Neetel Inside 文芸新都
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紅い紅葉の短編集
女神(夏の小説)

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太陽は絶対、地球に恨みがあるに違いない。
 酷く暑い夏のある日、太陽を見上げながら思った。
 なにをエネルギーに燃えてるのか考えたら、もう恨みとしか思えない。地球は太陽に嫌われたか、それとも人間が嫌われたのか。判断に迷うところだ。
 人間が嫌われてたら、太陽は地球大好きってことになるなぁ、『地球くんから離れなさいよっ!』みたいな。
 そんなくだらないことを考えていると、犬を散歩させている老人とすれ違う。舌を出し、尻尾を振る犬は、アスファルトの熱さに悶えているのだろうか。
 人間は靴があるから大丈夫だが、犬はその熱いアスファルトに肉球を晒しているのだ。火傷していてもおかしくない。
 ――あれ、尻尾振る時、犬は喜んでんだっけか?
 もし喜んでるならマゾだな。
 ――どうして俺は、こうくだらないことを考えるんだか。
 我ながら呆れてしまう。
「……あれ?」
 もう何も考えまい、と思った矢先、前から一人の少女が歩いてきた。中学生くらいだろうか、黒髪をアキレス腱ほどまで伸ばしていて、痩せた体に白いワンピースを一枚だけ。
 綺麗な子だなぁ、と思って、すれ違う。

 瞬間、彼女が靴を入っていないことに気がついた。
 ……裸足で、炎天下のアスファルトの上を歩いていたのだ。
「ちょ、ちょっとキミ」
 彼女に声をかける。スカートをフワリと翻し、振り向いてくれた。
「……?」
 首を傾げる少女。たしかに怪しさ抜群だよな、俺。
「靴、入ってないけど、熱くないのか?」
 頷いて、「大丈夫」と呟いた。
「大丈夫なわけあるかよ。犬じゃねえんだから」
「ふふっ、お兄さん、アスファルトを裸足で歩いたことないんですか?」
「あるわけないだろ」大人なんだから
「意外と熱くないですよ、ホントに」
 やってみたらどうですか? と勧められるが、気乗りはしない。なんども言うが、俺は大人ですから。
「大人大人うるさいですね。大人は偉いんですか、そんなにしがみつきたいものですか」
「お前のがうるさい。つか、なに、そんなに俺を裸足にしたいのか」
「はい!」
 嘘つけ。今すれ違ったばかりのやつを裸足にしたがるって、どういう性癖だ。
「いいから裸足になりなさい」
 裸足にならなきゃいけないんだよ、みたいに言われた。
 ……まぁサンダルだし、手間がかかるわけでもないから、別にいいか。
 やってみたらどうですか? と勧められるが、気乗りはしない。なんども言うが、俺は大人ですから。
「大人大人うるさいですね。大人は偉いんですか、そんなにしがみつきたいものですか」
「お前のがうるさい。つか、なに、そんなに俺を裸足にしたいのか」
「はい!」
 嘘つけ。今すれ違ったばかりのやつを裸足にしたがるって、どういう性癖だ。
「いいから裸足になりなさい」
 裸足にならなきゃいけないんだよ、みたいに言われた。
 ……まぁサンダルだし、手間がかかるわけでもないから、別にいいか。
 やりたいわけじゃないんだからねっ!
 ……いや、マジでマジで。
 ため息一つ吐いてから、俺はサンダルを脱いで、アスファルトに足をつけてみた。
「熱っ……! ――くない?」
 最初の一瞬は熱かった。
 しかし、次の瞬間には生暖かくなっていた。
「ね?」
 嬉しそうに笑う彼女。
「一歩踏み出してみなよ」
 こっちきなよ、と言うので、俺はサンダルを指に引っさげ、一歩、少女に向かって踏み出してみた。
 一瞬だけ熱さが足をチクりと刺すが、それは本当に一瞬だけだから、なんだか心地が良かった。
「あんよがじょーず、あんよがじょーず」
「バカにしてる!?」
 確かにそっくりな場面である。
 しかしあんよがじょーずと言われる年代は二十年くらい前に卒業しているので、言われても不愉快だ。
「どう? わりと太陽も熱くないでしょ?」
「――まぁ、わりとね」
 ――は? あれ?
 太陽が熱いなんて、彼女に言ったっけか。
「太陽は熱くない。太陽は人嫌いじゃない。繰り返して?」
「……た、太陽は熱くない。太陽は人嫌いじゃない?」
「オーケーオーケー!」ぱちぱち、と拍手。
 ――なんで彼女、さっき俺が考えたことを……。
「じゃ、お兄さん。私への誤解も解けたみたいだし、私帰るね? お兄さんも、くだらないこと考えるより地球環境を考えてよね?」
「……は?」
「あ、それから」 彼女は思い出したかのよいう、言った。「私、地球のことはそこまで好きってわけじゃないよん」
 一瞬、冷たい風が吹き、とっさに目を閉じてしまう。
 次に目を開いた時、彼女はすでにいなかった。
「……………まさかあの子、太陽?」
 まさかねぇ、と苦笑しながら、俺はなんとなく、裸足のまま帰路を歩いた。

     

女神

シンプルなタイトルです。何年か前の夏。手遊びで書いた小説です。
確か書いた経緯としては
「太陽熱いなあ。滅びてくれないかなあ」
「あれ? 太陽が美少女だったら万事解決じゃね?」
みたいな。よくわからない思考回路だったと思います。確か、太陽の娘は、昔書いてた小説のメインヒロインのリボーン。ワンピースに黒髪というコンボは、清楚感を出してていいなあと思った結果。それに麦わら帽子がつけば完璧。ちょっと文章力が未熟な感じも出てますが、まあそれはそれ。今書けばもうちょっと長かったかもですが、昔の短編をそのまま晒すというのは、いろんな意味で反省点が浮き彫りになるっぽいので、そのまま提出。これも、含みのある終わらせ方をした方がそれっぽいとのことで、ちょっと不明瞭な終わり方になっております。

       

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