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出会い編

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目を覚ますと、俺は風呂の着替え場で横たわっていた。バスタオルが体にかかっていた。
秋目さんとヤッたのは夢だろうか。そう思った。夢だと思った時には、少し残念だと感じたが、その反面、俺は喜んでいたのだろうと思う。
秋目さんがそんなことをするはずが無い。そう信じたかった。この時の俺は完全に盲目だったのかもしれない。そもそも秋目さんはAV女優だ。そんなことをして、当然だった。

それでも俺の目は何も見えなかった。俺は、俺がどうして着替え場で寝ているのかや、体にタオルがかかっていることなんて、気にも止めなかった。
その後、俺は、自分の服を探した。カゴを見ていくと、他に一人の男性だけが風呂に入っているようだったので、挨拶でもしておこう。そう思って服を着た後に浴場に戻った。

入ると、一人だけ、誰かが湯船に浸かっていた。軽快に歌っていたが、何を言ってるのか解らなかった。おそらく英語の歌だったと思うが、中学二年生で学校に行くのを止めた俺には、英語を理解することなんて無理だった。
俺は、とりあえず、「あのー。」と言った。続けて何かを言う気は無かったが、とりあえず。ということで声をかけた。
そうすると、湯船から少し不自然な音程で、「なんだい?」と、声が返ってきた。用件を尋ねる言葉というより、「何台?」とか、「何代?」、とかそういう風に聞こえた。

「僕、今日からここに入ってきた金打っていうんですけど・・・」というと、「ハイハイ、入り口で寝てたやつね!」という妙に元気な声で返事があったが、相変わらず発音に違和感があった。
その後、声の主は風呂から出てきて、「私はカルロス。よろしくカナウチ。」と、片言の日本語で喋ってきた。外人だった。

「どこの国から来たんですか?」と俺が聞くと、カルロスは、「メキシコだよ。けど15の時サンフランシスコ行った。その後ここ来た。」と言った。
「ああ、そうなんですか。」と言ったら、カルロスは、彼の、濡れているのにまだカールしている髪を掻き、「よろしく。」と言って手を伸ばしてきたので、握手をした。
素直にいい人だと思った。笑顔が気持ちよかった。サッカー選手でいうとラモスというか、そんな感じの笑顔だった。
結局カルロスとは、握手を交わした後に、俺のほうから「それじゃあ、また明日にでも会いましょう。」と言って別れたので、部屋へ戻ることにした。
既に辺りは真っ暗で、薄暗い電灯が、不気味に廊下を照らしていた。俺はどちらかと言えば幽霊は信じるほうなので、なんとなく早足だったはずだ。
部屋に向かう前にトイレがあったので、そこで用を足したのだが、さらに薄暗くなった電灯や、便器の後ろにある外に繋がる木製の格子が、異様な恐怖感を漂わせていた。
さっと用を足して、外に出ると、何やら異臭のような物を感じた。トイレかと思ったが、トイレは先ほど入った時には異臭は無かったので、出てから気づくというのはまずあり得なかった。
とにかく、鼻をつく異臭がするのでさっさと部屋に戻ることにした。

しかし、その異臭は、自分の部屋へと近づくにつれて酷くなっていった。

最近嗅いだことのある嫌な臭気だった。風呂に入った後に、そんなものを嗅ぐなんて、最悪だった。
しかも、その臭気の根源が、自分の寝ようとしている部屋からなのだから、俺は、何というか、ショック以上に、悲しみのほうが大きかった。

戸を少しずらすと、中が安易に確認できた。案の定、山岡だ。山岡が青い布団の上で、女性とヤっていた。
その上二人は糞まみれであった。女性は、騎乗位の姿勢で突かれていて、山岡は、彼女の胸についた糞を指でなじりとり、口に運んで、「うん、やっぱりどことなく海の味だな。なんというか、切ない味がするよ。」と言っていた。
うんこの味なんて考えたことも無いが、まず海の風味なんかしないだろうと、そう思った。しかしどうするべきか。部屋に入れない。
というか、俺にはあのようなうんこ臭い部屋はゴメンだった。後で説教をしようと思い、その後俺は風呂場へ戻った。
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風呂場へ行くと、誰かが入ってる形跡は無かった。カルロスは風呂場から出て行った後だったようだ。
俺はとりあえずリラックスしようと、服を脱ぎ、浴場への戸を開ける。相変わらず誰もいないので、俺はかけ湯をし、浴槽に浸かった。

どう山岡を説教するかを考えていると、戸の開く音がした。足音がペタペタと聞こえ、蛇口から水の出る音が聞こえた。
そしてその後すぐ、「ヨイショーッ!」と威勢のいい声を上げて、また足音が鳴り出した。

そして、浴場にその男が入ってきた。男は、「ウッス。」と言ってきたので、俺は、「どうも。」と返した。
男は、異様な巨漢だった。肥満であり、恐らく体重は150くらいあっても不自然では無いと思った。
そして、男が腰を降ろした後、案の定、浴槽から勢いよくお湯があふれ出した。

何を考えてるのかイマイチわかりづらい顔をしていた男だった。髪は短髪で、口周りにヒゲがある。そのせいか口は小さく見えて、頬の肉は肥満だからか膨らんでいた。しいていうなら、太った佐々木健介とでも言うところだろうか。
醜悪というか、とにかく気持ちが悪かった。何か、心の底から侮蔑の気持ちが沸いてくるような、そんな気持ちだった。
俺はどこかこの男に既視感、いわゆるデジャヴというものを感じていた。そう考えていると、「新入りか?」と男が言ってきた。

「そうです。」と俺が返すと、男は、「俺は熊本。ネットでは淫乱セオドアで有名だな。」と言った。
その瞬間、俺は全てを思い出した。ネットで有名な淫乱セオドアと言えば、検索してはいけない言葉で有名な、ソレである。
ゲイ向けのAVか何かで、とにかくトラウマだった。思い出した瞬間、俺は鳥肌が立つのを感じた。

「俺は金打です、すいません、長い間風呂に入っていたのでのぼせたんで出ますね。」と言った。
もちろん嘘だったが、とにかくあの場から去りたかった。俺が立ち上がると、「おい、お前ちんこでかいな。見せろよ。」と言ったが、「すいません、立ちくらみが・・・」と言って、なんとかごまかして、逃げるように風呂から出た。
逃げるように風呂から出て、部屋に向かうと、相変わらず異臭がした。
部屋を隙間から見ると、案の定、まだ山岡と女はやっていた。女は茶髪なのか、それともうんこで茶色く見えるだけなのか、解らなかった。それくらいにうんこまみれだった。
また山岡がうんこを舐める。「やっぱり有明海だよ。」そう言って女を激しく突き上げた。こいつは駄目だな。と、心の底からそう思った。

しかし、ここで問題が生じた。ここで部屋に入り、情事を中断させるべきでは無いと、俺は感じていた。山岡のことだから、「お前も混ざれよ。」と言うだろうと思っていたからだ。
俺にスカトロの趣味は無いし、一日三度の風呂は嫌だった。それでは風呂に戻るか。と、そういうわけにもいかない。一日三度の風呂は嫌だし、なにより淫乱セオドアには一生会いたくない。
同じ屋根の下に居る時点で最悪な気分だった。結局、俺は行き場を失っていた。

だからとりあえず外に出た。入り口には既に老婆の姿は無く、戸も開いたままだった。防犯とかも気にはなったが、こんな離れ里をわざわざ狙う泥棒は居ないだろう。と、納得して外に出た。

外に出て、辺りを散策すると、旅館からの明かりにうっすらと照らされた寝転ぶのにちょうどよさそうな岩を見つけた。
だから、俺はそこへ寝転び、空を見上げた。東京から20km離れた土地の空は、満点の星空で、感動のようなものを覚えた。
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いつの間にか、朝が来ていた。星を見たまま寝てしまっていたようだ。
朝といっても、早朝というか、空がうっすらと青くなっているだけで、太陽はまだ出ていなかった。

俺はとりあえず入り口に行き、戸を開ける。老婆はまだ居ない。部屋に戻ると、山岡は赤い布団で寝ていた。
異臭は無くなっていた。俺は、やっと部屋で寝れると思いつつ布団をめくると、一枚の紙が落ちていた。
紙には、「部屋でスカトロしてごめん。掃除しといたから許して。山岡。」と書いてあった。
返事を書く気力も無く、俺はすぐに布団に潜った。掃除は許すが、次にやったら絶対に許さないと言いつけておくことにして、目を閉じた。
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