Neetel Inside 文芸新都
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紅い紅葉の短編集
夢の恋人(エイプリルフール)

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 僕は高校の時、窓際の後ろから二番目だった。簡単に言うと、『涼宮ハルヒの憂鬱』でキョンが座っていた所。高校の時はそれを友達に羨ましがられたりしたものだ。
 夢の中の僕は、そこに座っていた。場所は僕が昔通っていた高校。夢の中でここまで再現しているのも珍しい。制服も確かに高校の時の物だけれど、クラスメートは小学生の時一緒だったやつばかりだ。
 けれど、その中に高校でも小学校中学校にもいなかった女性がいた。僕の後ろに座る彼女は、まあ夢に出てくるだけあって、好みど真ん中。豪速球ストライク。黒髪で巨乳。物腰が柔らかくて品のありそうな感じ。
 とはいえ、特に接点もなかったらしく、僕が彼女に自分から話しかけることはなかった。
 どうやら休み時間らしく、僕の後ろで、僕の幼馴染(男)が、その彼女に話しかけていた。酷く盛り上がっていたようで、ヘッドホンをした僕の耳にも聞こえてきた。けれど、詳しい言葉までは聞こえない。ただ盛り上がっているということだけが、気配と声でわかった。その幼馴染が去っていくのを確認して、僕は彼女に初めて話しかけた。
「何を話してたん? すごい盛り上がっていたみたいだけど」
「好きな人の話」
 なるほど。まあ高校生ならしてもおかしくない話題だろう。しかし、あれだけ盛り上がれる物かな。
「誰が好きなの?」
「あなた。付き合ってください」
「いいですとも!」
 これは、僕に彼女ができたということだろう。やった! これはなんてエロゲだ!?


 というところで、目が覚めた。ベットの中で一瞬、「あれ? 僕の彼女は?」と考えて、「あ、……夢か」と呟いて、泣きたくなった。
 っていうかむしろいっそ死にたくなった。いっそ死んで永遠に夢の続きでも見てやりてーよクソぉ。
 なにもエイプリルフールだからって自分に嘘つかなくてもいいじゃないかよぉ。

       

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