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三話

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 そわそわ……どきどき……おろおろ。
「あら? 美穂ちゃんどうしたの? 落ち着かないみたいだけど……」
「あ、店長……いえ、その今日は普通の格好だなと思いまして」
 今までのノリを考えると、また変な格好をさせられるんじゃないかと思ってたんだよね。
 それなのに今のところは私の自前の服装だ。
「美穂ちゃんは、コスプレがしたかったのかしら?」
「そんなわけないじゃないですか!」
 私個人としては、普通の格好がいいんです! もうあんな変な格好はしたくないんです!
 それなのに――
「まぁ、コスプレした方がお金貰えるからね」
「そうなんですけど……」
 まぁ、それはそれで思うところがあるんだけど、今の私の気分は――
「あははっ♪ 美穂ちゃんは今、物足りないって思ってるんでしょ?」
「うぐ……っ」
 確かにそうなのである。あんな変な格好……ちょっぴりエッチな格好なんてしたくない
のに、普通の格好のままがいいのに何でこんな気持ちに。
「それはきっと彼等のせいね」
「彼等……?」
「そう。我が喫茶店のお客様である彼等の視姦……いえ、彼等の舐めるような眼差し、
そして犯されそうな吐息。今すぐにでも妊娠させられそうなオーラ。それらを放って
いる彼等のおかげよ♪」
「色々と言い直せてませんて」
 視姦に犯すに妊娠って、どれも同じレベルの言葉ですよね。つまり彼等は生粋の犯罪予備軍
ってことなんですよね!?
「あれじゃないかしら?『なんて気持ちの悪い視線……でも感じちゃうの悔しい』ビクンビクン、
みたいな?」
「それだけはないです」
 私まで変態キャラにしないでください。私はただ純粋に――
「もっと際どいコスプレがしたいのよね」
「だから違いますって!」
 何で私がコスプレを望んでいるような感じにしているんですか! 私はお金は欲しい
ですけど、別にコスプレがしたいわけじゃないんですからね!
 しかも、勝手に私のモノローグに入ってくるし、この人はエスパーなの!?
「別にエスパーってわけじゃないわよ。美穂ちゃんの表情は読みやすいだけだから」
「……私ってそんなに分かり易い顔してます?」
「ええ。今すぐにでもコスプレをしたいって顔をしてるわ」
「全然読みきれてないですからね」
 私がコスプレをしたいとか思うなんて一生ないですから。そんなこと思うくらいなら、
普通に喫茶店の仕事を覚えたいって思うから。
「あらら。でも私が着替えてって言ったら美穂ちゃんは着替えないといけないのよ?」
「…………それは理解してます。契約ですからね」
 知らずに契約させられてたけど、してしまった以上は従うしかない。
 それに給料も衣装に応じて上乗せしてくれるし……
「うんうん、美穂ちゃんはいい娘ね~♪」
「ちょっ、頭を撫でないで下さいよ!」
「うふふっ♪ ほんとに可愛いわね~♪ こんなに可愛いと着せ替えるのが楽しみだわ」
「……はぁ。出来るだけ普通な感じのやつにして下さいね」
 前回のようなスクール水着は勘弁して欲しい。あれはさすがにやりすぎだと思うから。
「それは断言出来ないわね。お客様の要望もあるだろうし、何よりそれだと私が楽しくないじゃない!」
 堂々と言い切る店長。ここまで堂々と言われると逆に清々しい。
「そんなわけだから覚悟しててね?」
「…………はい」
 はぁ、そろそろ腹を括るしかないかもしれない。これは仕事だから――仕事として割り切るしかない。
 そう! 仕事だから恥ずかしいとか関係ないわよ、ね?
3

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