これで順当なのだろう、いや、当然の帰結と言うべきなのか。
逢坂も東橋も無茶苦茶悔しがっていた、当たり前だ。
一見すればまるで僅差で負けたような構図なのだから。
でもそれは予定調和。
一生懸命頑張ってもそれはちょっと頑張ったにしかならない。
けれど努力が徒労に、骨折り損になっていることなど彼女達は知る由もない。
もし知ったとしても、それはもっと後の話だろう。
しかし知ったところで、あいつらはそれが原因と気づくのだろうか。
それほどまでに、咲乃の勝ちは完璧だったように思えてならない。
……まあ、俺も全く知らなかったから、ある意味負けてしまったのだが。
大体採点方式以前に問題のレベルが高すぎるしね、進研模試が赤子同然だし。
東橋が教えてくれた勉強法も、独特過ぎて全く参考にならなかったしな。
『暗記物は総じて脳裏に焼き付けろ』って何だよ、ほぼ暗記パンじゃねーか。
理数系至っては『考えるな、感じろ』レベルだったからな、無理。
――まあ、それはともかくとして。
いずれにしても、この勝負は言わば出来レースみたいなものだったのだ。
咲乃にしか出来ない、いや咲乃だからこそ可能にした、必然的結果。
仮に最初から種が分かっていたとしても、挽回出来たか怪しいだろう。
けれど、これは違う。
これは必然であってはならない、偶然でなければいけない。
そうでなければ、僕のような人間がもう1人いることになる。
もちろん初めからいたのなら何の問題もない、ただの天才として処理出来る。
受験も佳境に入り、最後の期末考査で出てきたのなら、努力家として処理出来る。
だが、こんな中途半端な時期に出てくるのは、明らかにおかしいのだ。
あってはならない、あってはいけない、あることは許されない。
でなければ、これが意味する先は、灰色の世界に藻掻き苦しむ、愚者の成れの果てだけだ。
――しかし、僕がそれをどうこうする権利は有していない、許されていない。
有するのは愚者が廃人になる様を、同情の余地も持たずに漫然と見つめる特権のみ。
全く、こんな輩が人助けをしたいなど、矛盾もいいところだ。滑稽の極みである。
これでは聡ちゃんを我が物にしたかっただけだ、と言われても仕方ないのではないか。
……それでも、僕は彼女の訪問を待つことしか出来ぬ、畜生でいなければならない。
あくまで何でも屋としての段階を踏まなければ、干渉することさえままならないのだ。
――嗚呼実に愚かしい、何て僕は愚図で愚直なんだろう。
でも、それでも僕は、全てを背負って、理解して、その通りに動くしかない。
期末考査 成績優秀者
1 蒼森 夏美 900
2 神名川 咲乃 896
3 籠嶋 冬子 890
4 卍山下 圭佑 772
5 薬師丸 朱音 768
6 鈴木 颯太 759
7 新妻 葉百合 755
8 一 一三 748
9 山田 真也 742
10 藤原 弘明 738
11 ―― ―― 7――
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