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第十章『軍艦校舎』

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 ――数日後。山城アーチェは予定通り、クリスタルの収集に乗り出した。手始めに、生
徒会予算で買収。二年生の修学旅行をキャンセルして積立金で買収。その後は、軍に申請。
これだけで、対空銃座を数箇所に配備できた。
「一応、生徒にも募集を掛けてみるか」
山城アーチェはクリスタルと引き換えに、奨学生となる制度を学園に設けた。
(いつ、何時、何者に襲撃されるやも分からない。適当に数が集まり次第、業者に着工さ
せよう。見切り発車で抵抗力をつけなければ……)
 放課後――腕を伸ばして空に届けば、新しい始まりの時は見える。
「おお、やってますわね」
エルケレス学園三銃士がやって来た。
「吶喊工事で、急ピッチで仕上げている所だ」
山城アーチェはタバコを吸いながら、図面と睨めっこしていた。
「ここ、最近、教官が授業に出られなくて退屈で退屈で。腕が鈍りそうですよ」
「現場監督に任命されたから、こっちも、色々と、大変なんだぞ?」
 実際、あまりに忙しくて嫌気が差してきた。朝から会議はあるは、陸相に呼ばれるは、
自分がそんなに戦争を起こしたい風に見えるのだろうか? 山城アーチェの立場は針の莚
だった。
「作るからには、当然、不沈艦を目指すぞ」
山城アーチェは目を細める。
「反戦派に非難されていますね。危険思想を体言したかの様な、醜い鉄塊だと」
若葉は山城アーチェの心中を察する。
「言いたい奴には言わせて於けば宜しくてよ。所詮、後方でぬくぬくと暮らす偉い人には
分からなくってよ。戦う事しかできない者達の事は――」
戦闘行為こそ、自らの存在意義だ。目の前の敵を砕く! ――誰にも否定はさせない。
 ――不知火の発言に山城アーチェは満足していた。
「うむ。頼もしいと見たぞ、お前達。今こそ、大同団結してこの局面を打開するのだ」
我が校、機っての天才も、過激派に加わろうとしていた。この流れは非常にマズイ。自分
が宥めなければ、戦線が拡大してしまう。
(そもそも、誰と戦うつもりなの……)
大乱世が始まろうとしていた。
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