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第七十三章『ラフレシア』

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 北部第五軍――
『かかれー!』
柿寄少尉の号令一下、浮遊大陸ジステッドの守備隊を攻撃。爆音と共に双方の艦が沈み、
被害甚大。
『どごおおおおおおおおおおおおおおおん!』
北軍旗艦ガトリングス。
「対空防御!」
オーラバリアと言う名の斥力で、敵陣を突破する。
「ビーム・ラムで敵旗艦ハルバードを攻撃する! 総員! 対ショック対閃光防御!」
「陣形はどうします!」
少尉は普段どおり突撃命令を下した。
「鶴翼のまま前進せよ!」
国民主権による民衆運動。しかし、扇動の罪を被されることもない。陣形としては非効率
的では有るが、敵が戦意を喪失するので、この上なくやり易い。
「ウラジーミル・イリイチ・レーニン……」
「え?」
それは、階級闘争が勝利した。
「ソヴィエトに対する列強の干渉戦争がモデルだ」
敵の仕官を排除する。下士官は内応者の山だった。北軍は占領したジステッド領を、全て、
投降した下士官に分け与えた。
「どの道、帰る選択権はない。オーラコンバーターの出力を上げて、全速前進せよ!」
R.柿寄、この時の為に生まれてきた。オペレータの双子は焦っている。
「このままでは……」
「頃合だな、私が出ます」
他の部隊に伝令を打つ。太南洋高気圧で上昇した爆撃機。それが落下させる焼夷弾を、高
射砲で撃ち抜く。これが成功すれば、気液平衡で敵機の高度が軒並み下る。
「ふふ、本物の精密誘導射撃を教えてやる……ブツブツ」
「何それ恐い」
根暗で盆暗な少尉は、装備の換装を整備兵に求めた。
「腰部ビームガトリングスに私の機体を変えろ。急げよ?」
「ハァ? 足なんて飾りですよ」
遂、最近まで一平卒だった身に指示されて、整備兵は悪態をついていた。その時、丁度、
エンジンが臨海点に到達し、艦が敵陣真っ只中を目指して前進を始めた。
「イ、イエッサー!」
『ふふ』っと、やや、やつれた顔で准将は言った。
「精々気張る事だ――地獄の業火に揉まれて死にたくなればな」
聖機兵は出撃後、間もなく、敵艦爆を撃墜。これを皮切りに、北軍全艦隊が突入。殲滅戦
と化して、全滅が勝利条件として義務付けられる。
「落ちろぉ!」
やがて、戦艦ハルバードは轟音と共に爆沈した。准将はこれで、八重山の海軍将校の対で
ある、ラティエナ陸軍将校となり、長官代行と呼ばれる事と為る。
 後日――
 戦艦ガトリングスは拡散ソル・カノンを受領。ネェル・ガトリングスへと姿を変える。
浮遊大陸の制圧も、ほぼ、完了し、これによって、北部戦線は終結するのであった。
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