サイド2・ジステッドのマザーバンチこと、天道宮・改。ラグランジュポイントを離脱。
地上への自由落下軌道に入る。落下予測地点は教皇庁司令部、クックルーン大聖堂を抱く
ギアナ高地。ラティエナ軍との会戦地点へ向かいつつあった高雄大将が率いる艦隊は急遽、
目的を変更……次元歪曲砲・アルカンシェルによる浮遊大陸の完全消滅を試みるが、幾層
ものエナジーコートに阻まれ、果たせず!
「これは、卑劣な教皇庁への裁きの鉄槌や! 神の放ったメギドの火に、必ずや、彼らは、
屈するやろう」
半壊した天道宮・改、地上の引力圏に到達。三つに割れたそれぞれがクックルーンに飛
散し、大被害をもたらした。しかし、軌道が逸れた為、大聖堂は健在だった。
「クックルーンは天の業火で焼かれた……これはエクソシストの大義に背いた者の、正当
な償いや。彼らは自ら求めた罰を受けた。現に、帝国軍の艦隊がシンボリックな意味のみ
を持つ大聖堂を守らんが為、天道宮・改に艦砲射撃を敢行しなければ、クックルーン市街
地に被害は及ばなかったハズや。せやから、罪なき市民の死に、涙するものはいるやろう。
哀れみ深い、我等、ラティエナ国民は、彼等の為に泣き、又、彼等の為に祈るやろう。同
時に、これは、満腔の怒りを教皇庁に向けねばならへん! 信心深い弱者を離反させ、浅
はかなジステッド政府を唆して、我々に敵対させた『法王』 NATO・ルーン・響こそ
が、真の敵なのは明白や。我が同胞よ。栄えある、ラティエナ国民よっ。戦いはこれから
や! 一糸乱れぬ隊伍を組んで、前に進もうやないか!」
この、普岳プリシラ姫の演説は世界中で中継されていた。
「――共に勝利の日まで!」
厭戦機運が高まり、無血開城を迫っていた世論は一変して、ラティエナの独立国としての
立場を支持するのが、世界的な流れとなった。こうなってしまっては、マスコミやコメン
テーターも、このビッグウェーヴに乗る他ない。不知火の策は成功した事になる。