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第四話 ソーサラーとウィザードの違いについて十文字で

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「いつまでも自分の見たいチャンネルが見られると思うなよ、愚民共が!」
 チャンネルを勝手に変えた罪(おそらく)に感染した、五十代のおばさんは屋根の上で何度もポーズを変えながら叫んだ。やたらめっぽうにShoutするので、家から出てきた周辺住民のかたがたが何事かと屋根を見上げている。
「すべてのチャンネル権は、この我にあり!」
 これがまた、普段絶対に叫んだりしなさそうな、大人しそうなおばさんのヒステリックな叫びなものだから、見てはいけないものをみてしまったようで居心地が悪く、そしてやたらと耳についてうるさい。
 僕はあのおばさんがいる屋根の上までのぼって、そして安全かつスマートに罪を地獄送りにする、イケメン前とした自分のイメージが全然湧かなかったので、とりあえず天国の到着を待っていた。
 待っているあいだ、妹へメールを送信した。
『さっきのは勘違いだったわ。ごめんね』
 このメールが一体何なのかは、あとあと差し込まれるであろう回想シーンで語られるはずなので、ここでは省かせていただこう。
 送信が完了したと同時に、私服かと思いきやまだ学生服のままの天国が降って来た。ズン、という音とともに地面にクレーターの赤ちゃんが出来上がった。この人空から降って来たわよ、とか周りが騒ぎだしたが、あとあとこの辺の記憶は消えるのだろうから問題ないだろう。
「あれか」
 おばさんを見上げながら、天国は言った。僕が「そう、あれ」と答えるよりも早く、天国は腰にくくりつけていた赤いジャージ上をほどいた。
「え、それでどうすんの」
 僕の質問には答えずに、天国は赤ジャージをその場でパンと広げた。
 奇怪なことに、赤ジャージは、パン、で最も広がった状態のまま、凍り付いたように固まった。天国はT字に広がった片そでを持って、バッターがバットを構えるように、赤ジャージを構えた。
 何が起ころうとしているのだ。僕は普通に天国に屋根の上へ担ぎあげて貰おうかな、と思っていただけなのだが、どうやら天国の脳内で展開されている罪の地獄送りプロセスはまるで異なるものらしい。
「そこから動くな」
 低い声でそう指示されて、僕は体を硬直させ息を止めた。息まで止める必要が無いのは分かっていたのだけれども、瞬間的にそうしないといけないような迫力があった。
 スウィングとともに、赤ジャージが放られた。
 ジャージは片そでを中心にして、綺麗に回転しながらおばさんの立っているところからほんの気持ち下にぶつかり……、
「えええ……」
 そこを切断して、屋根の向こう側へ突き抜けた。
 そして回転したまま、ブーメランのように天国の手元へと戻って来た。天国がキャッチすると同時に、ジャージは硬直をやめ、へなへなと、一般的なジャージがするべきベローんとダレた状態に戻った。
 おばさんはといえば、ジャージにより切断された細長い屋根の残骸に乗って、家から滑り降りだした。おばさんはギャーとかワーとか叫んでいるが、すでに動き出した足場から飛び退くことかなわず、サーファーのようにバランスをとりながら、僕の方へ向かってきた。
 奇跡のように、庭に生えた木で角度を変え、塀を支えにして、切り取られた屋根の残骸ボードは僕の目の前に突き刺さった。
「よし、いまだ」
 屋根の残骸ボードに倒れこんでしまったおばさんを、天国は顎で指した。
「う、うん」
 僕はおばさんの足を掴んで、罪を地獄へ入れること、を許可した。紫色のオーラが体の中に吸い込まれる。今回は、このあいだのアレみたいに、最後の最後でアレなアレをアレされたりすることなく、大人しく消え去った。僕ひとあんしん!
「そのジャージ、なんなの、武器なの?」
「武器なはずがあるか、ジャージはジャージだ」
「へ、へえ」
 ジャージで家は切れないけどね。
「ん、そうだ」
 一度僕へ背を向けた天国は、振り返ると同時に僕の腹の中へ手をつっこむと、地獄の中から自分の鞄を取りだした。
「ああ、それ忘れっぱなしだったんね」
 どうやら天国は地獄の中の好きな場所に物を入れて、好きなように取り出せるらしいのだけれども――ってほとんど説明しちゃったけど、このへんもあとで回想シーンが挟まれるはずである。って、しまった。天国が赤ジャージを放り投げたあたりの、盛り上がったところで一旦回想シーンにもっていくつもりだったのに、うっかりケツまで言い終えちゃったよ。まあ、誰も気にしないよね。


―――――――――――――

 ※以下回想

 つきあっているわけではないけれども、別に嫌いだというわけでもない。だいたい好きかどうかは別に他人に言う必要はないわけだし、一緒に飯食ったり話をしたり帰ったりするくらい高校生なら普通な行為なわけで、他人が多少誤解をしようが僕には関係ないのだ。とぐだぐだと考えた結果、僕は天国をバリヤとして利用させてもらうことにした。
 何から身を守るためのバリヤかは読者の想像にお任せする。
 そういうわけで、所属委員会の決まっていなかった天国を、ポスター管理委員にゴリ押し推薦した。
「金鍔君、このポスター天国さんと一緒に貼ってきて」
 前回の他人の秘密をばらした罪(maybe)の一件から一週間経った放課後、先輩から大量のポスターを渡された。
『超越能力開発同好会Wizard 部員募集中 三階空き教室七で活動中』
 それは半年後には存在していないであろう同好会のポスターだった。同好会という事は、部員数が三~四人ということだ。うちの学校では同好会は半年感しか存続できず、部活に昇格できなければ滅んでしまうという、弱者に厳しいルールが敷かれているので、こんなわけのわからない同好会は、部員を増やせず虚空の彼方へ消えていくことだろう。
 まあ、この部活の生死はどうでもいいんだ。僕はすべきことをするだけである。
「そんじゃあ半分、下の階よろしく」
 どこに貼ればいいとか、何を剥がせばいいとかの基本的なことは既に何度か見回りをして説明していたので、貼るだけなら別々でもいいだろうと、半分を天国へ手渡した。
「ふむ」
 天国は片手でポスターを受け取ると、流れるように自分の鞄を僕の腹に押し付けた。その鞄はするすると腹の中に入っていく。
「え、それ、捨てんの?」
 僕は普段、罪を地獄の中へ放逐する以外では、腹の中の地獄を、缶ゴミとか紙ゴミとか?み終わったガムとかを捨てるとかいった用途として――ゴミ箱として使っていたので、当然天国も同じようなつもりで使ったのだと思ったのだ。
「なんで私が鞄を捨てなきゃならないんだ。だいたい、鞄を捨てた私は、明日から学校で何をすればいいのだ?」
 いや、あなた、学校来ても椅子に座って時間つぶして、あとは昼飯食ってるだけだよね。という正論はそのへんに置いといて、
「だって、入れたら出せないんだろ?」
「貴様であるとか、人間であればな」
「え、え、なにそれ、天国なら入れたり出したりは自由なの!?」
 女子に対して入れたら出せないだの、入れたり出したり自由、という表現はどうだろうか、と冷静に分析しだす自分が現れたので、その辺で押しつぶした。
「いかにも」
 天国はひとつ頷くと、階段を降りて行った。
 これでは僕は天国の便利な物置かなんかではないか。

 しかし、この超越能力開発同好会とは、一体何をする集まりなのだろう。
 僕は昨日潰れた非環境保護反対同好会のポスターを剥がしながら考えた。
 裏返した沢山のトランプから、スペードの5はどれかが絶対に当てられるように訓練したりとか、離れたところにある空き缶を物を使わずに倒す練習とか、スプーンを手に持っただけで曲げる特訓だとか、そいういう事をしているのだろうか。
 という僕の思考がフラグだったのか、僕は偶然三階の空き教室七の前を通りかかった。例の超越能力開発同好会Wizardの部室だ。
 のぞきこむと、四人の男女が、床とにらめっこしていた。
 床にはトランプ。
 中の一人が激しく動きだし、一枚のトランプを取り上げた。
 教室の扉越しに、叫び声が聞こえる。
「スペードの、5!」
 うわ、僕の想像があたった。僕すげえな。あのスペードの5を当てるのよりすごいんじゃないか。
「ちがったハートのキングだ……」
 Wizardの人ははずれだったらしい。ぷぷっ。
 僕が漫画のキャラのように口に手を当てて露骨にふきだしていると、突然顔を上げた女子生徒と目があった。
「あっ」
 しまった、覗き見していたのがばれた。
 ガラガラ、と扉が開かれる。
「もしかして、入部希望ですか!」
 その一言で、教室の中が一気に色めきたつ。
「え! マジで!」
「やった! さすがにポスターの効果はすごいな!」
「これで部活に昇格だ!」
 一瞬この気まずい展開に流されそうになったが、僕は踏みとどまった。
「いえ、ポスター管理委員として、掲示するに値する同好会であるのかの確認をしていました」
 僕は必死に真面目そうで頭がよさそうでカッコよさそうな顔、通称「キリッ」をやりながら言った。
「ああ、そう、なんですか」
 女子生徒の顔が薄暗くなる。
「ええ、そうなんです、まあ、問題なさそうなので、ポスターは掲示します」
 僕は申し訳なくなって、早口で言うとそそくさとその場を立ち去った。

 ※引き続き回想

 やっぱり覗き見してしまった以上は、一か月でも仮入部して、あの同好会の生存期間を延ばしてあげるべきだっただろうか、などと妙な責任感を感じながら、僕はセミの一生に関するテレビを眺めていた。実際は昆虫が嫌いなので画面には目もむけず、ただ音声だけを聞きながらノートパソコンでネットサーフィンをしていた。脱皮をする瞬間が神秘的らしく、そこで番組の進行がやたら遅くなる、オチにあたる脱皮完了のシーンになかなか到着しない。
 さあ脱げるのか、さあ脱げてしまうのか、とナレーターがうるさい。
「脱げ――ません!」
 どっ(大勢の笑い声)
「粘り勝ちですねえ! 三十点獲得!」
 あれ、これ何の番組だっけ。
 僕は顔をあげる。チャンネルがいつの間にか変わっていて、お笑い芸人が巨大なクレーンに服を脱がされないように粘る、みたいな企画をやっていた。
 ま、別にセミに興味があったわけじゃないし、いっか。
 今やっていたのはどうやら第一ステージだったらしく、今度は芸人が人間大砲の中にはいって、飛んだ距離を競うという、中の人の体重ですべてが決まりそうな第二ステージが始まった。ちょっと火薬多すぎでしょう! とかいってみんな大騒ぎである。こういうのって台本あんのかな、それともこのくらいの小芝居はアドリブなのかな、などと考えながら、僕は耳だけ残して再びインターネットへ戻る。
 一人目は一八メートル。
 二人目は一五メートル。
 三人目は二千四百五十三メートル。
「どええええ?! 2.453キロメートル!?」
 僕はもしや放送事故かと、そんな飛んだらさすがに死ぬだろと、ちゃぶ台を揺らしながら慌ててテレビ画面をみた。
「琵琶湖の対岸まで到達してしまいました! これは快挙です!」
 鳥人間コンテストだった。
「あ、ちょっとさ、さっきの三人目が何メートル飛んだかだけ、見せてくれない?」
 ほとんど画面をみていなかったのだから、チャンネル変えられてもしかたないよな、と思いながら、リビングにいたもう一人、妹へ向かっていった。
「見れば?」
 妹は両親から買ってもらった、僕が地獄送りにしたのと同色のDSで遊んでいた。おそらく僕が無くしたROMのセーブデータと同じ状態を復元すべく、必死に一度クリアしたメガテンをプレイしているのだろう。コントローラーは妹の目の前ではあるが、いいだろそっちのが近いんだから、変えてくれよ! と言ってつっかかるのは、DSを無限の地平線へ放逐してしまった僕にはできないことだったので、おとなしくコントローラーを取りに立ち上がった。
「別に文句じゃないけどさ、ちょっと確認だけど、今チャンネル、変えたよね?」
ただ、多少は自分の方が年上なのだという事をアピールするために、遠回しな、遠回しな、主張をした。
「はあ? 変えてないけど?」
 DSから目もあげず、妹はイライラした口調で返した。
「いやいや、じゃあ誰が変えたのさ、二回変えたでしょ、いいところでさ」
「変えてねーっつってんだろハゲが!」
 …Oh…
 妹のボルテージは僕の想像以上に上がっていた。しまった、余計なこと言うんじゃなかったと思った時には、妹はどっかの天国さんに「文字なんで書かないん?」と問うた時に並ぶ恐ろしい顔を、僕へと向けていた。
「その言い方はあれか? 私が兄貴へのあてつけでチャンネルを変えたんじゃないかと、そう言いたいわけか? お前ならそういう嫌がらせするんじゃね? みたいな事かんがえているわけか? 私がそんな安っぽい妹だと思っているわけか? 兄貴の脳みそではチャンネルを二度変える程度の嫌がらせと、全ルートコンプ図鑑コンプのセーブデータがイコールだということなのか? 笑わせるんじゃないよ!」
 僕はただ、だらしなくあんぐりと開けた口に片手を突っ込んで「あわわわ」と言っていることしかできなかった。
 妹はひとしきりわめくと、リビングから出て行った。
「おぬしも悪よのう、越後屋」
 チャンネルがまた変わった。誰もコントローラー触ってないのに。この時点で僕はなんとなくピンと来ていた。テレビが壊れてるんじゃね? という先にすべき考えを放棄して、そっちの答えに到達していた。あとあと考えてみると、この思考パターンは後々何らかの問題を引き起こす予感がする。
 そこで家の電話が鳴った。相手は天国である。
「罪の――罪の匂いがする」
 うん、それはいいけど、なんで家の電話番号知ってるん?

―――――――――――――

 ※回想おわり

「そのジャージ、改めて見ると天国が着るには小さいんじゃね?」
 改めて考えると中途半端なところで回想に入ってしまった。
「これは姉さんのだからな」
 天国はそういって、ジャージを広げた。よく見ると胸のところに「カスミ」とサインペンで書かれている。
「へえ、天国って姉ちゃんがいるんだ」さらによくよく、改めてジャージをみると、それはもう小さいも小さい、小学一年か二年生用ではないかと思われるサイズだった。「姉ちゃんどんだけちっちゃいの……」
「うむ、姉さんは、とても小さい。私たちの中で、一番小さいのだ」
「天国って何人兄妹なの?」
「七人だが」
「うわ、ずいぶんいるんだね。それで、そのカスミさんが、一番上みたいな?」
「その通りだ、カスミ姉さんが、一番年長で、一番偉くて、一番やさしいのだ」
 天国はすごく自然に、流れるように、すこし頬を染めながら、とても楽しそうに笑った。
 その時僕は並列した二つの思考を持って、天国の笑みを見つめていた。

 一. あ、天国さんって普通に笑うと結構かわいいんだな。普段は仏頂面だし、一度笑った時も邪悪なニヤリだったから全然気づかなかったけど。
 
 二. あ、天国さんってシスコンなんだな。頬染まりすぎでしょう。

「人の顔をじろじろと見ないでほしい」
 天国の表情は一転し、鋭い眼光で僕を睨みつけた。
「はいっ、もうしわけありませんっ」

―――――――――――――

 天国と別れた僕は、メールごときでは妹の核爆発してしまった怒りを冷ませないだろうと、お詫びの品を買いに近所のコンビニへ入った。
「あれ? あなた、ポスター管理委員の……」
 一番高いティラミスはさすがに財布的にきびしいけど、しかしこういうのを買ってこそ誠意が見せられるというものだろうか、などと考えていると、突然声をかけられた。
「う」
 相手は微妙にきまずい、超越能力開発同好会Wizardの部員の、女子生徒だった。
「あっ、同好会に勧誘しようなんて思ってないから、安心して」
 僕の表情はそうとう分かりやすかったらしく、彼女は爽やかに笑いながら言った。
「そうでしたか」僕は敬語で返しながら、相手が一年生とか二年生だったら、敬語である必要なかったな、と思った。「えっと、何年何組のどなた?」そうして学年を聞き出すついでに名前も聞こうと欲張った僕のセリフは、悪事を働いた生徒を問い詰める教頭先生みたいなものになってしまった。
「三年四組の、柴崎香です」
 よし、敬語つかっといてよかった。
「なるほどですね。僕は二年三組の金鍔収ですね」
 僕はティラミスを取ろうかケーキを取ろうかロールケーキを取ろうかどうしようかとのばしっぱなしだった手を引っ込めるために、結局一番近いところにあったティラミスを籠に投入した。
「近所に同じ高校の子がいたなんて、知らなかったなあ」
 聞けば柴崎先輩は近所も近所で、我が家と五十メートルも離れていないところに住んでいるらしかった。さらに話していくと、どうやら彼女があの同好会の部長だということで、もしかしたら創設者である柴崎先輩だけは超能力なんかが使えるんではなかろうか、と僕は尋ねた。
「ううん、使えないよ」
「ああ、そうなんですか」
 そうそうぽこじゃかと能力者に出てこられては、折角手に入った能力者というアイデンティティが台無しなので、これには僕ひとあんしん。
「あの同好会は、そういう超能力みたいなものを開発したいなあ、誰か覚醒しないかなあ、みたいな集まりだからね。超能力者が居たらいいなあ――みたいな?」
 思ったよりも他人頼りな、大分ブン投げ感満載のコンセプトの元に作られた同好会らしい。
「超能力者が居てほしいんですか?」
 じゃーん! 僕は体の中に地獄があるんです! と、脳内でお披露目してみた。
「そうだね、居てほしいな。夢があるじゃん? 超能力者ってさ」
「ああ、まあそうですね」
 じゃーん!(略)
「あっ、流れ星!」
 柴崎先輩が勢いよく空を指さした。
 人工的な光で照らされ放題の、普段星なんかほとんど見えない夜空を、ひと目でそれと分かる明るく輝く流れ星が、ゆっくりと落ちていく。
「なんだかスローですね、あれ」
 あれではなんだか、地球に戻って来た宇宙船のようである。まあ、どっちにしたって流れ星なんだけど。
 ぼんやりとそう考えていた僕の隣で、柴崎先輩は目を閉じて何かを念じていた。ああそうか、流れ星といえばお願いごとか。よし、僕も何か願わねば! と頭からお願い事をひねりだそうとしたが、さすがのゆっくり流れ星も、今さら考えだした僕の願いは待てないらしく、その輝きを失ってしまっていた。
「ゆっくりだった? それなら、ちゃんと願いごと叶うかな」
「何をお願いしたんですか」
「超能力者が見つかりますように、ってね」
 それならもう叶ってますよ、ってね。ああ、まずいまずい、あんまりこの「おいらっち能力者やねんけどー」みたいな裏人格みたいな真似を続けていると、いつかうっかり口に出してしまいそうだから、いい加減やめておこう。
「金鍔君は?」
「お願いしそびれました」
「えー、もったいない!」
 などと話していると、我が家が見えてきたので、僕は柴崎先輩へ別れを告げた。
「それじゃあ、もしよかったら、超越能力開発同好会に入ってみて! あ、結局勧誘しちゃった、へへ。じゃあね!」
 僕は去っていく柴崎先輩の背中へ、もう僕は開発済みなので、その同好会に参加することはかなわないのですよ(キリッ)、と念じたのだった。
8, 7

九笠 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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