矛盾。
完璧な世界など、存在しない事は知っている。だが、それに耐える気はない。現実は、ただそこにあるだけで僕に負荷を与える。壊したくて、時にたまらなくなる。何度射精したって、果てる事無くむなしさが続く。憂鬱に染まる空。消失するバランス感覚。いかにも病的だ。
だからいっそ、笑ってやろうじゃないか。
僕が以前思っていたよりも世界は幼稚なのだから、笑って済ます事が出来るはずだ。僕にはその力がある。この力を使えば必ず可能だ。HVDOさえも支配下に置いて、世界を幼女で埋め尽くす事。障害の目的。
僕こと春木虎は、幼い世界を大いに笑う。
ほの暗い、体育館倉庫。
後ろ手をガムテープできつく縛られ、目隠しをされた1人の少女がマットの上に転がっている。汗のたっぷり染みこんだ体操着の胸の部分には「5年2組 木下くり」と書かれてある。腹筋の量が少なく、身体の重心が下に落ちてしまう典型的な幼児体型。5年生、にしては成長不足だ。
錆を鳴らして両開きのドアを開けると、くりちゃんは身体をじたばたとさせて、少しでも離れようと、少しでも純潔を守ろうと、健気で儚い抵抗を見せた。
「くりちゃん」
僕はそんなくりちゃんに、猫なで声で話しかける。
「寂しかったかい?」
くりちゃんは奥歯をがちがちと鳴らし、まるで助けでも求めるように跳び箱に頬をこする。ブルマの中心部に小さな膨らみを確かめ、僕は本格的に愉悦を始める。
くりちゃんの肩を掴んで引き寄せると、「いやぁ……やめて!」と声をあげたが酷くむなしい。助けは来ない。希望はまだ見えない。
「このおもちゃ、気に入ったかい?」
股間にそっと、手を忍ばせる。厚手の生地の上からでもはっきりと分かる震動。1時間ほど放置したが、どうやらまだ電池は切れる様子がない。無機質で正確な、等間隔の刺激。身をよじって僕から逃げようとするくりちゃんを、力でもって押さえつける。
「ひっ」息を飲む感触に、青い呼吸を混ぜた音。「ひどい事……しないで」
僕は悟られないよう微笑んで、諭すように言う。
「しないよ」
「……ホントに?」
「ああ、ホントさ」
くりちゃんのパンツの中で暴れる小さなおもちゃを手の平でぐっと押し付けると、逃げ場を無くした暴力がつぼみを刺激する。途切れ途切れに続く悲鳴に、僕は真剣に耳を傾ける。
「しないって……言ったぁ……!」
すがるような声。僕は答える。
「ひどい事、ではなくて、気持ち良い事、にすれば良いのさ」
言い切ると同時に、ブルマと、その下にある湿り気を帯びたパンツを同時に脱がす。膝の下まで落ちたそれは、頼りなくぶらさがる。震えたままのピンク色のカプセルと、そこに繋がったコードとスイッチがマットの上に放られる。
華奢な身体に秘められた全ての力を使って、くりちゃんは僕の手を退けようとする。だが、それは無駄なあがきと言える。抱き寄せた膝を左右に開いていくと、まだ幼い欲望装置が露になった。
くりちゃんはやがて泣き始めた。その駄々をこねるような仕草が更に僕を興奮させるとは知らずに、身体をよじらせて逃げようとする。腰を押さえつけ、僕は顔をくりちゃんの神核に寄せる。わざと荒げた鼻息が、ぴったり閉じたビーナスの丘に当たる。くりちゃんはひときわ大きな悲鳴をあげて、僕の事を蹴飛ばそうと頑張り、それがまたかわいらしい。
軽すぎて、少し強めの風で吹き飛んでしまわないのだろうかと不安になるくりちゃんの四肢を、僕は強引に手繰り寄せて、股間に顔を埋める。
這わせる舌は盲目の蛇のように、未熟な割れ目に沿って歩く。
「ひやぁぁぁぁっ! や、やだ! やえて……!」
一心不乱に目の前の少女を貪る僕は、まるで滅びを求める旅人だ。小便くさい味に混じった、それとは確かに違う透明な味。今、それが愛であると気づいてるのは、果たして僕だけなのだろうか。どうしても気になって、口を局部から離して尋ねる。
「どうして濡れてるんだろうね?」
くりちゃんはふー、ふー、と噛んだ唇の隙間から呼吸をするのみで、真面目に答えようとはしてくれない。くりちゃんがそうだから僕は、もっと「ひどい事」をしたくなる。
「ここに聞いてみた方が早いかもしれない」
再び、楽園へと堕ちる。今度はくりちゃんの尻を抱えて浮かせて、両手を外側からふとももの付け根に回りこませ、親指の柔らかい部分でこじ開けて、舌を細く尖らせてを強引に突っ込む。敏感な舌先が、触感と味覚の2つで脳へと訴える。ここをほじれ、と。
「あぁぁ……! はぁ……ふあっ……」
言葉の形すら失ったくりちゃんの甘美な訴えに、僕は調子に乗って舌を動かし続ける。
時間にすれば、マッチに点けた火が燃え尽きるほどの間くらい、僕は舐め続けただろう。唾液と、汗と、愛液でぐちゃぐちゃになったくりちゃんの未完成の性器を、目を細めて眺める。体育館倉庫のほこりっぽい臭いの中、確かに生きた匂いがする。
「くりちゃん、どうして欲しいんだい?」
身体を捻り、マットに顔を押し付けて泣くくりちゃんに僕は尋ねる。
「えぐっ……えぐっ……」
くりちゃんは嗚咽するばかりで答えない。僕はすっと飴を取り出す。
「正直に答えたら、ここから出してあげるよ」
「えぐっ……正直にって……わかんないよ……」
分からない。確かにそれも1つの、正しい答えなはずだ。だけどそれじゃ納得がいかない。僕の怒張が収まらない。
「僕に舐められていた時、くりちゃんはどう感じていた? 正直に答えてくれないか」
「どうって……」
くりちゃんは今にも火がつきそうな顔を僕に見せないように隠しながら、頭の中で、他愛の無い自問自答をしているらしい。質問は1つしかないのに、答えも1つしかないのに。
やがて意を決したように二酸化炭素を多く含んだ言葉が漏れ出す。
「ひどい事、されてるって……ただ、それだけで……」
僕は多少のイラつきを含めて再度同じ質問を聞き返す。
「ひどい事はしない、って言ったはずだろ? くりちゃんはこれが分からないほど馬鹿じゃない」
くりちゃんの上半身にも僕は興味がある。セックスアピールの欠片もない胸じゃない。その小刻みに震える、唇が本命だ。身体を転がして、顔をこちらに向けさせる。目隠しの向こう側に、潤んだ瞳を見る。僕はまるで満月をロープで引っ張るように、それを手繰り寄せる。
呼吸が止まる。死に至らない程度の幸福。僕はこれが性的代償行為である事を知っている。恋愛が性欲の詩的表現である事も知っている。しかしこれは時に、とてつもなく「人間的」で、そして「究極的」だ。
「ひぐっ……ふっう……んはぁ……」
糸をひきながら垂れる、混ざり合った唾液が、僕には心を繋ぐ橋に見えた。
いよいよ僕は僕を現す。
諦めたのか、抵抗しなくなったくりちゃんが、恐怖と好奇心に突き動かされて僕を求めているのが分かる。
「さあ、正直に答えるんだ。君は僕にあそこを舐められて、気持ちよかったのかい? それとも、気持ちよくなかったのかい?」
本人は気づく由もない、答えに悩むくりちゃんの目の前には、男の象徴が待ち構えている。
それでも僕は、くりちゃんが正直に答えてくれたのなら、本当の本当に解放してあげようと思っているのだ。くりちゃんは清純な乙女のまま、この体育館倉庫を出る事も可能だ。それが良い事かどうかまでは僕にも良く分からないが、少なくともくりちゃんは助かりたいと思っているはずだ。
「気持ちよくなんか……」
くりちゃんは言葉に詰まる。僕は自らのいきりたった肉棒をくりちゃんの股間へと近づけていく。触れないように、気づかれないように、慎重に、あくまでも楽しみながら。
「気持ち……よくなんか……」
僕の知る限り、くりちゃんはとても素直な子だ。しつけが良かったのか、それとも反面教師なのか、小学校5年生にして、確かな責任感を持っている。「正直に」と命令されたなら、自分に嘘はつかない。芯のしっかりしたとても良い子だ。
「僕は信じているよ。君を犯さずに済む、と」
犯す、という言葉の意味を、くりちゃんは果たして理解しただろうか。
数秒後、聞こえた答えは、僕にとってとても残念な物だった。
「……気持ちよくなんか……ない!」
鞭のように腰をしならせ、突き出した僕のペニスが、愛撫でほぐれたとはいえまだ未発達の、小さな壷へと入っていく。それは決してスムーズな物でもなければ、美しい物でもなかったが、断罪に魅力を感じる人ならばまた別に見えるだろう。
「ああああっ! い、痛い……! 助けて! 誰か……!」
目隠しの下で大きく開いた洞穴から、報われる事の無い、救いを求める声が聞こえる。僕はそれに耳を傾けながら、膜を破る。接触した面からは、まだ血が流れ出さない。くりちゃんが小さく、あまりにもぴったりすぎて、どうやら隙間が無いらしい。僕はふいに人の温度を見つける。
まだ、全体の3分の1ほどしか中に入っていない事を伝えるのはあまりにも酷だ。僕は少し引き抜いて、少し挿し込んで、そしてまた引っ込めて、ゆっくりと動かしていく。くりちゃんは更に大きく声をあげて、自分が今感じている物を誤魔化そうとするから、僕は左手でくりちゃんの口を抑え、右手で目隠しをとった。
「何が見える?」
「……んぐ……ぐ……」
その目には、暗すぎて眩しい光が灯っていた。
……まずい、耐えられそうにない。
「何が見えると聞いているんだ!」
怒りに任せて、無理やり深くへと陰茎を差し込んだ。処女を奪うだけではまるで物足りない。心に一生消えない痛みを刻み付けて、僕のこの醜い顔を、忘れられないようにしてやる。狂っている事は、言われなくても分かっている。
そのまま加速していき、何十回目かの揺らぎの後、僕は果てた。
まだ怒張したままのそれを引き抜くと、くりちゃんの中からは、白と赤の液体が流れ出た。
それを見届けて僕は、少しだけ満足し、くりちゃんの首元に手を回した。
少しずつ力を込める。
首が絞まる。
くっきりと僕の手の跡が。
くりちゃんは真昼の月のような瞳で、僕のことを見つめていた。