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序章

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  俺がその子を見かけるようになったのは、蝉の鳴き声が聞こえ始めた頃のことだった。
 腰まで伸ばした白い髪と赤い瞳が目を惹く、十歳位の小柄な少女。彼女はいつも同じ姿で、髪と同じ真っ白なワンピースとスニーカーを身に着けていた。
 最初は、その独特な容姿からどこか他所の国の子だろうと思っていた。しかし、どうやらそういうわけではないらしいということを、俺は彼女と出会って三週間目にしてようやく気付いた所である。
 彼女は、俺がバイトをしているコンビニの店先でいつも同じ姿勢で佇んでいた。
 それは、自動ドアの横に用途別に置かれた三つの大きなゴミ箱の横。彼女はそこで、店に背を向けた姿勢でじっと正面を見据えていたのである。
 最初に見かけたときにはその容貌に驚きに近い感情を抱いたものだが、そんな彼女の姿を見かける回数を重ねていくうちに、その驚きはいつしか好奇心へと変わっていった。
 ――季節は夏。
 アルバイト先であるコンビニの店内は、冷房がガンガンに効いた天国のような場所だった。
 外の気温といえば、ただじっとしているだけで滝のように汗が噴出すといったうだるような暑さ。三十分も外に立っていれば、熱中症でぶっ倒れかねないと思うほどの熱が充満しているといった具合である。
 そんな中、コンビニの店先には毎日のようにその白の少女がいた。
 いったい何の為に――そして、いつからそこにいるのか。彼女はふと視線を移すとそこにいて、いつの間にかその場所からいなくなっているというのが毎回の出来事。
 もしかしたら、ここを待ち合わせ場所にして親が迎えに来るのを待っているのかもしれない……そんな風に思い、レジに立ちながら店の外を眺めていたこともある。
 ただ、これまでにもう何日もその姿を見続けているというのに、その去り際の光景を目の当たりにすることは、これまでに一度もなかった。
 外は暑いのだから、中で涼んでいればいいのに――店内で何を買うそぶりを見せるでもなく雑誌を立ち読みしているサラリーマンを見ていると、店員らしからぬそんな気持ちが芽生えてくる。
 しかし、彼女は今まで一度たりとも店の中に足を踏み入れることはなかった。
 そんな不可思議さに、俺はいつしか強い好奇心を抱くようになっていた。
 ……彼女はいったい何者なのだろうか。どうしていつも同じ場所に佇んでいるのだろうか。
 こうして好奇心を膨らませていった俺は、彼女を目撃してから二週間が経過したその日、ついにその真相を確かめる為の行動を取る決意をしたのである。
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