学校の帰り道
シャーペンの芯を買いにいった
いつもの銘柄がない
これでいいか
デスペンシル
俺は家に帰るとすぐに洗面所にむかう
受験生の一番の敵は風邪だから
冷たい水があったかいくらいに手が冷えていた
透明なカップに褐色のうがい薬と水を注ぐと
不適な模様が広がるのだった
うがいをすませた俺は部屋へむかった
いつもどおり５時に勉強をはじめる
あと３分か
今日買った芯をてばやに入れると
時計をみつめてため息をついた
始めるか
1560年桶狭間…
三時間やったら休憩
これも日々の決まりにしていた
今日は母も仕事で家にはだれもいない
カップラーメンの白い容器が頭に浮かぶ
暗い静かな一階に足音だけたてて降りていった
ピリリリリリ ピリリリリリ
びっくりした
こんなタイミングの電話は心臓に悪い
単語がいくつか飛んだかもしれない
左手で電気をつけると
右手で電話をとった
もしもし
あ、小林と申しますがお母様いらっしゃいますか？
いえ、今日は仕事で出かけてます
あ、そうですか～ＰＴＡの会費ことでお話があったんですが
（いちいち語頭に「あ」をつけるな）
じゃあ伝えておきます
二階から持ってきてしまったシャーペンをとると
数回ノックする
出ない
中で折れたか
ああ、出た出た
しかしそれはいままでとは違う
赤い芯だった
当たりだ
まあいいか
電話のとなりに置いてあるメモで話をメモった
あ、では失礼します～
小林さん
ＰＴＡの会費の件で電話
明日またかけてくる
赤い字で少々不気味なメモを電話の横に置いた
それから１時間ぐらいったったか
また電話がかかって来た
あ、私ＰＴＡの田中です～
母なら今でかけてますが
あ、そうですか～実はＰＴＡの小林さん
さっき電話ありましたよ
いえ、さきほどお亡くなりになりました
え？
心臓発作だったみたいで
え？
さっきのメモを一枚めくり
また奇妙なメモを作った
ＰＴＡの田中さん
明日小林さんのお通夜
さっきまで話をしていたのが死ぬのは気分が悪い
単語が参考書一冊分は飛んだようだ
その一時間後
田中さんが死んだ
この赤い芯は人を殺せるのか？
デスノートのシャーペン版か？
デスペンシルか？
恨みもなんにもないＰＴＡさんをメモるのはよした
代わりに担任の教師を書いた
この男にはイライラしていたから
案の定の担任の死の報告
俺は確信した
俺は証拠を残さず人を殺せる
薄っぺらなメモ帳を適当に投げ捨てた
この芯が大切だ
これさえあれば誰でも殺せる
打ち捨てられたメモ帳は赤い文字を抱えてうなだれていた
立て続けに学校関係者の変死
しかし証拠はゼロ
これはおそらく夜のトップニュースだろう
俺はリモコンを手にとると
テレビの電源をいれる
低い音で電源が入る
ニュースは・・・
その日のニュースでは謎の変死はおまけだった
トップニュースは
戦国大名全国でよみがえる
俺の部屋で黒い文字を抱えたノートが
やはりうなだれていた