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遺書。

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『今日はいつもより気分がいいから、あなたにおてがみを書こうと思います。お母さんは今、へいさびょうとうという所にいます。いつ来たのか、あんまり覚えていないけれど、お母さんは心がかぜをひいてしまったから、なおるまでここにいなくちゃいけないんだって。でもね、なんとなく、お母さんはもうなおらないのかなって思います。
 ここのおふとんは、ちょっと固いけれど、たのしいゆめが見られます。かわりにまどから見えるけしきはとってもたいくつ。でもそのおかげで、あたらしいおはなしをたくさん作れました。いつかお父さんといっしょにきいてね。

 あなたのまいにちはどうかな。お父さんと二人きりでさびしくないか、すこししんぱい。お父さんはおりょうりもじょうずだから、きっとだいじょうぶかな。ちゃんとお手伝いしてね。ああ、でもあなたはいい子だから、ちゃんとお手伝いしているか。いつもありがとう。
 おじいちゃんとおばあちゃんはまいにちおみまいに来てくれるけれど、あなたとお父さんがいなくてお母さんはさみしいです。何回かこっそりかえろうとしたのだけれど、先生やおじいちゃん、おばあちゃんにおこられちゃった。お母さん足がおそいから、すぐつかまっちゃうの。かくれんぼもとくいじゃないの。ざんねんです。

 おてがみって、たくさん考えるから、お母さんなんだかあたまがいたくなっちゃった。だめですね。あしたは、お母さんのおうちにおとまりです。自分のおうちにおとまりというのは、なんだかおかしいけれど、先生がいいよって。でもきっと、それでおしまい。
 お母さんはまいにち、いろんなことを思いだしたりわすれたりします。さいきん、どうしてかはわすれてしまったけれど、もうあなたやお父さんに会えないことを思いだしました。だからお母さんは、先にとおくへいってまつことにしました。先にいっちゃったら、お母さんまたおこられちゃうかな。大きくなったら、お母さんがどこにいったかきっとわかると思います。
 あんまりいいお母さんじゃなくて、ごめんね。このおてがみがちゃんととどくことをいのっています。お母さんはあなたやお父さんを、たくさんたくさんあいしていました。おじいちゃんもおばあちゃんもだいすきです。とおくへいった先で、またあなたやお父さんや、みんなに会えますように。おやすみなさい』
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