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中学のときに書いたの(手直し)(中篇) 05/03

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 何もない日常。いいがげん見飽きた景色。吐きそうになるくらい甘ったるい平和。
「暑い」
 季節は夏。
 太陽は俺を溶かそうとせっせと夏を送り続け、アスファルトはその熱を吸収して熱くなっていく。
「今なら三輪車に当たっても死にそうな気がする」
 頬を伝う汗。
 拭うのはもうあきらめた。
 何もない曲がり角。
 いつもの曲がり角。
 俺はただいつものように退屈な通学路を歩ていた。
「ちょっとあなた~あぶな…」
 注意力が暑さの中で散漫していたのだろう俺はそれにまったく気づくことができなかった。
「ぁ?」
 間抜けな声を上げて確認しようとするがもう遅い。
 それはすでに向こうの方からの俺に向かって突進してきている。
「死んだ」
 本当にそう思った。
 なぜならそれと言うのは自転車で、三輪車で死ねるだろう俺には到底耐えられる代物ではなさそうだったからだ。
「ててて……」
 腰をさする。
 なんだ案外丈夫だな俺。
 正直なにが起こったかよく把握できていないがとりあえず俺は生きているみたいだ。
 俺の代わりのない退屈な日常にちょっとした非日常が舞い込んだ。
 まぁ、自転車に引き飛ばされただけど。
「ちょっとあんたどこ見てんのよ!!」
 何もせずにただずんでいたが何者かの声でふと我に返る。
 考えてみれば事故というのは加害者と被害者がいないと成立しないわけで、この場合は俺が被害者になるわけだから加害者がどこかにいるはずだ。
 加害者といってもこっちがボーっとしていたのが悪いところもあるし一応怪我がないかぐらいは聞いておかなくてはならないだろう。
 そう決心を決めて回り見るとそこには俺を引き飛ばした加害者の姿が……。
「あれ?」
 不思議なことにどこを見たってそんな奴は存在しなかった。
「どこにいったんだ?」
 まさか俺は暑さにやられて幻覚でも見ていると言うのか?
「こっちよ馬鹿!」
 ふと視線を下げるとそこには俺の肩よりも少し小さいおさげ髪がひょこひょこ動いていた。
 どうやらこの子が加害者らしい。
「怪我はなかったかい、嬢ちゃん?」
 なんて俺は優しいんだろうか、自転車に跳ね飛ばされたと言うのに引き飛ばした子を心配してあげているなんて。
「だれが嬢ちゃんだって?」
 なぜか目の前の少女はものすごく怒っている。
 落ち着け俺、何かまずいことをしただろうか?
 よし確認しよう。
 まず①俺は通学路を歩いていきなり跳ね飛ばされた。
 そして②俺は引き飛ばして犯人を見つけても身を案じてやっている。
 最後に③俺は何もやってない!!
「よし偉いぞ俺。何もしてないじゃないか!」
 おもむろにガッツポーズをして叫ぶ。
「え?」
 しまった……思ったことが口に出てしまったようだ。
 思いっきり変な目で見られている。
「とにかく、あんた、ぶつかっておきながら謝罪の一言もないなんてどういうことよ」
 このちびっ子は何を言っているんだ?
 そりゃ俺にも多少の責任があるとはいえ、ぶつかってきたのは自分の方だろうに……。
「すまなか……ってなぜだ」
 華麗にノリツッコミをする。
 流石は関西人。関西人の血なんて流れてないけど。 
「なぜってあなたが自転車に当たってきたんじゃない」
 なんてことを言うんだこの子は?
 俺がこの子の自転車にタックルを仕掛けに行ったとでも言うのか?
「あんた?名前は?」
 唐突に目の前のおさげが聞いてくる。
「教える義理はないぞ」
 いきなり名前を聞かれても答える義務はないのは当たり前だ。
「そう?じゃあポチでいいわね」
「ポ……ポチィ!?」
 ポチって言ったらよくある犬の名前じゃないか。
「ポチ?あんたも愛嬌学院の制服を着ているみたいだけど何年生?」
 あいかわらずおさげは高慢な態度だ。 
「ポチポチ言うな俺の名前は緒方幸一だ」
 流石にいつまでも犬扱いされるのも癪なので名前を名乗ってやる。
「名前なんてどうでもいいことよ。ポチ、さっさと質問に答えてよ」
 この女だまっていれば好き勝手に言いやがって。せっかく名前を教えてやったのに無視だと?
「さっさと答えなさいよポチ」
 そう言えばこいつ「ポチ?あんたも愛嬌学院の制服を着ているみたいだけど何年生?」って言ってたよな。
 あんた”も”愛嬌学院っていったよな?
「あんたもって……」
 よく見ればこのちびっ子おさげは、俺と同じ学校の制服を着ていらっしゃるではないか。
「お前、その年でコスプレか?」
「は?私もあなたと同じ愛嬌学院の生徒よ」
 このちびっ子はなんてことを言いやがる。
 まさかうちは中学生でも入れるのか?
「だから名前と学年を教えなさいよ」
 目の前のおさげは手を腰に当てて明らかに不機嫌そうな顔をしている。
「俺の謝罪を返せ!」
 信じられないが本人が同い年というならそうなのだろう。ならば俺も遠慮する必要性はない。
「何をいまさら言うのよ?ポチ」
 おさげもいきなりの俺の態度の豹変具合に驚いたのか腰が引けている。
「黙れこのミニマム女」
「ミ、ミニマムですって?」
 そうとう気にしていたようでかなり起こっている様子だ。
「そうだよミニマム女」
 弱点がわかれば早い。そこをつつけばいい。
「あんた?ぶつかって来ておいてせっかく許そうと思ってたのに……気が変わったわ」
 小さいくせに生意気だ。
「許すだ?もともとお前がぶつかってきたんだろうが」
 俺は怒りを爆発させて吹っかける。
「あんた、さっき謝罪したじゃない」
「だから俺の謝罪返せってんだろ」
 自分でも無理なことを言っているのは分かっているがどうにも頭が働かない。
「冗談を、一度やったことは取り消せません」
「なんだと?」
>諦めて大人しく引き下がる。

 俺は悪くない!!

「おっと選択肢選択肢……セーブセーブっと、さて今日はここらにしておくか」
 そうして俺は今まで言い争っていたミニマム女が映っていた画面を消した。
「はぁ…暇だな」
 実際問題、現実は惨い物である、俺はだたの一学生で、面白いイベントも、昔からの幼馴染とのフラグも立っていない、というか幼馴染が居ない。妹もいないし姉もいない。
 これではイベントも起こりよううが無いようで、いまだに実年齢=彼女居ない暦という素敵な経歴は消えてくれない。
「学校に行くか……」
 今日も俺はイベントも何にも無いひどい世界に旅立つ。
 何もかもが無いつまらない世界に。
「おはよう」
「おはよう」
 友達と軽く挨拶を交わして自分の席に着く。
「おはよう、おはよー、おっはっよー」
 何度も何度も俺に話しかけるんじゃねぇ。
「あぁ、おはよう」
「なんだよ、この世界が終わったみたいな顔しやがって」
「まぁそんなところだ」
 なぜか俺のクラスには女子が少ない。
 よって回りは男だらけ、イベントも起こりようが無い。
 あっちのイベントならおきそうな気もするが。
「席付けー」
 担任の声が聞こえる、まぁ座ってるから俺には関係ないが。
「起立、礼」
「「おはようございます」」
「着席」
 前で担任が今日の連絡事項を言っている。
 とくに気にするようなことは無いみたいだ。
「帰りてぇなー」
 俺の目の前ではまだ、一時間目も始まっていないのにこんな声も聞こえてくる。
 まったく同意したいね。
 そんなことを思っているうちに一時間目はスタートした。

 教室には黒板にぶつかって削られ、文字を書き出すチョークの音と、それをノートに写すために削られていく黒鉛の音だけが聞こえる。
 俺も黒板に書いてあることをノートに写していく、なんて無いいつもの作業。
 そんな作業を繰り返している間にも、前の奴は机に突っ伏して眠っていらっしゃる。
 そんなことを四回繰り返すと昼休みがやってきた。
「ぅーん……もう昼か、疲れた疲れた、めっしめっしめっしー♪」
 お前さっきまで寝てたのになんで疲れるんだよ。
「食べるか」
 それから友達とたわいのない会話を繰り返して昼の授業に移る。

 教室には黒板にぶつかって削られ、文字を書き出すチョークの音と、それをノートに写すために削られていく黒鉛の音だけが聞こえる。
 授業は退屈で、将来役に立つかわからないようなことをひたすら詰め込んでいく。何がゆとりだちくしょう。
 そして、授業も終わりしぶしぶ放課後の部活に出る。
 そう、俺はアクティブな引きこもりなのである。
「ちわー」
 先輩に挨拶をする。
 何時ものように走ったり跳ねたりして十分に疲れてから帰路に着いた。
 帰りの電車で前の前でずっとカップルがいちゃついてた。
「こんなところでよくもまぁ」
 殺そうと思った。
 いらつくカップルから逃れ、自転車無い乗り込んだ。
 夜道をいらつくカップルについて考えながら走っていたら、いきなり角から人が出てきた。
(これはフラグ発生かww)
 どうやら人とぶつかったようだ、俺にも運が回ってきたらしい。
「ってーな」
「ぇ?」
「どこ見てんだよボケが」
 相手は男だった。
「口がきけねーのかぁ?」
 今回も、もちろん相手が突っ込んできました、俺は一切悪くないです。多分。
「すいませんでした」
 面倒なので謝っておいた。
「謝ってすむと思ってん――」
 面倒だったので逃げて帰った。
 家に帰って何時ものようにPCにスイッチを入れる。
 ヴィーンという音と同時に俺のPCは立ち上がった。
「さてと…はじめますか」
 今日の朝やっていたゲームをショートカットから呼び出す。

 カリカリとパソコンがせわしなく働き、ハードディスクの読み込み音と同時にゲームは始まった。
「ロードロードっと」

>諦めて大人しく引き下がる。

 俺は悪くない!!

(今日は悪くないのにあやまらせられたからな)
 ふとついさっきの事故のことを思い出す。

 諦めて大人しく引き下がる。

>俺は悪くない!!

「黙れ、お前が悪いったらお前が悪い」
 画面の中の『俺』は選択肢を選んだ通りに行動を開始し始める。
「何をいまさら言ってるの?」
「ぶつかってきたのは明らかにお前だ、損害賠償と謝罪を要求する」
「あんた子供?」
 子供のような体系のやつにその言葉は言われたくない。
「黙れ、さっさと謝罪と損害(ry」
「五月蝿い、もういい」
 そう言うと女は去っていこうとする。
「まて、逃げるな」
「ではごきげんよう」
 追いかける俺だったが女は足早に去っていってしまった。

 女が去っていくとホームルールの予鈴が鳴り響いてきた。
「やべっ遅刻する」
 鳴り響くチャイムに急いで学校に向かった。

 ある程度静かに扉を開きながら教室に入る。
「おはよう、栗原」
 俺はポチ……。じゃなく緒方幸一、愛嬌学院の一年生だ。
 この学校に通い始めてもう二ヶ月になるがまだクラスの奴らの顔と名前がわからない奴が大半だ。
 彼女居ない暦=実年齢と言う記録も持っている。
 特技は高速瞬きだ。
「おっはー」
 この能天気なのが栗原、以上説明終わり。
「何年前の挨拶だよそれ」
 友人の能天気さにあきれながら一応反応してやる。
「いいだろー別に」
「好きにしてくれ」
 本当にこいつは自由だ。
「それより聞いたか?」
 いきなり話題を変えて話しかけてくる。
「ああ聞いた」
 面倒なので聞いたことにしておく。
「なかなか情報が早いな。何の話か分かってるのか?」
「分かってるとも。年々うまい棒が小さくなってきてるんだろ?」
 値段は変わってないのに、あれは詐欺だよな。
「ちがう」
「じゃああれか、サッカーボールは初めは牛の膀胱だったってやつか?」
「もういいよ。知らないんだろ」
 栗原はやれやれと言った風に首を振る。
「どやら転校生がこのクラスに来るらしいぞ」
「あぁそうかい」
 そんなことか。
「なんだよ、無反応だな」
 栗原は少し起こったようにいう。
「なんだかいやな予感がするからな」
 いやな予感がする。
「はぁ?」
「気にしないでくれ」
「まぁいいけど。そういえばその転入生結構かわいかったらしいぜ」
「そうかよ」
 女、か。
 ますます不安になってきた。
9, 8

  

 俺の朝は、軽快な目覚まし時計のベルによって始まる。
「うるさい」
 無残にも主人を起こそうと奮闘した目覚まし時計は今日も上から殴られる。
 そうして俺はまた眠りにつく。
「学校いくか」
 そう決心したのは二つ目の目覚ましがなったときだった。

「おはよう」
 決心してからの俺の行動は早い。
「おっす!!」
 現にこうしてしっかりと目の前の間抜けな友達と挨拶もできている。
「にしても今日もつまんねーな」
 さっき楽しそうに挨拶をしていたかと思うと、いきなりそんなことをぼやく栗原。
「そうだな」
 いつものことなので気にしない。
「なんかこう女の子とドン、とかないのかな」
 ありえないような戯言をぼやくのもいつものこと。
「そのイベントなら昨日あった」
 が、しかし俺は昨日のゲームを思い出してつぶやく。
「ふーん、で、それなんてエロゲ?」
「聞くな」
 長い間付き合っていると分かるものなのだろうか?くやしい。
「でも、よく考えたらこの学校共学のくせになんで女子が一人も教室に居ないんだよ」
 あっちの世界なら教室に女はいたがな。
「どこで俺は人生の選択肢を間違えたんだろう」
 栗原はそう言うと、頭を抱えて天を仰いでいる。かわいそうな子だ。

 今日も教室には黒板にぶつかって削られ、文字を書き出すチョークの音と、それをノートに写すために削られていく黒鉛の音だけが聞こえる。
 今日はついでにいびきも聞こえる。主に目の前の席から。
 俺は黙々と黒板に書いてあることをノートに写していく、なんて無い昨日と同じ作業。
 そんな作業を繰り返している間にも、やっぱり前の奴は机に突っ伏して眠っていらっしゃる。これでクラスで五本の指に入る成績だと言うのだから神様は才能の分け与え方を間違えている。
 ノートをとる作業を四回繰り返したところで昼休みがやってきた。
「ん?もう昼か、疲れた疲れた、めっしめっしめっしー♪」
 やっと目の前の栗原がおきたかと思うと、すぐにかばんから弁当を取り出して食べ始める。
 お前は本当にのんきだな。
「食べるか」
 それから友達とたわいのない会話をは繰り返して昼の授業に移る。
 またノートをとる作業に移る。
 一体こんなことを学んでなんになると言うのだろうか?
 そしてまた二回ほどそんな作業を繰り返すとやっと帰宅の時間だ。
「事故に気をつけて帰るように」
 担任の固定された挨拶。
「起立、礼」
 強制される礼。
「さよなら」
 馬鹿みたいにそれを実行する俺たち。
 反吐が出る。
「なぁこれから部活?」
 栗原がいかにも遊ぼうぜと言った風に話しかけてくる。
「そうだ」
 なんか朝からこいつとしか会話してないような気がする。
「真面目ですねー」
「はいはい」
 いつものように汗を流す、マネージャーはどっかのゲームみたいに、「はい先輩タオル使ってください」都会って頬を赤らめもしない。むしろもっと働いてくださいと言うところだ。
 部活も終わり一人で帰るなかにまたカップルを見た。先輩だった。
 みんな死ねばいいんだ。
「ただいま」
 風呂に入って飯を食う。習慣化した一種の儀式。
「スイッチオン」
 ヘッドホンをつける、部屋の明かりを落とす。
「はぁ、腐ってるな俺」
 いきなり光る携帯、ディスプレイには新着メール一件の文字。
「はいはい、誰ですかっと」
 俺はヘッドホンをはずして携帯を見つめる。
「祭りね」
 メールの相手は朝から話しているあいつだった。
 内容はいたって簡単、「今日の祭り一緒にいかね?」
 そういえば今日は花火大会だったか。
「いかねーよ馬鹿」
 俺は俺の世界に浸りたいんだ。
 光る携帯、ディスプレイには新着メール一件の文字。
「はいはい、誰ですかっと」
 また同じやつから同じ内容。
「だからいかないって」
 数分してまた、けたたましく光る携帯。ディスプレイには新着メール十件の文字。
「行かないっていってるだろ」
 いらつきながら携帯の電源を切る。



「糞」
 なんで俺はこんなところに。
「そんな顔するなよ。祭りだぜ祭り」
 結局俺は来てしまった。なんて意志が弱いんだ。
 と言うかメールの次は自宅に電話。そしてお迎え。このコンボで行かないわけには行かないだろう。
「何で男と二人で行かなきゃならないんだ」
 俺の有意義な時間はこいつによって消された。
「何?」
「呼んでくれて最高に嬉しいと思っただけだよ」
「そうかそうかwww」
  皮肉を口にするが通用していない。
「で?なにするの?」
「は?」
「祭り来たんだから何か目的あったんだろ?」
 こいつのことだ、どうせ何かたくらんでいるに違いない。
「ばれた?」
 白い歯を覗かせて口を緩める。やっぱりな。
「実はな」
「ナンパでもしにきたか?」
 こいつといったらどうせこの程度だろう。
「そうそうナンパだよナ・ン・パって今日は違う」
「珍しい」
 俺の勘も鈍ったものだ。
「後でじっくりお前には俺をどういう風に見てたのか説明してもらおう」
 肩に手を置いてまま微笑まれるが、どういう風に見ていたかは聞かないほうがお前のためだと思うぞ。
「ワーワー、ドキドキー」
 反応しておかないと五月蝿そうなので適当に反応する。
「女子を呼んでの夏祭り回りなのでした」
 胸を張っていかにもどうだと言わんばかりに俺を見ているが別にすごいとは思わない。
「帰るわ俺」
 それどころか俺はうんざりだ。
 俺の朝は、軽快な目覚まし時計のベルによって始まる。
「うるさい」
 無残にも主人を起こそうと奮闘した目覚まし時計は今日も上から殴られる。
 そうして俺はまた眠りにつく。
「学校いくか」
 そう決心したのは二つ目の目覚ましがなったときだった。

「おはよう」
 決心してからの俺の行動は早い。
「おっす!!」
 現にこうしてしっかりと目の前の間抜けな友達と挨拶もできている。
「にしても今日もつまんねーな」
 さっき楽しそうに挨拶をしていたかと思うと、いきなりそんなことをぼやく栗原。
「そうだな」
 いつものことなので気にしない。
「なんかこう女の子とドン、とかないのかな」
 ありえないような戯言をぼやくのもいつものこと。
「そのイベントなら昨日あった」
 が、しかし俺は昨日のゲームを思い出してつぶやく。
「ふーん、で、それなんてエロゲ?」
「聞くな」
 長い間付き合っていると分かるものなのだろうか?くやしい。
「でも、よく考えたらこの学校共学のくせになんで女子が一人も教室に居ないんだよ」
 あっちの世界なら教室に女はいたがな。
「どこで俺は人生の選択肢を間違えたんだろう」
 栗原はそう言うと、頭を抱えて天を仰いでいる。かわいそうな子だ。

 今日も教室には黒板にぶつかって削られ、文字を書き出すチョークの音と、それをノートに写すために削られていく黒鉛の音だけが聞こえる。
 今日はついでにいびきも聞こえる。主に目の前の席から。
 俺は黙々と黒板に書いてあることをノートに写していく、なんて無い昨日と同じ作業。
 そんな作業を繰り返している間にも、やっぱり前の奴は机に突っ伏して眠っていらっしゃる。これでクラスで五本の指に入る成績だと言うのだから神様は才能の分け与え方を間違えている。
 ノートをとる作業を四回繰り返したところで昼休みがやってきた。
「ん?もう昼か、疲れた疲れた、めっしめっしめっしー♪」
 やっと目の前の栗原がおきたかと思うと、すぐにかばんから弁当を取り出して食べ始める。
 お前は本当にのんきだな。
「食べるか」
 それから友達とたわいのない会話をは繰り返して昼の授業に移る。
 またノートをとる作業に移る。
 一体こんなことを学んでなんになると言うのだろうか?
 そしてまた二回ほどそんな作業を繰り返すとやっと帰宅の時間だ。
「事故に気をつけて帰るように」
 担任の固定された挨拶。
「起立、礼」
 強制される礼。
「さよなら」
 馬鹿みたいにそれを実行する俺たち。
 反吐が出る。
「なぁこれから部活?」
 栗原がいかにも遊ぼうぜと言った風に話しかけてくる。
「そうだ」
 なんか朝からこいつとしか会話してないような気がする。
「真面目ですねー」
「はいはい」
 いつものように汗を流す、マネージャーはどっかのゲームみたいに、「はい先輩タオル使ってください」都会って頬を赤らめもしない。むしろもっと働いてくださいと言うところだ。
 部活も終わり一人で帰るなかにまたカップルを見た。先輩だった。
 みんな死ねばいいんだ。
「ただいま」
 風呂に入って飯を食う。習慣化した一種の儀式。
「スイッチオン」
 ヘッドホンをつける、部屋の明かりを落とす。
「はぁ、腐ってるな俺」
 いきなり光る携帯、ディスプレイには新着メール一件の文字。
「はいはい、誰ですかっと」
 俺はヘッドホンをはずして携帯を見つめる。
「祭りね」
 メールの相手は朝から話しているあいつだった。
 内容はいたって簡単、「今日の祭り一緒にいかね?」
 そういえば今日は花火大会だったか。
「いかねーよ馬鹿」
 俺は俺の世界に浸りたいんだ。
 光る携帯、ディスプレイには新着メール一件の文字。
「はいはい、誰ですかっと」
 また同じやつから同じ内容。
「だからいかないって」
 数分してまた、けたたましく光る携帯。ディスプレイには新着メール十件の文字。
「行かないっていってるだろ」
 いらつきながら携帯の電源を切る。



「糞」
 なんで俺はこんなところに。
「そんな顔するなよ。祭りだぜ祭り」
 結局俺は来てしまった。なんて意志が弱いんだ。
 と言うかメールの次は自宅に電話。そしてお迎え。このコンボで行かないわけには行かないだろう。
「何で男と二人で行かなきゃならないんだ」
 俺の有意義な時間はこいつによって消された。
「何?」
「呼んでくれて最高に嬉しいと思っただけだよ」
「そうかそうかwww」
  皮肉を口にするが通用していない。
「で?なにするの?」
「は?」
「祭り来たんだから何か目的あったんだろ?」
 こいつのことだ、どうせ何かたくらんでいるに違いない。
「ばれた?」
 白い歯を覗かせて口を緩める。やっぱりな。
「実はな」
「ナンパでもしにきたか?」
 こいつといったらどうせこの程度だろう。
「そうそうナンパだよナ・ン・パって今日は違う」
「珍しい」
 俺の勘も鈍ったものだ。
「後でじっくりお前には俺をどういう風に見てたのか説明してもらおう」
 肩に手を置いてまま微笑まれるが、どういう風に見ていたかは聞かないほうがお前のためだと思うぞ。
「ワーワー、ドキドキー」
 反応しておかないと五月蝿そうなので適当に反応する。
「女子を呼んでの夏祭り回りなのでした」
 胸を張っていかにもどうだと言わんばかりに俺を見ているが別にすごいとは思わない。
「帰るわ俺」
 それどころか俺はうんざりだ。
11, 10

  

「待ってよ。いまさら逃げはさせないよ」
 立ち去ろうとしたところ、首をしっかりホールドされたが、何かいつもとは違うオーラを感じる。今こいつは最高にやばいような気がする。
「そ、そんな怖い顔してどうした」
 素直に恐怖を感じる俺は声が震える。誰だって怖いものは怖いはずだ。
「お前が逃げようとしたからだろ?」
 本当にその時は殺されるのかと思った。
「わかった、逃げないから離してくれ、頼む」
 なんて意志が弱いんだ俺は。
「そうか?ほらよ」
 案外あっさりと手を離してくれた。
「しかしなんで俺なんだ?男なら他にも居ただろうに」
「お前の友達想像してみろ、祭りに女と歩けそうな奴いるか?」
「…ノーコメントで」
 ごめん皆俺は無力だ。
「まぁそういうわけで仲がいいまともなお前に来てもらったわけだw」
「まとも?」
「そっちの話しなかったらお前は十分まともだよ」
「そうかい」
「だから間違ってもアニメの話はするなよ」
「わかったからその顔はやめてくれ」
「約束だぞ」
「ゲームの話ならいいのか?w」
「ぁ?」
「…イエス!!マム!!二次元の話は一切いたしません」
「わかったんならいいんだ」
 しかしこいつはアレだろうか、もし俺が普通にしてて、もてたときの対処は考えているんだろうか?
「大丈夫だお前がもてることなんてありゃしねぇから」
「ESP!?」
「そんな感じがしただけだ」
「やっぱりESPじゃねぇの?と言うか、もてないことは必然みたいだな」
「なに?もてるとでも思ってたの?」
「別に」
「だろ」
 悔しい。
「ぁ…来た」
「ぁ?」
 俺は若干のゲーム的な展開を予想しつつ女の子たちの方を向いた。

「…」
 そこには中学校時代一緒だった奴らと知らない子が数人だった。
「おい」
「なんだよ?」
「人数おかしくないか?」
「どこが?」
「比率おかしいだろ6:2って」
「そう?」
「そうなんだよorz」
「小さいこと気にするなって」
 小さくねぇよ
「それに俺顔見知りばっかりなんだけど」
「そうなの?よかったwwターゲット絞るからそれ以外の子の相手お願いできるww」
「は?」
「じゃぁ自己紹介からはじめようかw」
「おい」
「俺はよくメールしてるからわかるよな、でこいつが…顔見知りが多いみたいだから省くね」
 適当だなこいつ。
「時間もったいないからいこうか」
 そして俺は歩き始めた、女の子服装はなぜか全員浴衣、無駄に気合入れてきやがって。
 前では女の子と楽しそうに話しているあいつの姿が……
「あら?」
「どうしたの?」
 集まってるの俺の回り?
「どうしてくれるの?気合入れてきたのに男が二人って、しかも一人があんた」
「あいつに聞けよ」
 そう、俺は主犯じゃない、むしろ被害者だ。
「こんな無駄な時間を過ごさせるんだからそれなりに御代はあるんでしょ?」
 か、かつあげ?
 だから俺は被害者なんだ。
「まて、他に男を呼ぼう、それで勘弁しろ」
「ふーん」
 相手様はご立腹だ、俺は急いで暇そうな奴の電話に片っ端に連絡を入れる。
「もしもし…え?無理?そんな事言わずに」

ブチ

「糞、切れたか」
「もしもし…え?無理?そんな事言わずにさぁおごるかr」

ブチ

「糞、切れたか」


………。

 残念ながらもう俺の携帯の中には呼べるような奴のストックはもう無い。
「…まさか…全滅だと?」
「それで?誰か呼べたの?」
「全力を持って接待させていただきます」
「よろしい」
 頑張れ俺のお財布。
「なぁ」
「なんだよ」
「主催したの俺だよな」
「そうだ」
「なんでお前がモテモテ?」
「お客様は無計画はお嫌いだと」
「この完璧な計画のどこが無計画だというんだ」
「じゃぁお前あの中にいって今日のスケジュール言ってこいよ」
「まかせろww」

「だから…ぇ?そんな…」
 骨は拾ってやらんぞ。
「おう、どうだった?」
 そこには生きた屍が。
「ありえないだって」
「そうか」
 俺は肩をぽんぽんと叩いてやってお客様の元に行った。
 そこからはリセットしてもう一度携帯をとるところからはじめたくなる内容だった。

「ねぇこれかって」
「はいただいま」
「喉かわいたー」
「はいジュースです」
「おなかすいたー」
「焼きそばです」
 俺はウエイトレスじゃねぇ。
 そんなリセットしたい状況の中
「あんたもなんか奢ってもらいなさいよ」
「いや…初対面の人にそんなの悪いし」
 オーマイエンジェル、地獄に仏。
「いいのいいのあいつ昔からの知り合いだから遠慮しないで」
 おれは財布かよ。
「で、でも」
 でも、こういう子にはおごってあげたくなる。
「遠慮はいらないからさ、何でもいいんだよ」
「そうですか?じゃ、じゃぁアレ」
 マイエンジェルが指差す先には……。
「ぬいぐるみ?」
 しかもくじ引き。
「やっぱりだめですか?」
 …男たるもの一度行ったことは曲げられん。
「…まかせてよ」
 といったものの俺はくじ運が悪い、なのでくじ運やちょっとしたことでやたら運がいいというスキルを持ったさまよう死体を呼び寄せた。
「なに?」
「あのぬいぐるみがほしいんだけど」
「あっそ」
ゴソゴソ
「すごいねアンちゃん二等だ、ほらよぬいぐるみ」
「ほれぬいぐるみ」
「あ、ありがとう」
 本当に当てるとは思っていなかった。
「じゃぁ俺行くわ」
 また、さまよう死体に逆戻りした。
 それから走ってぬいぐるみを届けた。
「あ、ありがとう、本当にとってきてくれるとは思ってなかったよ」
「頼まれたからそれくらいは果たさないとね」
 かっこいいぞ俺ナイスだ俺w

「じゃぁ私はあのバルーン」
「じゃぁ私はあのエアガン」
さまよう死体再出動要請。

「じゃここら辺でお開きで」
 気付けは時計の針はもう10時を示していた。
「送ってくよ」
「いいわよ、家近いし」
「そう?」
 皆散り散りに解散していく。
 そんな中あのマイエンジェルが一人だけがぽつんと残っていた。
「どうしたの?皆と帰らないの?」
「…あの……話があるの」
 は?…急な展開に頭がついていかない。
 だが
 祭り→一緒にまわる→皆帰って二人っきり→告白www
 そんな道筋が俺の頭の中で出来ていた。
「は、話って何?」
「…」
 心地よい沈黙。
「あの」
「はい」
 いま声裏返ったよね。
「実は……」
 ここで俺は、ざっと三通りの結果を考えた。
其の一
「実は…帰りの電車賃が無いんで貸していただけます?」
「…いいよ」
其のニ
「実は…駅までのタクシー代が無いで貸していただけます?」
「…いいよ」
其の参
「実は…もう一人来ていた人が気になるんですけど、詳しく教えていただけませんか?」
「…いいよ」

 ちょww俺なみだ目www
 全部Bud End
 落ち着け俺、落ち着くんだ。
「あの…実は前からお話を聞いてていい人だなぁと思っていたんです、それで今日会ってみてそれを実感することが出来ました」
「ど、どうも」
「それでいきなりで悪いんですが付き合ってもらえませんか?」

 くぁw背drftgyふじこlp;@:「」
 ううぇううぇううぇうえ
「だめ…ですか?」
 彼女がこっちを見ている。
 こんなときゲームなら選択肢がるはずだ。

>俺も実は見たときに好みの子だと思っていたんだ。

 ごめんいきなりは無理だよ。

 きっとこんな感じだ、ここから各ルートに分岐してそれぞれのエンディングに向かうんだ。
 そうだこれは選択肢だ、セーブしないと、セーブ。
 セーブ、セェェェェブット
『これはゲームはロードは出来ません。』
 なんて難しいんだこの人生というゲームは、難易度が鬼畜じゃねぇか。
 攻略ページも見当たらない。
 どうしよう…。
「それで…やっぱり迷惑ですかね?」
「いやそれはその…」
 そんなにこっちを見ないでほしい。
 恥ずかし…。
「…ん?」
 彼女の目は俺を見ていなかった、その瞳は近くの草むらに行ったり来たりしている。
「…」
 きっと恥ずかしいんだろうな、なかなか目をあわせようとしない。
 こっちとしてはありがたいが。
「挙動不審な子だな」
「ぇ?」
 しまった声に出た。
「なにかいいました?」
「つ、月が綺麗だなぁと」
 べただべた過ぎる。
「そうですね…」
「でもいきなりなんで俺なんかを?」
「それは…」
 草むらのほうをきょろきょろと見出した。
 やっぱり恥ずかしいんだろうか。
 …なわけあるかよ。
 携帯を取り出す、さっきまで居た女子のひとりに電話をかける。

 ヒ゜ロヒ゜ロヒ゜ロ~

 その彼女が見ていた草むらから音がした。
「ぁ、やべっ」
 そして声もした。

ヒ゜

 切りやがった
 もう一度かける。

ヒ゜ロヒ゜r

 切れたか。
「さっさと出て来いよ」
 …。
「さっさと出て来い」
…。
「もう一度警告s」

カ゛サ

「ぁ~あばれちゃった~」
「…でこんな草むらに隠れて何をしてたんだ?まさかかくれんぼなんて言うまい」
「いやそれはその…」
「盗み聞きとはいい度胸だ」
「…」
 かわいそうに告白を盗み聞きされるなんて。
「…」
悲しそうな顔をしてるだろ…
「あら?」
 こういう時って普通恥ずかしがったり顔が赤くなったりすむものじゃないのだろうか?
 なのに…。
「恥ずかしくないの?」
「ぇ?っまぁは、恥ずかしいですよ、はい」
 なぜに詰まる?

……。

 やたらと二人で気まずそうな顔してこっちを見ている。
 しかし、ナセ゛確かに帰ったはずのこいつがここに?
 ハッ!!見えたぞっ、見えた。
 こいつらはグルだ!
「それで、俺を騙してどうしたかった?」
「騙すなんてそんな…」
 いまさら普通に振舞っても無理だろマイエンジェルいや小悪魔よ。
「アハハハ、ばれた?」
 いさぎがいいぞ我が友よ。
「用事も済んだし、楽しんでもらえたみたいだから俺はもう帰るわ」
 ってかもう帰りたいんだ。
「すいませんでした…騙して」
「いいさ」
「ゴメンゴメンww今日は楽しかったよ」
 そりゃよかった。
「じゃぁな」
「さよなら~」
「バイバーイ」
 家に着く、パソコンに電源を入れる、やりかけのゲームをプレイする。
 このゲームが終わる頃には外は朝日が昇り始めている頃だろうな。
 俺にはまだまだ春は遠いようです。
 今年も冬を満喫します。
 心のオアシスは現実にはどこにもありはしない。
 今年もまた一年中が冬みたいだ。
13, 12

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