調書No.114 片栗粉
組織コードネーム 座間アミロウ
食品。
原材料はカタクリまたはジャガイモの澱粉。
水に溶かして熱を加えればとろとろになる。濃度によって液の粘りが変化する。
料理にとろみをつける際に使用。
ワラビ餅が作れる。
その他食品例:マロニー、春雨、葛きり等。
餅をついたときの手粉に使う。(情報補足官殿より名言あり)
体が温まる。
◇この素材に関する私の主観から得られるヒト社会での実用性と可能性について、今後も一般大学生生活を進行しながら補足を加えて調書にまとめてゆく。
ザマッチの日常2
地球生活での危機に備え、私は武器の調達を済ませて大学へ行った。
春とはいえ夜はまだ寒くそれなりに物騒だ。なのにこの国の学生ときたら、のんきな顔で薄着ばかり。それとも芸大生がクレイジーなだけなのかね。
「ザマッチ、おされの基本はやせ我慢だぜ。見ろ、みっちゃんだって……」
うん……、いい。
どうせ冴草君は今日も女の子に温めてもらうのだろう。このサオグサめ。
心の呟きが聞こえたのだろうか、私はなぜか冴草君に蹴り飛ばされた。
彼はきっとエスパーだ。
それより、近日テロが襲来するのに、この青年は全く危機感にかけている。
ちょっと奴等との戦いが何たるか教えてやらねばならない。
そう認識した私は彼に武器リストを見せてやった。
備えあれば憂いなし。そんなところを学んでもらいたい。
これでいつでもみちゃんのついでに冴草君も守ってあげられるんだよ。
それにしても、何がおかしい友よ。
――武器リスト――
蛇口:二個
ドアノブ:六個
片栗粉:30㎏
デカい鍋:一個
車のタイヤ:一個
キッチンハイター:一本
ゴーグル:一個
釘:三箱
セロハンテープ(電文用):30個
三日後。私はテロとの戦いに敗れた。
敵は見事かつ巧妙に、最終防衛ラインである私の鼻毛を突破し粘膜へ侵攻した。
「なんだザマッチ、エアコン使ってねえの。そりゃ風邪も引くわな」
そう言ってアジトへ来た冴草君は私に葛根湯をくれた。
なぜだ、あんなに守りは固めたはずなのに。一体なぜ。
私の頭上にいるディアーカですらピンピンしている。
私は武器を下記の使用例で正しく使ったんだぞ。
蛇口:凍結時の予備。
ドアノブ:ドアに設置。不審者進入予防。
片栗粉:とろとろお風呂でぬっくぬく。
デカい鍋:片栗粉溶かし用。
車のタイヤ:なんかに使えそう。
キッチンハイター:カビ防止で完全除菌。清潔。
ゴーグル:ネギ刻み用。
釘:手作りこん棒で軽く血行促進。
セロハンテープ:緊急時地球司令部への連絡用。
しかしこれで私がアホではないということも証明された。
てことは、このナキボクロが色っぽい私の友達は……。
不審に思って冴草君を見詰めると、彼は私を踏んづけた。やはり彼はエスパーだ。
けれど怒りっぽいのはカルシウムが不足しているからだ。冴草君、私のことはいいから、食べた方がいいぞ「侍ライス」。
私は病床に臥しながらも、日頃収集しておいた雑魚のタッパーを彼に渡した。
「ご飯は炊飯器にあるから、これを食べるんだ冴草君」
「ありがと、よ――ぅ」
冴草君はタッパー振りかぶり、窓の外遠くへ投げた。
なんてこった。せっかく一週間がかりで集めた代物なのに。
そして彼はさっき私が入っていたばかりの風呂場へ向かった。
きっと女の子と温まって来たから、汗を流したいのだろう。困った子だ。
今日のとろとろお風呂は生姜風味で美味しいぞ。あったまるぞ。
ああ、そりゃもう体の隅々、あんなとこからこんなとこまで……。
まあ、あまり多くまでは想像すまい。
ところがどうだ、なぜか風呂場から引き返して来た冴草君は私をボコボコに殴った。
どうやら彼は生姜嫌いのようだ。
このお子様め。知るか。
つづく
地球生活での危機に備え、私は武器の調達を済ませて大学へ行った。
春とはいえ夜はまだ寒くそれなりに物騒だ。なのにこの国の学生ときたら、のんきな顔で薄着ばかり。それとも芸大生がクレイジーなだけなのかね。
「ザマッチ、おされの基本はやせ我慢だぜ。見ろ、みっちゃんだって……」
うん……、いい。
どうせ冴草君は今日も女の子に温めてもらうのだろう。このサオグサめ。
心の呟きが聞こえたのだろうか、私はなぜか冴草君に蹴り飛ばされた。
彼はきっとエスパーだ。
それより、近日テロが襲来するのに、この青年は全く危機感にかけている。
ちょっと奴等との戦いが何たるか教えてやらねばならない。
そう認識した私は彼に武器リストを見せてやった。
備えあれば憂いなし。そんなところを学んでもらいたい。
これでいつでもみちゃんのついでに冴草君も守ってあげられるんだよ。
それにしても、何がおかしい友よ。
――武器リスト――
蛇口:二個
ドアノブ:六個
片栗粉:30㎏
デカい鍋:一個
車のタイヤ:一個
キッチンハイター:一本
ゴーグル:一個
釘:三箱
セロハンテープ(電文用):30個
三日後。私はテロとの戦いに敗れた。
敵は見事かつ巧妙に、最終防衛ラインである私の鼻毛を突破し粘膜へ侵攻した。
「なんだザマッチ、エアコン使ってねえの。そりゃ風邪も引くわな」
そう言ってアジトへ来た冴草君は私に葛根湯をくれた。
なぜだ、あんなに守りは固めたはずなのに。一体なぜ。
私の頭上にいるディアーカですらピンピンしている。
私は武器を下記の使用例で正しく使ったんだぞ。
蛇口:凍結時の予備。
ドアノブ:ドアに設置。不審者進入予防。
片栗粉:とろとろお風呂でぬっくぬく。
デカい鍋:片栗粉溶かし用。
車のタイヤ:なんかに使えそう。
キッチンハイター:カビ防止で完全除菌。清潔。
ゴーグル:ネギ刻み用。
釘:手作りこん棒で軽く血行促進。
セロハンテープ:緊急時地球司令部への連絡用。
しかしこれで私がアホではないということも証明された。
てことは、このナキボクロが色っぽい私の友達は……。
不審に思って冴草君を見詰めると、彼は私を踏んづけた。やはり彼はエスパーだ。
けれど怒りっぽいのはカルシウムが不足しているからだ。冴草君、私のことはいいから、食べた方がいいぞ「侍ライス」。
私は病床に臥しながらも、日頃収集しておいた雑魚のタッパーを彼に渡した。
「ご飯は炊飯器にあるから、これを食べるんだ冴草君」
「ありがと、よ――ぅ」
冴草君はタッパー振りかぶり、窓の外遠くへ投げた。
なんてこった。せっかく一週間がかりで集めた代物なのに。
そして彼はさっき私が入っていたばかりの風呂場へ向かった。
きっと女の子と温まって来たから、汗を流したいのだろう。困った子だ。
今日のとろとろお風呂は生姜風味で美味しいぞ。あったまるぞ。
ああ、そりゃもう体の隅々、あんなとこからこんなとこまで……。
まあ、あまり多くまでは想像すまい。
ところがどうだ、なぜか風呂場から引き返して来た冴草君は私をボコボコに殴った。
どうやら彼は生姜嫌いのようだ。
このお子様め。知るか。
つづく