないんじゃないかな、とも一瞬思いましたが、やはりそういう訳にもいきません。
 ここは勝負の場。負ける為の勝負はありません。
 自分は立ち上がり、手を伸ばしました。くりちゃんの腕を掴むと、びくん、と体が震えました。
「あ、あたしに触んな!」
 またかよ、おしっこ女。
 確かに先ほど、ここに連れてくる時、力なくへたりこむくりちゃんに肩を貸した際、自分は1度目の接触をしました。そして今のが、2度目の接触。次に触れた時、くりちゃんの尿道は問答無用で開きます。
 とにかく、この状況をなんとかせねばなりません。掴んだ肩をそのまま引き、くりちゃんのスカートの中で深呼吸をする悪鬼悪霊をお祓いせねば、愛情たっぷりのがっつりフェラをまざまざと見せ付けられてしまう。それは是非とも見たい。ではなく、なんとしても避けねばなりません。
 自分はふたなりに興奮しませんが、くりちゃんのふたなりちんぽをフェラする女を見て、勃起しないとは限りません。


 くりちゃんを奪い合う乱戦が始まりました。自分はくりちゃんの両肩を持って(さりげなくおっぱいにタッチしても気づかれない確信がありましたが、無い物に触れる事は不可能なので断念しました)、音羽君はくりちゃんの両足をワキで抱えこみます。
 くりちゃんの身体は、ハンモックのように宙に浮きました。すぐ下を向くと、顔が見えました。音羽君の方は股間を凝視しているようです。
「なんだこれ! どういう状況!? 痛い!」
 一番困惑しているのは、間違いなくくりちゃんでしょう。
「五十妻先輩! 離してください! 木下先輩が痛がってるじゃないっすか!」
「音羽君こそ離しなさい! くりちゃんがちぎれてしまいます!」
 先に離した方が、本当に当事者を思いやっているという証明になるので、育てる権利はそちらにある。というオチの昔話を思い出しましたが、二人とも一向にくりちゃんを解放する兆しは見せません。
「いたたた! 痛いって! やめて! 漏れる!」
 小学生でも滅多にしないようなプリミティブな戦い。単純な力では男である自分に有利があり、体勢では、両足を抱え込んだ音羽君に有利があり、状況は見事に均衡していました。
「くりちゃん、このままフェラされてもいいんですか? なんとかして、音羽君の腕を振りほどけませんか」
「無理だって! あんたが離したら出来るかもしれないけど!」
 確かに、二人の人間に抱えられた状態で空中でじたばたしても、よほど力が無ければ脱出は不可能ですし、それに自分も音羽君も、かなり必死でくりちゃんを引っ張り合っていますから、つまりここで確実に言えるのは、くりちゃんには何の有利も与えられていないという事でした。
「木下先輩、フェラがいやっすか!?」
 音羽君が叫ぶようにそう尋ねました。くりちゃんは、「当たり前だ!」と一喝するものの、スカートがめくれて丸出しになったもっこりパンツは、ほんの少し勃起しているように自分には見えたのです。
「じゃあ、フェラはいいっす! セックスしてください!」と、音羽君。
「するか馬鹿!!!」と、くりちゃん。
「ちょっと待ってください」と、自分。「セックスするんですか?」それまでの興奮と熱狂は一気に冷め、まるで絶対零度、やり手のエリート検事が被告人を追い詰めるが如き鋭さで、「それなら話は別です」と言いました。
「え?」
 裏切られたのはくりちゃんです。


 壮絶なくりちゃん奪い合いが、そこでぴたりと止まりました。
「音羽君はくりちゃんとセックスしたいんですか?」
「したい! てかします!」
「しないから! 絶対しないから!」
 即答と激怒。
「セックスをしたら、能力を解除してくりちゃんを元に戻してくれますか?」
「終わった後で、木下先輩がまんこの方が良いって言うのなら、戻してあげるっすよ」
「終わってからじゃ遅すぎるだろ!」
 即答と激怒。
「セックスというと、くりちゃんのちんこを、音羽君のまんこが受け入れるという事で、間違いありませんか?」
「そうに決まってるじゃないっすか」
「ちょ、ちょっと、あんた、何考えてんだ!? 離せえええ!」
 即答と激怒。
「そのセックスは、自分も見させてもらっていいのですか?」
「……本当は嫌ですけど、こうなったら仕方ないっすね。見てもいいっすよ」
 これに答えたのは音羽君のみで、くりちゃんは青ざめて奥歯をガチガチと鳴らすだけでした。
「なるほど、分かりました。見させてもらいましょう。ふたなりセックスという奴を」
「うわああああ」
 自分はくりちゃんの口を片手でおさえ(ちなみに、自分の能力は対象に触れたままの場合発動せず、一度完全に両手を離してから再度触れないと、1回とはカウントされないようです)、肩を抱いたまま、音羽君のベッドに乗っかり、くりちゃんを押さえつけました。あと本編とは全く関係ない話なのですが、無駄な戦争をするよりも、互いに力を貸しあった方が、人類はより早く発展するのではないでしょうか。
「五十妻先輩! ベッドの下に手錠とロープと猿轡が隠してありますから、それを使ってください!」
「了解しました」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」
 暴れるくりちゃんに猿轡を嵌めながら、ふと、疑問が浮かびました。
 果たしてこれは、レイプになるのでしょうか。


 嫌がる処女を無理やり二人がかりで拘束し、セックスを強要するのは、確かにレイプと呼ばれる犯罪ですが、ちんこを受け入れる側の女子はやる気満々であり、その相手である同性は、本来ならば実在しない性器を使い、しかも行為が終われば、普通の女の子に戻る。
 これからする行為がセックスである事は間違いありませんが、あくまでも処女膜を失うのは音羽君で、くりちゃんは何も失いません(捉え方によっては、童貞を失うという事になりますが)。果たしてこれはレイプなのでしょうか。それとも逆レイプなのでしょうか。自分は加害者なのでしょうか。くりちゃんは被害者なのでしょうか。どうして高画質のビデオカメラを、自分は今持っていないのでしょうか。
 これはレイプなのか。
 その問いは、音羽君がくりちゃんのパンツを脱がした事によって、即解決しました。
 次に目の前に現れたのは、天を突くようにまっすぐとそそり勃った一物。
 自分が見るのは二回目でしたが、紛れもなくそれは、攻撃態勢に入った、くりちゃんのちんこでした。
「ビンビンに勃ってるじゃないですか」
 と、自分が指摘すると、猿轡を嵌められたくりちゃんは顔を#FF0000くらい真っ赤にして、「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛お゛お゛お゛」と絶叫しながら、首を何度も横に振りました。付き合いが長いから、自分には良く分かります。くりちゃんはきっと、こう言いたいのでしょう。
『ちんこが勃起してしまったなら仕方が無い。とっととセックスさせてくれ』
 なるほど、良く分かりました。断言します。
 これはレイプでは、あ、り、ま、せ、ん!
 一方で音羽君はフル勃起状態のくりちんぽを見て、俄然やる気が出たらしく、頭上に表示された興奮度は100%を越えて120%に到達し、両目には「淫」と「乱」の文字が浮かんでいるように自分には見えました。
 五十妻音羽共同軍は、「本当に初めてか」と疑われるようなスピードでくりちゃんを縛りあげ、完全に自由を奪い、それでもくりちゃんが暴れるので、くりちんぽはぶるんぶるんと左右に揺れました。
 今や立場は逆転したのです。
 かつて受けた辱めを、100倍にして返す瞬間が、ついにやってきました。
 恭悦至極。これを幸福と呼ばずして、果たしてなんと呼ぶのでしょうか。
 さあ、納得するまで見させてもらいましょう。と、くりちゃんから奪った携帯電話のカメラを起動し、ムービー撮影モードに切り替えたその瞬間、頭の中で声がしました。
『お前は、変態ではなかったのか?』
 等々力氏と戦った時にも聞こえた、あの問いかけです。

       

表紙
Tweet

Neetsha