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第七話「こういうのDQNネームっていうらしいよ。」

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「まあでも名前をつけるって言ったら普通一生に一回くらいはやるよね」


 命名権の話は建造物から通常の名付け親の話に切り替わったらしい。少し疲れた様子の鈴はボックス席のせもたれに体を預けて呟いた。


「そうだなー。やっぱり自分の子供にはかわいい名前をつけてあげたいもんだ」


 きょうこもそう言うと両腕を頭の後ろで枕にしてソファ席にもたれかかる。だべっていると時間がゆっくり流れていくように感じるにも関わらす、なぜか気づくと時間が妙に立っていることが多い。
 彼女たちが話し始めてかなり時間がたっていることもあり、場は少しだらけムードだ。


「そうねえ。さっきも少し言ったかもしれないけど、最近はわりと珍しい名前をつけるご両親も多いみたいね」
「確かになー。あたしのおじさんは小学校で先生やってるんだけど毎年『佐藤亜斗夢』君とか、その妹の『佐藤羽乱』ちゃんに悩まされているらしいぞ」


 命名権の話題を振った張本人であるサヤが話を振ると、鈴がたいへんわかりやすい具体例を出してくれた。


「……鈴は今『さとうあとむ』くんと『さとううらん』ちゃんと言いました」
「?? 誰に言ってんだよ真奈ー」


 気の使える真奈に空気を読まないきょうこがつっこむ。真奈の言うとおり鈴の言った名前は上のように読むのであしからず。


「しかしそれはひどい名前だなー。宇宙にぶっ飛びそー」
「……宇宙兄妹ということね」
「それはなんか語弊があるからダメだー」


 きょうこと真奈がコントを続けていると、鈴が割って入る。


「でもま、当人たちも苦労してるんだろうな。絶対病院とかで読んでもらえないだろ。あたしは自分の子供にはせめて読みやすい名前をつけてやりたいよ」
「……ひらがなで『ばら』ちゃんとか『れもん』ちゃんと『ゆううつ』ちゃんはどうだろう」
「なんか普通に書けなかったみたいだからいやだ! ってかゆううつちゃんはないだろう」


 鈴は目を白ませて真奈に怒鳴った。



「なんかもう各自つけたい名前を紙に書いて発表するっていうのはどうだー?」
「それはいいかもしれないわねぇ。ちょうどルーズリーフがあるからみんな書いてちょうだい♪」


 急におおぎり形式を提案するきょうこに妙に用意のいいサヤ。進行もスムーズだ。


「「「「……やろう」」」」


 四人の声が完全に同じタイミングで響く。どうやら全員こういうのが大好きなようだ。
 しばし四人そろって真剣な面持ちでルーズリーフを各自睨みつけ、思いついた順に真剣な面持ちで筆(シャーペン)を走らせていた。
 だべりに疲れてきたら、こういった方法で気分転換をするのが彼女たち流らしい。こうしていつまでもマックの二階席に居続けるのだった。
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