Neetel Inside 文芸新都
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紅い紅葉の短編集
遅筆弐感想(楽しかったです)

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白い犬先生『鉄のハンス』
童話のような文体が新鮮で面白い。最後が、王子の得てきた物の集大成のような感じで、まとまっていた。姫可愛い。ファンタジー書きたい。王子の口調が一定しないのが気になった。成長してどんどん粗野な感じになって行ったのか。王子が王子という割にたくましい。最初ハンスを逃がしたアホと同一人物とは思えない。なにか勇敢であるや、剣の腕があるなどの描写があると良かったかもしれない。王子の半生的な小説なのに、王子が一番ぼやけてる印象。


近松九九先生『やっと犬が死んでくれた』
年相応に考えそうなことではあるが、しっかりとした文体で書かれていて、得体の知れない不気味さを演出するのに一役買っていたと思う。最後少し駆け足だったように感じる。しかしなにか歌のようで、こういう表現でしか抱けない感情を抱けたとは思った。


ピヨヒコ先生『ビョウソウ』
ビョウソウには病巣という漢字をあてていたけれど、猫葬だと気づいてゾワっとした。主人公が気づいて表記が猫葬に変わってまたゾワ。祖父の腹部が猫に人気というのがツボにはいるやら狂気を感じるやら。狭い村の因習、狂気、閉塞感が存分に出ていた。最後、猫は霊に近い――の下りで風習の説得力が増したと思った。ここで完結なのはわかっているけれど、続きが気になる。自作品で、ゾウの足音をもっと上手く使えたなと反省させられた。


硬質アルマイト先生『Not Forget me not』
アルマイト先生の作品は幻想的という言葉がよく似合う。確かにそこにあって、輪郭がはっきりせず、しかし奥は覗き見ることができるような。霧はアルマイト先生に合う要素だったかな、と。街の霧、謎なんかをもっとはっきり書いた方がいい気もしたけど、しかしそれはある意味この作品の魅力――見えない大切な部分を削る行為な気もする。



ところてん先生『ユーグリット・パラレル』
数学の話がよくわからない!後半のユーグリットの下りは正直短くわかりやすくして欲しかった。最初のコペルニクス的転回の説明がテンポよくてわかりやすかっただけに、ちょっと残念。ところてん先生は自分が理系であるという所を存分に生かしていて、新鮮な感じがする。面白いし、そこが魅力だとも思う。けど、俺みたいな数学大嫌い文系人間にも興味(とまでは言わないまでも)をもたせられる、わかりやすい見せ方ができればもっといいと思う。二人の関係性のはっきりしない感じが好き。まあこれは函子ちゃん側の視点に立ってみているからなんだと思う。



黒兎先生『斜陽人間』
贅沢なことを言う主人公に感情移入ができなかった。共感がしにくいというか、そんな人生が嫌なら云々。ハイエナ人間という表現が妙に気になって、主人公は足音を聞いてハイエナに堕ちたんじゃないか、と勝手に思った。斜陽は没落する、みたいな意味だったし、誰にも助けられたくないなら、誰にも助ける余裕がない世界に行くしかないかな、とか色々。まあでも、このうだうだした感じは太宰っぽかった。


和田駄々先生『悲しい足音』
静かな場所で読むんじゃなかった。和田先輩がリアルにうざがられるタイプだったのもそうなんだけど、怪談話と陰口が重なって和田先輩が傷ついただけだったという。構成の上手さもそうなんだけど、今まで読んできた五人がシリアスだったのがまた演出に一役買ってたと思う。ここはところてん先生の仕事だったかな。


俺『あかいくつ』
反省点は、まず文章のテンポ。そして、シンプルすぎる足音の使い方。ハイヒールをもっと上手く使えなかったのか。これだったらシンプルに使った方が良かった。話の構成にばかりこだわっていた。物語ではなく小説を書け。小説は結末までの時間潰しじゃない。


つばき先生『天国に至るステップ』
今回の遅筆作品で、おそらく一番共感したであろう話。単純に俺が潔癖なだけです。女性ならではの文体は非常に色っぼくて羨ましかったです。また、お題の使い方が個人的に非常に好きで、タップダンスは僕も使いたかったのですが、使い方を思いつかなかったので。読む人に訴えるテーマで、また作者の目的がはっきりしていたので、読ませる力があるなと感じました。

       

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