道で武器を売る商人がいる
それに群がる人がいる
人の群れにとがった男
矛盾
商人は商人らしい口調で語ります
「こちらに見える矛はどんな盾でも突きとおすことができる最強の矛です！
これがったったの１０両！」
「どんな盾でも！それはすごい！」
銭をまくような感嘆の声をあげます
「そしてこちらに見える盾はどんな矛も通さない最強の盾です！
これもたったの１０両！」
「どんな矛でもかあ！それはすごい！」
また小判をばらまくような音で声があがります
そして案の定…
「俺にその矛をくれ！」
「俺は盾だ！」
「俺は両方買うぞ！」
１０両もする矛や盾がとぶように売れていきました
そしていい買い物をしたとすがすがしい顔で帰っていきます
しかし何も買わないくせにいつまでたっても立ち去らない
細身の体だが鋭い顔つきの
そうまるで矛のような男がいました
男は人々が去っていき
矛先がすっかり出てきたところで
「おい商人、もしその矛でその盾を突いたらどうなるんだ？」
男の顔は鋭い矛先のように勝ち誇っています
口止め料でも要求する口ぶりです
「た、試してみますか」
真っ平らな盾のように無表情になった商人は
聞き返しました
男の顔はますます鋭くなり
「よし、では…」
男は商品の矛を取り力いっぱい振り上げ
鋼鉄の盾にむかって突き刺しました
するとどうでしょう
矛の先はぐしゃぐしゃにひしゃげ
盾には大きな穴があいてしまいました
「壊れてしまったぞ！嘘つきめ！」
男は矛で突き刺すように言葉を強めました
しかし商人の顔は先ほどとは打って変わって微笑みをもらしています
「お客さん、２０両になります」
先ほど矛や盾を買っていった人々は
ひしゃげた矛のような男とすれちがったそうです