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第四十章『紅隻守』

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 後日、クックルーン教国と、ラティエナ王国の間で休戦協定が結ばれる事になった。そ
れに先駆けて、人質となった霧島薙を帝国に送還するかどうかが議論され、その結果、帝
室は廃止される事となった――そして、軍法会議にて。
「そもそも、貴君は何か勘違いをなさっているようだ。これは、情報調査や事情聴取では
ありませんよ?内務調査? 否! 弾劾裁判? 否! これは宗教裁判ですよ!」
「……」
教皇庁が掌を返したので、癪ではあったが霧島薙は帝国に対する質問を一切合財、黙秘し
続けた。その質問は三桁にも及ぶ。スウィネフェルド帝国と言う国は超海洋サンサロッサ
を隔てた、沿岸諸国連邦のバックアップを受けている。沿岸諸国連邦はキリスト教穏健派
が統べる民主国家で、北欧神話をベースに構築されたクックルーン大陸の文化・風習とは
異なる。それでも、『法王』 NATO・ルーン・響はラティエナではなくスウィネフェル
ドの解体と分割統治を決断していた。
(面倒臭い、殺すのか? 殺さぬのかッ!)
敗軍の将はありがたい教えという説教にウンザリしながら、やや、自嘲気味に、その牙を
抜いた。その後、彼女は捕獲した山城アーチェ中将の『善悪に囚われない大いなる慈悲』
と言う強い意向もあって、魔法学園へと移送される事になった。之によって、大スウィネ
フェルド帝国は高雄と名前を変え、共和制に移行し、ここに、大国の歴史は幕を閉じたの
である。しかし、高雄執政官が暫定政府の初代議長に、教皇庁より任命された為、見せ掛
けの平和は、そう長くは続かなかった。霧島薙が黙秘権を行使した為である。
(……最早、どうなっても、私は知らぬッ)
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