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入寮編

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木の葉の振るアスファルトの上を数分歩いた。相変わらず秋目さんは何を急いでるのかカツカツと音を立てて先頭を歩いていた。
それをうんこ食いの山岡と巨根の俺がついて行っていた。山岡はどうやら疲れていたのか、終始、生きているのか生きていないのかわからない状態で秋目さんの後を追っていた。
俺は、その時何を考えていたのかは覚えていない。たぶん、秋目さんのことを見ていたんだと思う。陰茎を見せてしまった背徳の気持ちで、俺の歩みは山岡よりも遅かった。

何分歩いていたかは覚えていないが、しばらく歩いていくと、秋目さんの足が止まった。その数秒後、山岡は歩みを止めた。そして、俺も立ち止まった。
寮についたからだった。秋目さんは、俺達のほうを向いて、「これが寮です。」と言った。山岡は、唖然とした表情で建物を見つめていた。
古式に乗っ取った完全に和風の建物であり、木造。屋根瓦は所々剥がれ落ちており、その上に夕日に照らされたカラスが居た。
それは、一度誰かが幽霊旅館と言えば、そのまま幽霊旅館となってしまうであろう、竹薮に囲まれた和風の寮であった。

秋目さんが、「入りましょう。」と言ってまた歩いていった。それを俺と山岡が追った。そして、秋目さんは玄関であろう戸を開けた。

戸を開けると、奥には幽霊旅館にぴったりの、しわくちゃになった老婆が正座をして座っていた。
いかにも骨董品の商売や何やらに手をだしてそうな、白髪を頭に上げて、その上に団子状の髪のまとまりを作り、櫛をさした典型的な老婆だった。

秋目さんは、「相田(あいだ)さん、これが電話でお話をした新社員です。」と言って俺と山岡のほうに手を向けた。
老婆は、「ああ、そうかい。それじゃあ案内するかね。」と甲高い魔女のような声で言った。もしかしたら本当に魔女だったのかもしれない。
腰の曲がりきった老婆が座布団から立ち上がり、ヨロヨロと俺と山岡のほうへ向かってきた。
山岡が、親切をきかせて「大丈夫ですか?」と尋ねると、聞こえなかったかのように、何も言わずに、廊下のほうへ歩いていった。

そして、「ついてきい。」と言った。俺と山岡は後を追ったが、秋目さんは、「それでは、私は私の部屋へ戻りますので。」と言って去っていった。

そして廊下を左に曲がった二番目のふすまの前で、老婆が立ち止まり、「ここがあなたたちのお部屋でございます。」と言った。

続けて、「中に説明が書かれた紙がありますので、それを見るようにしてください。」そういい、老婆は去っていった。
老婆の姿が見えなくなった時、山岡が、「おい、この旅館・・・」と口にした。俺は、「ああ、幽霊の一匹や二匹くらいいそうだな。」と言った。
その後山岡が、うっすらと頷いた。そして、俺はふすまに手をかけ、ゆっくりと左へとずらしていった。

畳が広がる、それなりに広い部屋だった。二人暮しには十分すぎるような、そんな部屋だった。そこへ、隅と隅にしかれた赤と青の布団が、そっと静かに横たわっていた。
床の間もあり、そこに陶器と、季節外れの彼岸花がそっと添えられていた。よく見つめると人口花だということが容易にわかった。
が、茶色い木で覆われた床の間に、薄茶色の陶器と赤い彼岸花が添えられているのは、なんとも洒落たものだと思った。

そして、山岡が、「俺青で寝るからな!」と言った。俺は別にどうでもよかったから、「あー、いいよ。俺は赤で寝るよ。」と適当に返した。
山岡が布団を捲ると、「おっ」と声を上げた。そこには、一つの封筒があった。山岡が俺のほうを見てきたので、ためしに俺の赤い布団を捲ると、そこにも茶色い封筒があった。
俺と山岡は無言で目を合わせ、頷き、封筒を開けた。中には、小学校の頃に行った修学旅行のしおりのような少ページの紙がホッチキスで止められている冊子が入っていた。

とりだして、パラパラと捲ると、地図が一枚と、決まりごとのような物が書かれていた。地図は今でも大半は思い出せるが、決まりごとに関してはあまり覚えていない。
確か、その後山岡と俺で、「誰が破るんだよこんな約束・・・」と半ば気分を損なうような気味の悪い約束事もあった。確か夜中に倉庫に入るなとか、庭の梅の木の周りを30周以上すれば違反だとか、そんな物もあった。
重要だったのは、掃除洗濯は自分でやるという事と、服は全て用意されているという事。それくらいだった。
部屋にある小さい襖を開けると、確かに服も下着もあった。ご丁寧に二部屋分用意されていたが、一人一畳と、少しせまく感じた。

そしてその後、俺と山岡は、地図を参考に共同の風呂場へと向かった。
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