Neetel Inside ニートノベル
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死人延長線
第五話 【亮太】

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学校近くのコンビニ

それは我が高校の隣にある

僕の家と亮太の家は逆の方向にあるので待ち合わせにはよく利用する

亮太の家から学校まで、つまりコンビニまでは20分かかる

いつもなら僕のほうが五分早く到着してドヤ顔するところだが、

忘れていたのだ

現在地が理子さんの家だということを

いくらチャリだからといってどのくらいで到着するのかはわからない

自分から呼び出しといて遅刻するなど良くないと思う

そして携帯を見てみたらもう12時じゃねぇーか!

と、心の中で焦りが増しペダルにかける脚力もグングンと、




そしたら思いのほか早く到着してしまった

とりあえず暇つぶしに本でも読もうと店内に入ったら雑誌コーナーに亮太の姿があった

生意気に女性雑誌を読んでいる

雑誌を読む亮太の顔はすこし赤みがかっていた

     

「待ったかい」

僕が声をかけると亮太は慌てて本を閉じた

「…おっす」

どこか緊張しているような様子だ

それはそうだろう

告った相手に、しかもこんな夜中に呼びだされたら僕でもあせる

「いやーもう夏も終わりかね、かなり涼しくなってきたな!」

「そうだな」

「ちょっと遅れそうになって走ってきたんだ、俺のアキレス健には世話になってるよ」

「…そうかよ」

いつも明るい彼女がこうも静かだと調子が狂う





さて

何から話すべきか、

言うべきことは山積みだ

とりあえず場の空気を盛り上げたい

そう考えた僕は冗談じみた真実を話すことにした

     

いくら涼しいからといってこんな話を店内でするのはアレだし外に出た

「さてと、」

「結局立ち話かよ」

亮太は少し微笑んだ

「それもそうだな、まぁチャリにでも腰掛けてくれ」

「あれ?なんでチャリできてるんだ、あんな近いくせに」

亮太はサドルに腰を掛け言った

そういえば理子さんのチャリを借りたんだった

「ほら、遅れそうになったから思わずね」

「ふーん、お前こんなチャリだっけ、買ったん?」

「買ったん」

「ふーん…趣味悪いな」

「ハハハどすこい」

「なんだどすこいって」

お、笑ってくれた

こんな調子で話していたら信じてもらえなさそうだがそろそろ語るとしよう

「亮太、実は今大変な状況になっているんだよ」

「理子さん関係か?」

おぉっとストレートにきたか

     

「関係あるっちゃ…あるかな」

「ハッキリしてくれ、期待なんかしてないから」

亮太よ、うつむかないでくれ

お前は知らないだろうがこっちも大変な状況なんだぜ?

たしかに大事なことだが

「亮太、真剣に聞いてくれ」

亮太はうなずいた

「実はな、理子さんって死神だったんだ!」

いきなり拳が目の前に出現した

殴られた

まぁ文句は言えない

吹き飛ばされたが痛みは感じない

だって死んでいるから

亮太が驚いたような顔をして僕を殴った手を見ている

「つめてぇ…?」

僕は立ちあがって亮太に近づく

そして亮太の手をつかんだ

「だいたいこういうことだ」

ここでドヤ顔

「お前…もしかして冷え症か?」

まぁそうだろうな

     

「異常に冷たいぞ?大丈夫かよ」

「いやいや大丈夫大丈夫」

いや大丈夫じゃないが

「そうじゃなくて、なんて説明すりゃいいんだ…?」

ここにきてテンパりだした

「こういうことだっ!」

僕は掴んでいた亮太の手を自分の胸に押し当てた

「ッ!?なにすんだ変態!!」

「ちげぇ馬鹿!!心臓心臓!!」

「心臓がどうしたッ!握りつぶすぞ!手ぇ離せ馬鹿!」

「だから違うって!心臓!止まってる!動いてないだろ!」

「こっちは心臓と逆だ!!」

「あぁ…うっかり、じゃあこっちだ!!」

「ギャー!!」

涙目になり暴れ狂う亮太

しかし何かに気づいた

「………!」

亮太はゆっくりこちらを見た

「動いてねぇだろ」

「…マジかよ」

     

「…」

「…どや?」

「いや、どやじゃねぇよ…心臓動いてないとかお前おかしいぞ?病院行け」

「たぶん病院じゃあ駄目だ」

とりあえず本題にもっていきそうな流れになったがどう説明するべきか…

「亮太、今僕はものすごく込み入った状況に巻きこまれているんだ」

亮太が真剣な顔で僕を見た

ここはストレートに

「僕は死んで生き返ったんだ」

「意味わかんねぇ…けど止まってんもんな」

「あぁ止まってんだ、さらには血も出ない」

「…止まってんもんな」

「あぁ止まってんだ」

なんだこの会話

だがすべて事実だ

「見てみコレ、縫い目」

「うわっ、グロい…」

「触るかい?」

「うわぁー…モノホンかよ…」

よし、意外と信じてくれそうだ

     

「信じてくれたか?」

「何が?」

「死んでるってこと」

「信じらんねぇ…話だけどな、本当に本物かコレ?」

そういって亮太は腕に付いてる縫い目を引っ張った

シュッ!

ボトッ

うでがおちた

「おわぁぁーーー!!?」

「ぎゃあぁーーー!!?」

二人で絶叫

「ゴゴゴゴゴメン!まさか取れるとは思わなくって!」

「だだだ大丈夫大丈夫…なのかコレ!?」

やばい、大声出したからコンビニの店員が見てる

とりあえず腕を隠さなくては

「亮太!場所移動だ、コレカゴん中入れて走れ!!」

「うわぁ!」

「落とすな!」

そうして僕たちはコンビニから逃げるように去った

     

真っ暗な夜道を亮太が全力でチャリをこぐ

それに負けじと僕も走る

「お前マジいみわかんねー!!」

亮太が笑いながら叫ぶ

「僕だってわかんねー!てかなんてことしてくれんだよ!!」

僕も笑いながら叫ぶ

あぁ、楽しい

「近くに公園があったろ!先に行っててくれー!」

「わかった!」

おぉはやいはやい

亮太はあっという間に夜道に消えていった

僕は疲れてその場に立ち止まった

死んでも疲れる

死んでも汗が出る

もしかしたら死んでないのかもしれない

たとえ世界中の人間に忘れられてたとしても

亮太が覚えている、あんなに楽しい奴が覚えてくれている

     

「もしかしたら…これでもいいのかもな…」

肩で息をしながらそう呟いた

「そうおもえますか」

後ろから声がした

理子さんだ

「来ちゃいましたか」

「来ちゃいました」

理子さんが僕の腕がないことに気付いた

「腕はどうしたんですか?」

「あぁ亮太が持ってっちゃいました」

「話したんですね?」

「えぇ、やっぱり僕のこと覚えていてくれましたよ」

「そうですか…やっぱり運命なんでしょうね」

「あぁー…」

告白のことなんて何も考えていなかった

もうその話は抜きにしてこのままがいいなぁ

そうはいかないんだろうが

       

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