Neetel Inside ニートノベル
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HVDO〜変態少女開発機構〜
エピローグ

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 何故か。我が家の玄関にて、自分は自分にそう問わずにはいられませんでした。
「覚悟は出来た?」
「ちょ、ちょっと待って。本当にやるの?」
「木下さん、今更何を言ってるの? 約束したはずよね?」
「だ、だけど、もし警察とかに見つかったらどうするの?」
「その時は五十妻君を犠牲にして逃げるしかないわね」
「……こいつに前科がつくのは別に良いけど、掴まったら私達の事を吐くかもしれない」
「そんな事はないわよね? 五十妻君」
 あ、はい。と自分は三枝委員長の脅迫に屈し、リードの持ち手を握り締めました。伸びる紐の先は2人の装備した首輪に繋がっており、2人は素っ裸で自分の前に立ちはだかっています。堂々と乳首も陰毛も晒す三枝委員長と、両腕を使って必死で隠すくりちゃんの対比に自分は圧倒されます。
「木下さん。これは昔から私の夢だったのよ。好きな人と一緒に、全裸で犬のように散歩する事が」
「それならあたしを抜いて2人で行ってきたら良いと思うんだけど……」
「あら、『好きな人』というのは貴方の事よ。五十妻君はあくまでも飼い主役」
「あたしは飼われるのにまだ納得してないというか何というか……」
「とにかく、今日は私に従ってもらうわ。後でご褒美もあげるから。ね?」
 何を想像したのか、くりちゃんが顔を真っ赤にして俯きながら、小さく頷きました。
 ここで1度、深夜の露出散歩に出る前に関係を整理しましょう。
 死闘決着後、自分にとって全く予想外の事が1つ起こりました。
 それは三枝委員長の心境の変化であり、自分からくりちゃんへの恋愛対象の変更です。原因として考えられるのは、最後の性癖バトルにおいて、崇拝者のHVDO能力により、自分がくりちゃんを使って1000のおもらしを放った事がまず第一候補に挙がります。あの時、自分、崇拝者、くりちゃん、そして三枝委員長の4人は同じ物を見て、体験していました。三枝委員長はあの段階でご自身のHVDO能力を失っていましたが、それでも意識自体はありましたし、くりちゃんの痴態を1000パターンも見せられていた事は紛れも無い事実です。結局その攻撃において自分は崇拝者を倒す事が出来ませんでしたが、三枝委員長の感情に影響を与える事には成功していたようです。
 とはいえ、それはあくまでもきっかけであって、下地は元々あったのではないか、と自分は推察しています。
 そもそも三枝委員長が自分を好いてくれていたのは、露出プレイの際に自らのM性を高める為のS役を必須としていたからであり、そのセンスを自分の中に見出していたからに過ぎません。それは恋愛関係というよりはむしろ仕事上の信頼関係に近く、対してくりちゃんへの感情は、彼女の持つ純粋な卑猥さへの魅力に起因し、言い換えればそちらの方こそ「恋」のような物かもしれません。しかも、自分は三枝委員長に弱みを握られています。選ぶと言っておきながら処女を消滅させ、結論を先送りにした償いをしなければならないのです。
 よって三枝委員長としては、くりちゃんを愛で、自分を都合よく使う状態がベストであるという図式が成立する訳です。


 一方、くりちゃんの視点から考えてみるとどうでしょう。
 くりちゃんは最終局面において、いよいよ自分の変態さを認めるに至りました。これまで開発されてきた性癖は、彼女の核に深く根ざし、常人の持っているエロスが5だとすると余裕で53万を超える淫乱少女に成った訳です。しかも未だに処女であり、その性的好奇心は収まる事を知りません。
 一見エロくないからこそエロい。自分をエロいと思っていないからこそエロい。これは自分の辿りついた真理の1つです。一般にエロさというと、むちむちぷりぷりなお姉さんを想像してしまいがちですが、それは浅はかであると断じざるを得ません。真のエロとは振り幅であり、セックスアピールの激しい人がセックスをするのはいわば普通の事であり、隠されている物を暴く時にこそ性は輝くのです。
 話がやや逸れましたが、そんなエッチな女の子であるくりちゃんにとって、三枝委員長は最も的確なパートナーであると思われます。テクニックは超一流で、あらゆる性知識に精通し、Mの気持ちもSの気持ちも理解している。くりちゃんの底無しに淫らな欲求を満たせるのは、日本でも有数の性のエキスパートである三枝委員長くらいのものでしょう。
 そしてくりちゃんも、本能的にはそれを理解しているのです。事実、あの後ホテルの部屋から追い出された自分は、三枝委員長の愛撫の餌食となったくりちゃんの激しいあえぎ声をドア越しに聞きました。これはくりちゃんに限った話ではなく、人間は気持ち良い事に逆らえないのです。
 これにより、くりちゃんは三枝委員長に依存するに至りました。超絶技の虜となってしまったのです。
 それと1つ、重要な事を伝えなければなりません。
 現状、くりちゃんは現在世界で唯一のHVDO能力者であり、全ての変態能力を使えるチートプレイヤーでもあるという事です。
 世界改変態の事を覚えている方はいらっしゃるでしょうか。
 自分が能力を譲渡した事により、くりちゃんは10個目の能力を覚醒するに至りました。
 崇拝者は、それによって変態を増やして能力をバラまく事に成功しましたが、くりちゃんはその全く逆の事をしました。自らの欲望の為に全ての性癖を世界中から回収し、己の物としてしまったのです。この変化に、最初は自分も気づきませんでした。しかし翌日、等々力氏や音羽君から「HVDO能力が使えなくなった」という報告が舞い込み、試しにくりちゃんにその事を伝えてに行くと、ちゃっかり自分の乳を等々力氏の能力によって膨らませていたので発覚した事実でした。
 これは即ち、冷凍庫に眠る自分のちんこの修繕は、くりちゃんがその権利を握っているという事実に他ならず、自分は今、人質ならぬチン質を取られている状況であり、必死に頭を下げてちんこ返却をお願いしましたが、ついにくりちゃんはそれを認めてくれませんでした。
「だってお前にちんこ返したらロクな事にならないだろ」
 ごもっともですが、なんという慈悲の無さでしょうか。自分は今までしてきた事を悔やみ、絶望しました。今自分に出来る事は、改心してくりちゃんに尽くし、許しを請う事しかありません。
 くりちゃんは三枝委員長に見入られ、自分を脅迫しているという図式も成り立ちます。


 ちなみに、HVDO能力は失っても、春木氏の所の偽くりちゃんは消滅していないようで、今も2人で性的な意味で仲良く暮らしています。
 トーナメントに参加していたHVDO能力者達は全ての能力を失った事により、くりちゃんへの復讐を画策しているようですが、まあ普通に考えて無理でしょう。HVDO能力といえど実際に防御に使える物はいくらでもありますし、軍隊の1つや2つすぐに丸裸にしてしまう位の実力を今のくりちゃんは持っています。
 それと、もう1つの百合カップルも順調に行っているようですので、今まで通り放って置きましょう。
 母は相変わらず留守が多いですが、いつか父が罪を償って出てきた時には2人でぶん殴ろうと約束してくれました。
 等々力氏は究極のおっぱいを求めて旅に出ました。今は南米辺りをうろうろしているそうです。
 さて。
 まとめると、三枝委員長とくりちゃんは現在ラブラブな状態であり、性別の垣根を越え、技術と財力とHVDO能力を背景に何だか色々と凄い事をしているようです。自分は事情を知っていつつも2人には逆らえない哀れな犬であり、こうして手綱を握らされている状態な訳です。
「さあ、行きましょう」
「あ、待ってよ!」
 2人が外に飛び出しました。自分はそれに引きずられるように家を出ます。
 まさかこんな事になるなんて、自分は少しも思いはしていませんでした。2人の内の1人をパートナーに選ぶはずが、その2人がくっついて自分が隷属させられる結末など、一体誰が予想出来たというのでしょうか。
 現在、三枝委員長は同性婚の実現に向けて政界を動かし始めました。おそらく実現は時間の問題であり、国内第1号は三枝くりさんという形になるでしょう。そして第2号は望月ハル先輩かと思われます。
 一方でくりちゃんはHVDO能力の扱いに慣れてきた模様で、かつて蹂躙されてきた能力をこれでもかと利用し、三枝委員長の欲求を満たしたり自分の事を苛めたりしてきます。とりあえずもう2度とおもらしさせられたくはありません。
 ですが、それでも自分は幸せ者なのかもしれません。2人の少女の痴態をこうして間近に見ていられるのですから。究極の性癖。その願いは叶ったとも言えるでしょう。
 これにて、HVDOという物語は一旦終わります。
 ハッピーエンドなのかバンドエンドなのかは微妙に判別がつきませんが、こうも考えられます。
 三枝委員長もくりちゃんも、自分に気を使ってくれているのではないでしょうか。父のもたらした状況に振り回され、様々な物を失った2人は、それでも今を幸せに生きる事によって、自分の気を楽にしてくれている。
 それが2人の優しさなのではないか、と。
 まあ、ただの自惚れかもしれませんが。
 仲良く電柱におしっこをかける2人を見ながら、自分はそんな事を思うのでした。


 完

       

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