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voL.12「筆者、大会に行く~中編~」

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「でははじめてください」
 その一言が合図となってプレイヤーたちはいっせいにプレイを開始した。となりの席のプレイヤーたちが「よろしくおねがいします」と言いあっているのをみて筆者たちもそれにならいながらおたがいのデッキを3つほどの山にわけてカットし、それから手札を7枚引いた。両者ともマリガンはなしで先攻をとった筆者からプレイをはじめる。
「《沼(6th)》をセットして《強迫(US)》を撃ちます」
 対戦相手がイヤな顔をしながら手札を公開すると《森(6th)》と緑のカード群がならんでいた。筆者は内心ほくそ笑みながら《怨恨(UL)》を落とすとエンドを告げた。対戦相手もライブラリーからカードを引くと《森(6th)》セットから《飛びかかるジャガー(US)》をプレイする。だが《怨恨(UL)》を落としていたので筆者はそれほどダメージをうけることなく《貪欲なるネズミ(UD)》《ボトルのノーム(TE)》《火薬樽(UD)》で序盤をしのぎながら着実にアドバンテージを重ねていった。
 対戦相手のデッキは当時ユーロスターよりはやかった「クレイドル・ストンピィ」にくらべるとやや遅めの中速ビートダウンという感じで、「黒コントロール」からすれば非常にやりやすい相手であった。《子守り(US)》は重いエコー・コストがテンポを致命的に殺いでいたし、トランプルを持たない《皇帝クロコダイル(UD)》は《怨恨(UL)》さえなければたいした脅威ではなかった。《ウェザーシード・ツリーフォーク(UL)》が多少やっかいではあったが、《急速な衰微(UD)》で対処することができた。そして《沼(6th)》がそろったところで《死体のダンス(TE)》がバイバックでまわりだせばもう緑単に反撃する手だてはなく、筆者にとって初大会となる初ゲームは割りとあっさり勝利することができた。「つよいですねー」と墓地に山積したクリーチャーたちをデッキにもどしながら苦笑ぎみに言ってきた対戦相手に「まー相性が、って感じですし」と場にならんだ《沼(6th)》をデッキに差しこみながら筆者も笑ってかえした。べつに油断していたわけではないが、正直このマッチは負ける気がしなかった。それほど筆者に有利な組みあわせであったのだ。
 サイドボード後はさらにそれに拍車をかけた。《ファイレクシアの抹殺者(UD)》《呆然(6th)》などのかわりに大量の除去カードをつっこんだ筆者はジョン・ポールもあきれてしまうほどの大虐殺をおこなった。《恐怖(6th)》《悪魔の布告(TE)》でエコー後の《飛びかかるジャガー(US)》《子守り(US)》を始末してテンポと《怨恨(UL)》をうばい、《撲滅(UD)》で《ウェザーシード・ツリーフォーク(UL)》を永遠に葬り、《非業の死(TE)》で墓地を順調に肥やした。さらに筆者は《吸血の教示者(6th)》から2枚目の《非業の死(TE)》をサーチして万全を期し、《ファイレクシアの疫病王(UL)》をおどらせながら《呪われた巻物(TE)》でライフをじわじわと削っていった。
「投了です」対戦相手がそう宣言すると筆者はひとつ息をつきながら手札を置いた。内容こそ楽勝といってよかったが、やはり勝利条件を満たすまで安心はできない。だれにでも「ドーハの悲劇」は起こりうるのだ。
 対戦が終わると勝敗表を主催者に提出した筆者たちは雑談しながらデッキをみせあうなどしてのこった時間を消化した。半数近くのプレイヤーたちがまだ対戦中だったので筆者たちは声をおさえながら「やっぱ黒エグいっすわー」「でも赤には勝てないんですよー」「こっちは赤にはつよいんですけどねー」「うまくできてますよねー」「ですよねー」「でも青はクソだよねー」「ですねー」そして対戦相手は「これ使ってみたかったんですけどねー」と残念そうにデッキのなかから《樫の力(UL)》のフォイルをとりだしてみせた。きっとどこかに筆者の知らないピカピカのリスの巣が存在するのだろう。
「ではすべての対戦が終わったので一回戦を終了します。つぎの組みあわせが決まるまでロビーでおまちください」
 筆者は「ありがとうございました」と礼を言うと席を立った。すると「赤にあたらないといいですね。つぎもがんばってください」と対戦相手が筆者の勝利を祈ってくれた。
 ロビーで春日くんたちと合流するとわれわれはたがいの戦績を報告しあった。安定のパーミッションらしく春日くんもみごと勝利をおさめ、土地のそろわなかった黒沢くんは残念ながら負けてしまった。決勝で筆者か春日くんをたおすと豪語していた黒沢くんにとってこの敗北は《誤算(UL)》であったが、「私はレフトの守りのために生まれたが、役畜は破壊のために生まれてきた」といまにも-1/-1カウンターをとばしそうなするどい表情で雪辱を誓った。
 さて、大会は2回戦にすすむわけだが筆者はそれ以降に対戦したデッキをおぼえていない。だが赤とあたらなかったことだけはたしかだ。なぜなら筆者はなんなく2回戦も勝ち、つづく3回戦もなんとか勝利で突破することができたからだ。そう、筆者はこの上なく絶好調であったのだ。けっきょく筆者は3-0、春日くんは2-1とまずまず、黒沢くんは0-3といまだ初日のでないまま前半戦を終えた。そこへ「やあ、調子はどうだい?」とふたたびモルツがわれわれの様子をうかがいにやってきた。すでに土がついて優勝圏内から離脱したモルツに筆者が全勝で午前中をパスしたことを伝えると「すげーじゃん。午後にあと2勝すれば入賞できるかもよ」と肩をたたきながら教えてくれた。「オレはもうムリだけどがんばってくれ」と筆者をねぎらうとモルツはすたすたと去っていった。
 お昼休憩になるとロビーは緊張の糸が切れたようにさわがしくなり、外で買ってきたパンや持参した弁当を食べながらプレイヤーたちは前半戦のたたかいぶりやきのうの神八剣伝の感想などを話していた。われわれも大学のすぐそばにあるコンビニで牛カルビ弁当やブリトーなどを購入し、ロビーにもどってつかの間の休息をすごした。だが午後のことを考えると《熱病のけいれん(TE)》に苛まれる《司令官グレヴェン・イル=ヴェク(TE)》のようにからだが引きつる筆者は太陽のサプリを一気に飲みくだして熱が引くのをまった。そのむかいで春日くんと黒沢くんはミスティオを飲みかわしながらラースの環境問題について談論していた。全勝の2文字から解放されたほかのプレイヤーたちも缶コーヒーを片手に「ある大会で《ミシュラの戦争機械(4th)》を使っているプレイヤーがいたんだ。もちろん全敗の卓だ。それまで全勝していたオレはだれもがそうするように〝どうして《マスティコア(UD)》を使わないんだ?〟ってきいたんだ。するとそいつはなんてこたえたと思う?」「ウーン、そりゃむずかしい問題だ。マスティを差しおいてあんなガラクタを使う理由なんて想像もつかない」「《無のロッド(WL)》が流行っていたとか?」「《Psionic Blast(UN)》を警戒していたんじゃないか? でもそれならマスティでも問題ないな……」「ジャッジのなかにキライなやつがいたんだろう」「そのプレイヤーはエイミー・ウィーバーだったのかもしれない」「みんないい線いっているけど正解はこうさ――〝手札をうっかり捨て忘れても死なないからだよ〟」「なるほど!!」と軽快なスラン・ジョークをとばしあっていた。
「では午後の部をはじめまーす! ジュースなどの飲食物の持ちこみはご遠慮くださーい!」
 スイスドローなので上位の卓から呼ばれ、筆者は3人のなかでいちばん最初に会場入りした。先の3戦よりさらに前のほうの卓にすわった筆者は《ラースのスターク(TE)》のようにデッキを妖艶にぎらつかせる対戦相手と対峙しながら汗ばむ手をTシャツのすそでぬぐった。狡猾な笑みを浮かべながら「筆者、私だよ」と手を差しだしてきた対戦相手に、しかし筆者は「やつをたおせ」というスレマーの言葉にしたがってコインを高くほうり投げた――(後編につづく)
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