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就職活動編

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ただひたすら、時間が過ぎていったように思う。中学を卒業してから十八になるまで、思い出などほとんど残っていなかった。オンラインゲームで遊ぶ日々だった。
けれど俺は、何をするべきかはわかっていた。だから何もせずに、十八になるまで、ひたすら待った。親が泣こうが、関係は無かった。
ただひたすら、来るべき日に備えて、待った。待つだけの日々だった。
そして十八になった。およそ四年ぶりに家を出た。外の風が、俺に厳しく降りかかったのを覚えている。雪の振る日だった。
電車に乗った。東京行きの、片道切符を手にして。家には、置手紙を残しておいた。俺の夢を書き添えた、そっけない手紙だったと思う。
この日のためにビデオを観て、勉強していたつもりだ。俺は電車に乗り、雪の降る景色を眺めながら、東京へと向かった。
電車から、今までいた町を眺めると、父と母が手を振っていた。雪を頭にかぶせながら、笑顔で手を振ってくれていた。
それが、最後に見た両親の姿であり、故郷での最後の思い出であった。
12, 11

  

俺は東京の駅で降りた。何処の駅であったかは、全く覚えていないが、人ごみで圧倒されたのを覚えている。
人ごみに押され、半ば強制的に駅を出た。広大で、見たことも無いような建物が、俺を見下すように並んでいた。
俺はジーンズのポケットに綺麗に畳んでおいた紙切れを取り出した。目的地への地図だった。
地図を見ながら、慣れない土地を散策した。迷いそうになり、中年の男に場所を聞くと、テレビで聞くよりすんなりと場所を教えてくれた。
それは、何年も触れていないような、不思議な暖かさだと思った。

中年の男に教えてもらった場所へ行くと、背の高いオフィスビルがあった。
他のビルも、同じように背は高いのだが、田舎から出たばかりの俺にとっては、大きいとしか例えようが無かった。
自動ドアをくぐり、ビルの札を見る。「ヴェルガ」という名の会社を見つけた。俺が探していた会社であり、俺が就職する会社だった。
その後、俺は人生で初めてのエレベーターに乗り、32階のスイッチを押した。
オフィスはエレベーターを出てすぐ前にあった。その階全体が「ヴェルガ」のオフィスだったからだ。受付が出てすぐにあるのだが、そこには既に何人かの男が並んでいた。
俺はその列に並んだ。誰も話さなかったし、話そうともしていなかった。緊迫した雰囲気の中、ただ、待った。
その間にもエレベーターが開き、何人かの男が俺の後ろに列を作っていた。おそらく10人くらいになった所で、受付の女性が、「15時になりました。ここに氏名のご記入をお願いします。」と機械的な声で言った。
先頭の男から順に氏名を記入していき、俺も氏名を記入した。記入をし終えると、先頭の男についていき、少し広めの、何も無い部屋へと辿り着いた。
俺の後ろの列も、全員が書き終え、俺の後ろにくっついて来た。そして、全員が入り終えると、部屋のドアが閉められた。

そして、奥の部屋から、色黒で短髪の男が現れた。そして、列の前に着くと、口を開いた。
「私は三山豊(ミツヤマ ユタカ)。業界ではチョコレート三津(ミツ)と呼ばれている。」
そう、彼は一昔前にAV業界に旋風を巻き起こした男優、チョコレート三津だった。俺は、彼のようなAV男優になるために、そこに居た。

チョコレート三津は言った。「今から各自自己紹介を行ってもらう。名前、年齢、そして特技、もしくは特徴だ。」と言い、手を叩いて、「前のやつから順番だ。始め。」と言った。

うろ覚えだが、一番目の男はなんとなく覚えている。「シマブクロ ツヨシ21歳、特技はナンパです。」と言っていた気がする。

するとチョコレート三津は、「面白い、やってみろ。」と言って、受付嬢を縞袋の元へと向かわせた。
5分ほどの会話が行われた後に、受付嬢は言った。「失格です。」と、機械的な声で。そしてチョコレート三津も、「帰れ。」と言い、縞袋は去っていった。

二番目の男は、「山岡龍司(ヤマオカ リュウジ)18歳。特技はうんこを食べることです。」と言った。
その瞬間、場が凍りついた。今まで以上に凍りついた。

山岡の見た目は、短髪で少し大柄の気の良さそうな青年であり、容姿通りの18歳である。その青年が、「うんこを食べる。」と言うなんて、誰も予想はしていなかった。
そして、今まで以上の沈黙が流れた。

その沈黙を引き裂いたのが、チョコレート三津で会った。彼は、受付嬢に、「おい、今できるか?」と言った。
受付嬢は、「多分できます。」と言って、スカートからパンツを降ろし、床にまるで和式便所にまたがるような姿勢で座り始めた。

その数十秒後、彼女は脱糞した。彼女は、「お手洗いに行ってきます。」と言って、トイレへと向かっていった。
誰もが唖然としていた。が、チョコレート三津は違った。チョコレート三津は、「さあ、食えよ。」と笑顔で言った。

山岡は、ヒョコヒョコと受付嬢の出した汚物へと向かっていき、手を伸ばして、汚物を手に持ち、食べた。笑顔だった。

一人の男が嘔吐した。チョコレート三津は、「出て行け。もう二度と戻ってくるな。」と嘔吐した男に向かって言った。男は出て行き、二度と戻ってこなかった。

そして次に驚愕したのが、山岡の言動である。受付嬢の汚物を食べ終えた山岡は、「僕、ゲロもいけますよ。」と言って、ゲロのほうへと向かっていった。

チョコレート三津は、「もういい、お前は採用だ。奥の部屋へ行け。」と言い、山岡は奥の部屋へと姿を消した。
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俺の番が回ってきた。山岡以外の先に紹介した人たちは皆、追い出された。俺は、「金打 大(カナウチ ダイ)、18才です。特徴は、チンコがでかいです。」
と言った。チョコレート三津が、「見せろよ。」と言ったので俺はベルトを外し、チャックを下ろし、おもむろに80cmはあろうそれをさらけ出した。
チョコレート三津の目が点になったのを覚えている。豆鉄砲を食らった鳩というか、その類の表情だった。

その後、チョコレート三津が、「勃起はするのか?」と尋ねてきたので、「手でやってもらえば勃ちますよ。」
受付嬢が、「私がしましょうか?」と言ったが、「待て、メジャーを持ってこい。」と言った。
その後受付嬢がメジャーを運んできた。俺の陰茎が測定されるのは、実に5年ぶりの出来事であった。

亀頭の先端にメジャーが引っ掛かり、メジャーが伸ばされた。受付嬢は、「84cmです。」と、チョコレート三津に向かって言った。
チョコレート三津は、「なら、勃起させろ。」と言った。その後、受付嬢による手コキが始まった。しばらくして、俺の陰茎は完全に勃起した。

既にそれは、俺の身長を超え、はるか遠くまで伸びていた。チョコレート三津は、「測れ。」と言い、受付嬢がメジャーを伸ばした。
先端から付け根まで、届かなかった。2mのメジャーは、俺の陰茎を測るには、短すぎたのだ。

測れた所、即ち2m地点に印をつけ、そこからまた測りなおした。「52cmです。」と言った。即ち2m52cmである。
チョコレート三津は目を大きく見開かせ、「合格だ。行け。」と言った。俺は奥のドアへと向かい、ドアノブを回した。
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