Neetel Inside ニートノベル
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 大きさからして、それはにわとりの卵ではなく、うずらの卵だったようです。
 にしたって何故、美少女のケツの穴からうずらの卵が飛び出してきたのか。三枝委員長が自分の気づかぬ内にうずらになっていた。と考えるか、あるいは三枝委員長は元々うずらだった。と考える他に、もっと自然な考え方があります。それは、三枝委員長がうずらの卵を自らのアナルにぶち込んでいた。しかも、出てきた量からして割と頻繁にそういうプレイも楽しんでいた。という、まあおそらくは限りなく正解に近いであろう衝撃の過去です。
 どうしてうずらの卵を腸内に入れようと思ったんですか? そう尋ねた所で、まともな答えはきっと返ってこないでしょう。何せ質問の時点でまともではないですし、例えどれだけ理屈の通った事を筋道立てて諭されたとしても、「だからとして卵をアナルに入れる結論に至るのか……?」という疑問は未来永劫、払拭出来そうにありません。
 確かに、淫乱雌奴隷という人種は、菊門に何かしらを入れられがちな種類の生き物ではあります。例えばアナルビーズですとか、アナルバイブですとか、アナルニンジンですとか、それはもう多岐に渡り、たまたまなったご主人様の趣味によっては、ロストバージンよりアナルファックの方が先、という憂き目に会っている人間も多々いるかもしれません。
 しかしながら、奴隷が自主的にうずらの卵を入れたというのは前代未聞の事のように思われます。八宝菜じゃないんですから、そう簡単に投入して良い物ではないのではないか、という自分の意見に賛同する方は多いのではないでしょうか。
 ですが、そのような無謀が、どこをどう転じたのか分かりませんが、今は好機となっています。偽くりちゃんのラフプレイによって根こそぎ持っていかれた観客達の興味が、今の砲撃によって一気に取り戻せた事、それ自体は確かなのです。
 素っ裸で諸手を挙げる幼女に対し、盛り上がりに上がった観客席の空気は一転して、「どうすりゃいいんだ……?」というダウナーな雰囲気に自ずと落ち着き、疑問1割、興奮1割、ドン引き8割という逆境が構築され、ここから三枝委員長はどう展開させるつもりなのか、自分は心の底から心配しています。
 直立不動のまま、ステージに転がった卵を拾おうとも、見ようともしない三枝委員長は、まだ腸内に残っていた卵を、ポポンと2つ3つ捻り出してから、「ふぅ」と謎のため息をついて、途端に、キリッとした顔つきになりました。
 人としてかなり最低の部類に入るであろう姿をこの大衆の前で見せ付けたばかりとは到底思えない、凛とした空気を纏いながら、三枝委員長は偽くりちゃんへと1歩1歩、着実に歩み寄りました。あらかじめ長めのシャツを着ていたらしく、姿勢を正しても局部が見えないようにセッティングしてあったのは流石といった所ですが、歩く度に危険度は増しています。
 かろうじて最後の砦を守りつつ、偽くりちゃんの前までやってきた三枝委員長は、砦も何も既に領地全面開放状態の、超自由主義の幼女に向けて、つい数秒前に尻の穴からうずらの卵を出した人間とは思えない程おしとやかに、こう言いました。
「ありがとう」


 思わぬ台詞に偽くりちゃんは当然うろたえます。
「……何がですか?」
「私が恥ずかしがっているのを見て、これを私にくれたのでしょう?」
 と言って三枝委員長が差し出したのはかっぽう着。なるほど、偽くりちゃんのルール無視の露出を攻める事はあえてせずに、かっぽう着を返却し、しかも「自分は恥ずかしがっていた」という事も強調したなかなか巧妙な一手です。
 しかし実質、脱衣を目的とした野球拳に勝利をしたのは三枝委員長ですが、じゃんけんに勝ったのは偽くりちゃん。勝者が敗者に気を使ったという構図が作られると、結局得をしてしまうのは偽くりちゃんの方では……と、自分が疑問に思うと、三枝委員長はこう畳み掛けました。
「でも、心配はいらないわ。見ての通り、私はすっかりご主人様に調教されてしまっているし、今日、こうしてこの舞台で裸を晒そうと決意したのも紛れも無く私なのだから」
 三枝委員長の中でのご主人様、もとい自分は、一体どこまで鬼畜なのか。
「お互いに露出を続けましょう。今度は遠慮はいらないわ」
 その一言で、観客席に再び火が点りました。ここは自由とHentaiの国、日本なのですから、女子が自らの穴に何を入れていようと構わないじゃないか。むしろ万歳。食べさせてくれ。テイクアウトプリーズ。そんな観衆達の心の声が聞こえてくるようです。
「とはいえ、あなたはもう全て脱いでしまっている」
 色々と付属品のついた三枝委員長とは違って、分娩台からここまで来ましたスタイルの偽くりちゃんにはもう脱ぐ物がありません。だからこそさっきからそこかしこで一生懸命何かを上下に擦っている音が聞こえてきているのですが、果たして三枝委員長は何を言いたいのでしょう?
「だから、私が手伝ってあげようと思うの」
 ステージ上で微笑みの爆弾を炸裂させた三枝委員長は、相手に礼を言わせる暇も無く、電光石火、行動へと移りました。
 偽くりちゃんの背後へと素早く回り、バックポジションを取った三枝委員長。右手を肩の上から、左手を脇の下から差し入れて、偽くりちゃんの乳首を両方同時にダブルクリックした様子。
「あっ」
 漏れた声を自分は聞き逃しませんでした。なんという早業。
「て、手伝うって、何を手伝う気なんですか……?」
 偽くりちゃんは三枝委員長の魔の手から逃れようと足掻きましたが体格差があってそれも不可能。
「オナニーに決まってるじゃない」
 という台詞はあくまでも自分の予想であり、実際は三枝委員長が偽くりちゃんに対してこっそりと耳打ちしただけで、正確には聞き取れなかったのですが、おそらく限りなく事実に即した言葉であったはずです。
 2人はその身をぴとりと寄せ合って、何ともやんごとなき事をおっぱじめました。


 まさかの百合展開に、自分は一瞬ついていくのを放棄しかけましたが、ここで飲み込まれてはあっという間に勃起してしまう、何としてもそれは避けねばならないと決意を改めて、煩悩を抑え込みつつ頭を回転させました。
 この露出バトルの目的は、今更改めて言うまでもなく春木氏を撃破する事です。この場合の撃破とは即ち、春木氏に「ロリ<露出」である事を認めさせる事であり、その上で勃起させる事、つまり偽くりちゃんがいくら露出によって恥をかいたところで、それはロリゆえの魅力であるとも解釈出来るので、致命傷に至るダメージは与えられません。よって、三枝委員長自身が露出の魅力を体現する事が必要となってくる訳です。逆に、三枝委員長の敗北イコール彼女自身の幼女化と、処女の喪失という2つの強烈なリスクは依然としてあり、偽くりちゃんの魅力を三枝委員長が認めてしまえば、それは大いに有り得る絶望なのです。
 であれば、偽くりちゃんのオナニー補助など、百害あって一利なし。ただいたずらにロリの深淵へと踏み込むだけで、こちらには何の得もないではないか。という至極真っ当な難問が生じます。
 一体何を狙っているのか。普段の三枝委員長は、常に冷静沈着で、的確な判断力と行動力を持った出来すぎたお人ですし、ミスを犯したなどという話は噂ですら聞いた事がありません。この奇襲オナニーにも、その裏には何かしらの狙いがあると自分は思うのですが、果たしてそれは、この異常な状況においても真であり続けるのでしょうか。
 ふと、景色が遠のくような感覚に襲われます。
 ひょっとして、三枝委員長はもう、当初の目的を忘れているのではないでしょうか?
 言うまでもなく、彼女は人に自分の裸を見られるのが大好きな稀代のフラッシャーであるので、先ほどスカートを脱いだ時点、いえ、ひょっとすると、このステージに立った時点で、絶頂に達していた可能性は大いにあります。となれば、先程のうずらの卵がトドメとなって、思考回路をショートさせた可能性もあり、まともな判断が出来なくなっている可能性もあり、興奮しすぎて何が何だか分からなくなっている可能性もあり、もうとにかくエロい事が出来れば何でもいいと、自暴自棄になっている可能性もあります。
 暴走。
 頼みの綱である三枝委員長が、そんな状態に陥ってしまっていたら、自分は一体どうすれば良いのか、まるで濃い霧の森の中に、コンパスはコンパスでも円を描く方のを間違えて持ってきてしまったような失意です。
「なるほど、そういう事ね」
 ふいに耳元で囁いた声は、また気づかぬ内に戻ってきていたトムの声でした。ところで関係ない話ですが、透明人間と結婚出来るのは透明人間だけです。浮気と、半透明の子供が怖くないのならば。
「……どこに行ってたんですか?」と、自分。
「いやね、ちょいとゲストを呼びに行っててさ。もうすぐ来ると思う」
 不適に笑うトム。どこまでが本当だか分からない上に、ぼかしぼかしなので、ここで自分が、そのゲストとやらが何者で、何故呼んだのかなどと必死になって追求するのも馬鹿らしいと思えたので、あえて流しました。
「それより、『なるほどってどういう意味ですか、馬鹿な僕に教えてくだちゃい』って訊きなさいよ」
 クズ腐女子の分際で……。自分は怒りを鎮めて無視を貫きます。
「よし、それならお姉さんが教えてあげよう」聞いてねーよ。「いやー分からないもんかね? ちょっと頭を捻ってみれば分かる事。三枝瑞樹はあのステージを、自分の物だけにしようとしている。男共の視線を全て占領したがっている。となれば、邪魔になるのはあのエロ幼女だけど、無理やり退場させれば非難を食らうのは間違いない。では、一体どうすれば良いんでしょう?」
 わざわざ説明されなくても、それをさっきから考えているのです。
「正解は、全てを出し尽くさせて戦闘不能にすれば良い。簡単でしょ?」
「……だから、一体どうやって?」
 深い闇の奥底で、白い蛙が笑っています。
「女はね、本当の本当に絶頂に達すると、しばらくの間動きたくなくなるもんなのよ。まだほとんど手付かずのあの子を堕とすのは並大抵の事ではないでしょうけど、三枝瑞樹なら、あるいはね」
 一層大きくなった歓声に突き動かされ、自分は再び前に目を向けました。ステージ上ではちょうど、体を完全に預ける形になった偽くりちゃんの、まだ幼すぎる蜜所に三枝委員長の細い指が忍び寄っていく所でした。

       

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