Neetel Inside ニートノベル
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「すいません。警察ですけど、ちょっとお話だけよろしいですか。」
「はい。」
「この車両で電話をかけていた人はいませんでしたか。」
「いました。」
ビンゴだ。
「どんな人でしたか。」
「グレーの背広に黒いコートを羽織ってた30代くらいの男性です。
。顔はひとむかし前のイケメンって感じで、なんか目つきの悪い人でした。」
それは内藤のことではないか。
そりゃそうだ。あいつが電話を受けたんだから。
しかもひどい言われよう。
「他にはいませんでしたか。」
「いません。」
そりゃそうだ。「自分です。」とは言えないよな。
よし、ここらで核心を突こう。
「あなたは確か秋葉原より前から電車に乗りましたよね。」
「はい、日暮里から乗りました。」
「おかしいですよね。どこまで乗るつもりですか?」
電車はすでに新宿を過ぎていた。
もし、ここより先で降りるならば、なぜわざわざ遠回りしたのかということになる。
日暮里からなら内回りのほうが近い。
どう言い逃れるのか固唾を飲む。
「実は降りるつもりはないんです。」
期待していた答えとのギャップに驚いた。
乗り過ごしてしまったと弁明するのかと思えば、
これでは完全にクロだと自分で言っているようなものではないか。
犯人と目される人物はさらに続けた。
「私達は自殺サイトで知り合い、自殺するつもりでここに来ました。」
と周りの3人を紹介された。
混乱してくる。
自殺志願者が死ぬために首相の孫を誘拐して、
わざと捕まり死刑にしてくれということかと、
無理な解釈をしたが違った。
 彼らの話によると、最近自殺サイトにあのニュー速板に書かれた犯行声明の内容が書き込まれ、
ご丁寧にも発車時間まで書き記されていたという。
そして、その車両に乗ると事件に巻き込まれるという憶測から話に尾ひれがついて、
乗ると必ず死ぬとか、大量殺人が起きるとか、自殺者集合とか、大量の書き込みがしてあったそうだ。
彼らはそれぞれ事情で、ひとりでは自殺できない自殺志願者達が集まるそのサイトで知り合い、
もしかしたら、死ねるのではないかとこの電車に乗ってみたという。
まさに地獄への片道切符というわけだ。

       

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