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第1話

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人類が宇宙進出して数世紀。
現在では地球民と宇宙移民の間で大規模な戦争が行われていた。
地球を中心とする太陽系惑星が協力して成り立つ太陽系惑星連合宇宙軍、対するは太陽系外宇宙移民達が統合して出来上がった連合共和国軍である。
連合共和国とは名ばかりで、地球側に対抗するために各移民達が寄せ集まったに過ぎず一部には君主制によって成り立つ惑星も同盟を結んでいる。

地球より数十万光年離れたジェローム宇宙域。
ここでもまた戦闘が繰り広げられていた。
幾つもの巨大戦艦が戦火を交える中、そこから数百キロ離れた地点で連合宇宙軍第25艦隊旗艦アレン・J・ドリューの艦橋では司令官マーク・モリスが戦況をまじまじと眺めていた。
彼は地球出身のエリート将校であり、年齢は40だが既に少将である。
「主力部隊はどうなっている?」
「前線部隊は苦戦している模様で、第2、第7艦隊は相当な打撃を受けたようです」
「どうやら後方艦隊の出番のようだな」
モリスは逞しい顎鬚から手を下ろすと
「私が出るからには勝ちに行く。敗北は許されない。後方部隊進軍、各艦に通達しろ」
司令官の命令によって大きなブリッジ内にいる通信兵が、配属されている艦に進軍指示を通達する。
400メートルアトランタ級アレン・J・ドリューに先立ち、艦隊の先鋒を務める駆逐艦隊が前進し始める。
それに続くようにしてその他の大型艦も動き出す。
この第25艦隊は駆逐艦80隻、巡洋艦40隻、中型戦艦25隻、大型戦艦4隻、補給艦10隻という中規模艦隊である。
それぞれの艦は、巨大化するほど防御力が上がるかわりに速力が犠牲となる。
その中でも中型戦艦は速力、防御力、攻撃力のバランスが取れており最も扱い易い艦種として重宝している。
今回の艦隊編成はモリスが選んだものであり、素早い移動を可能にするため大型艦はできるだけ減らし、駆逐艦隊、巡洋艦隊での奇襲作戦を想定してのものという。

その頃前線では、ダーネル・ジョンストン中将率いる第2艦隊が必死の抵抗を続けていた。
初めのうちは善戦していた連合軍だが、共和国軍が2個分艦隊を投入してきたところで防戦一方となってしまった。
第2艦隊旗艦サウスダコタを護衛する巡洋艦が次々と被弾していく。
サウスダコタのブリッジでは被害状況、戦況分析などで荒れていた。
「敵の状況を報告しろ」
ジョンストンが苦そうな表情で参謀長に尋ねた。
「敵戦艦群70を中心とする全艦隊がこちらに向かって前進中。第7艦隊による防衛ラインが突破されるのも時間の問題かと」
「出来るだけ時間を稼がせろ。後方艦隊が到着するまでは持ちこたえねばならん」
「閣下、ここは撤退するのが最良であると進言します」
「後方艦隊が動く場合、撤退はありえないということだ。モリス提督も時間稼ぎではなく援軍としてこちらに向かっている」
二人が話し込んでいる中、目の前の艦が攻撃を受けて爆発した。
それを見て、ジョンストンも少し意見が変わった。
「確かにこのまま持ちこたえるのは難があるな。護衛艦隊を出し、シールドを展開。その間に我々は後退し、出来るだけ早くモリス提督と合流する」
護衛艦とはそのなの名の通り、同伴する艦を護衛するのが目的の艦種である。
大型艦を破壊することはできないが、迎撃ミサイル、戦艦の主砲であるプラズマキャノンをある程度防ぐことができるバリアー状のシールドを展開することができる。
司令官が指揮を仰ぐと、数十隻に及ぶ護衛艦が前方でシールドを展開し始める。
「敵艦隊は上手く足止めされているようです。ですが長くは持たないでしょう」
「そのようだな。セクター2区画ラインまで後退せよ」
無数のプラズマがシールドに防がれているうちに大型艦は艦首の推力エンジンを起動させ、後退していく。
その間にも高出力のプラズマに耐えられずに破壊されていく護衛艦。
共和国軍の圧倒的破壊力の前では護衛艦の防御力では防ぐことはできないのである。
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