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1話


「僕は監禁されている」




気づくとまた夢のなかにいた

奴らに捕まってから もう何度も夢の中にいるから
これは夢の中だと解るようになってしまった

最初は女性になる夢だった。僕は男性だ まだ僕には自我がある。
次は何処かの王様になる夢だ。歴史の教科書に出てくる人の夢もみた

そして地獄の様な戦争の夢も何度も見た、その時僕は子供だったり
兵士だったり、政治家でありテロリストだった
いろんな人の視点で夢を見た。

今回の夢で僕は高校生で冴えない日常を送っている

いや最低の日常だ。
ただ目標もなく日々を過ごしている…。打ち込めるものがない
部活も入ってないし、友達も少ない ていうか友達なんて…いらない。
趣味と言ったらネットで、社会不適合者予備軍ってやつ?
世の中のありとあらゆる事象から逸脱して、ずっと家にこもって現実逃避
自分の分身を作って、匿名の存在として自分を自由自在に作り変える
気に入らなくなったらまた作り変える、現実と違って仮面を被らなくていい
嘘で塗り固められた日常じゃない、ありのままの自分がそこにはあった
僕のすべてがそこにあった。
「自分はなんと弱い人間だろう。」
僕は自分の部屋で一人泣いた。

弱さ…。 僕も同じだ。
何回も夢の中に閉じ込められて他人の人生を体験する、本当の空を見たことがない
僕はシェルターで生まれた
宇宙人との戦争で人類が放った核ミサイルが原因で地上は死の大地と化したんだ。
たった数日で人類が築きあげてきた文明が消滅した。
多分宇宙人たちはその消えた文明に興味が有るのだろう。
僕達生き残った人類の頭の中にあるデータベースを観覧しているのだ。

モーター音が耳の奥に響いた。それからゴポゴポと血が流れていく音。
新鮮な血液の匂い。夢から覚めるみたいだ。
ロボットアームが僕の眼窩に目玉を入れた視界がグルリと周り眩しい光に僕は
まぶたを閉じた。

「まぶたあるんだ。」…僕がなぜそう思ったかは言わないでおく。
頭の骨を叩いてみた、今回はちゃんと右脳が詰まっている。
空気らしき何かをひとしきり吸って体を眺めてみた


今日は肌が黄色だった。僕の肌の色だ。
周りを見る。
いつもの無機質な部屋、白い壁に覆われた四角い部屋だ。
「自由時間」と僕が呼んでいるこの時間は現実に戻れる時間だ
この時間を僕は楽しみにしている。
部屋のまんなかに丸と星で書かれた紋章がある、さっき僕が出現した場所だ
いつもならそろそろ食べ物が出てくるのだが…

紋章の上の空間が歪んだと思ったら光と共に何か黒いものが出てきた
それはさっき夢に見ていた高校の制服だった。

つづく

「僕は生きている」




僕はその服を拾い上げた。夢と同じ汗臭い匂いがした。
夢の中は夏だった。
この空間が箱なのか宇宙船なのか解らないが
ここには季節という概念がない、ただ繋ぎ目のない白い壁が続いているだけだ。
ならなぜ?
この汗の匂いは誰の汗なのだろう?こんな事はここに連れ去られて
初めてのことだ。
僕は動揺した。

最初にこの部屋に来た時僕は経過日数を記録しようと壁に傷跡をつけた。
しかし途中で意味が無いとに気がついた。42回傷をつけたときこの部屋は
リセットされていた。部屋ごと元の白い壁に戻っていたのだ、僕の知らない間に。

拉致される前、僕はシェルターで暮らしていた。
僕達の中には大富豪の一族の末裔が多い。巨大シェルターを所有していたのは
彼らだけだ。

あの戦争から僕達は地下の地下に追いやられシェルターを拡張しながら
宇宙人の侵略と戦っていた。
やがて地底に学校が作られ 「アカデミー」と呼ばれた。
生き残った兵士や科学者、大人たちで生き抜くための知恵を出し合い共有した。
そして数年が経ち卒業生の中から対宇宙人部隊WAVEが組織された。
僕も入隊した、みんなを守りたかったから。
WAVEの主な任務は地底に巡らせたトンネル網の管理と
宇宙人が送ってくる偵察生物兵器(アンダーと呼んでいる)等からの防衛だ







ある朝。

「お兄ちゃん!」
みさきの声だ。

「…なんだ。」

「なんだとはなんだ!」

みさきが間髪入れず言う。

「なんだとはなんだとはなんだ。」

「なんだとはなんだとはなんだとはなwsrf…」

噛んだ。もーっと息を吹いてから顔を赤くするみさき。

「今日は任務も無いしせっかくの休日なんだ、ゆっくり休ませてくれ な?」

「約束!」

約束…、以前アカデミーの化学班が宇宙人の技術を応用しプランターという機械を
開発した。以前から汚染されていない食料はわずかで食料難に困っていたが、
その問題を打開する技術だそうだ。なんでも食物をコピー出来る夢の技術だとか。
数が減少していた麦も

「あー、なんだっけ」

「クッキーだよアカデミーにクッキー食べに行くの!」

アカデミーでプランターの発表も兼ねてクッキーと言うお菓子が配られるお祭りが
予定されていて、それが今日なのだ。 正直興味がないのだが。

「早く支度してね」

バックパックまで用意してくるあたり本気で楽しみにしていたようだ。
このシェルターに住んでる人間はみんな家族であり運命共同体と感じている。
この地区のアパートと呼んでる区画はコンピュータで管理されて守られている
登録されている人間なら部屋を自由に行き来出来る。
みさきはもちろん トオル、ハルカ、ゆう、マイケル みんな仲間で家族だ、みさき以外は
WAVEの隊員でもある。

「おいXXXXX」
マイケルの声だ 自分の名前を呼んでいるが 自分の名前を思い出せない…。

「おう、今からアカデミーに行くんだ どうした?」

「ちょっとな」

「なんだ?」

「今朝警戒レベルが上がった」

「場所は?」

「アカデミーだ お祭りもあるし 関係ないとは思うが」

「アンダーか?」

「ま、何匹来ようが問題無いけどな」

「お兄ちゃん?どうしたの?WAVEの仕事?」
みさきが外行きの服で玄関に立っていた。

「あ、いや。」
正直、警備に加わりたかったが

「何でもねぇよ、今日はお兄ちゃんとデートか?」

「うん、マイケルの分もクッキーもらっとくね」

「ありがとよ じゃ、お前は俺らに任せて楽しめ」

はぁ行くしか無いか。上着を着て、マスクをカバンに入れ外に出た。

アカデミーはいつもより人でいっぱいだ。僕ははぐれないように
みさきの手を握った。みさきはなんだかもじもじしている。

「どうした?みさき?」

「お兄ちゃん」

「ん?」

「今日お兄ちゃんとみんなと家族になった日だよ」

「あぁ…」

みさきは第14地区の戦闘で生き延びた唯一の生存者だった

「あのね、私…」

「キャッホーーーーーーーーーーーーーーイ」

ハルカだ

「ヒューヒュー二人で何してんの?デートかな?」

「…。」

「お前こそ今日は警備じゃねーのかよ。」

「あたしはー イテッ」

トオルがハルカの頭を叩いた

「サボってないで行きますよ。ハルカさん」

「お前いま殴ったかトオルの分際で…」

「はいはい。ごめんね、みさきちゃん じゃっまた XXXXX、警備は俺らに任せて、楽しめ」

どいつもこいつも同じ事を言う。

「そういえば、さっき何言いかけてたの?」

「ん?ううん大丈夫。」

「そっか」

大丈夫…? 何が?それからみさきは黙りこんでしまった。気まずい 非常に気まずい。

「あっ、ほら見て始まるよ」

クッキーの無料配布が始まった。パニックにならないようにWAVEの隊員が列を監視している
1時間も待たされた。結構人気があるんだな。
先頭で営業用スマイルで立っているのはトオルだ

「あ、みさきちゃんまたあったね、今日配布するこのクッキーはねフォーチュン・クッキーって言ってね
 中にメモが入っているんだよ」

「メモ?」

「なんだ異物混入か?」

「違うよ~。昔の人類の風習でね、クッキーの中に運勢が書かれたメモが入ってるんだよ」

「ほう」

「仕事運とか恋愛運とか占えるんだよ~」

「恋愛運!?」

「そうだよ~ためしてみると良いよみさきちゃん」

「また余計な事を吹き込みやがって…」


運勢か…戦場で最前線に出る俺達には関係ない
けど、今日くいらはハメを外しても良いかな

何々?大凶…。トオルのやつ…。

「みさきは?」
とみさきの方を見るとみさきはにまぁと笑っていた

「なんて出たんだ?」

「!? なん ばかぁ!!」

「は? お、おい」
みさきはメモを隠した。

その時だった。

爆発音だアカデミーの科学班の方からだ
アンダーだ

「…みさき家に帰るんだ」

「お兄ちゃん」

「トオル!」

「みさきちゃん大丈夫、すぐ帰ってくるから。」

「…。   …お兄ちゃん、絶対帰ってきて。」

「あたりまえだ。」

僕はバックからガスマスクを取り出した。


つづく

2, 1

  

「僕は見られている」






「XXXXX、飲め」
トオルがカプセルを1錠僕に手渡した。
このカプセルを飲んだ人間は5時間の間テレパシーでの人体通信が可能になる
爆発のあった建物に向かう
左手首に装着しているデバイスが通信可能の赤を示した。
「本部、こちらダイリュート、アカデミーが攻撃を受けています。」

「さっきゆうくんから報告を受けたわ。」
司令部のマヤさんだ。

「非番って聞いてたけど?」

「たまたま居合わせました、…被害状況は?」

「爆発は研究所の内部、放射能の汚染は無いみたいね そこはセキュリティレベルの高いエリアだから
中の状況を知るには先ずアクセスIDを手に入れる事ね。」

研究室の入り口でマイケル、ハルカ、ゆうと合流した。
通信に集中しながら目で会話をする。

「お前の装備だ」
マイケルから装備の入ったケースを貰い着替える。
ゆうが扉の横のパネルを開いて端末に繋いでいる。


「この施設の内部は大きなたて穴のトンネルになってるの。敵の侵入に備えて重要な
施設は最下層に作られてるわ。ライフラインやトンネルネットワーク管理施設と同じ構造ね。
多分敵は地上からトンネルのど真ん中まで掘り進んで来たみたいね、敵が最下層にたどり着くと
まずい事になるわ。」

「こりゃ この端末じゃだめっぽい 深部まで行くには生体IDが必要だ。」
とゆうがいう

「聞こえましたか?」

「研究員は全員中に閉じ込められているわ、こちらでアクセス許可出来るか申請してみる。」

「緊急時だぞ、悠長な事言ってないで 爆破するか?」
マイケルがさっきから鼻息を荒くしている。

「研究所はアカデミー内でも色々と謎が多い施設ですからね。おじゃまするのが楽しみです。」
トオルはこんな時にニコニコしている。

「研究じゃアンダーの死骸を集めていじくりまわしてるってな きもちわるい おぇぇ」
ハルカが喉を握って舌を出す仕草をした。
敵がフロンティア(シェルター)を攻めてくるのはめずらしくも無いが、
こんなに的確に攻めてくるなんて未だかつてあっただろうか

「最下部付近で生体反応一名確認 …もしもし 聞こえるだろうか」
無線からフロア内のスピーカーを通じて連絡をする

「はい。」
女性の声だ。今にも泣きそうだ。

「何があったの?」

「急にアンダーに襲われて… みんな やられてしまいました。」

「そのフロアで生存者はあなただけ?」

「はい。」
様子からして閉じ込められたようだ。

「そこ制御室ね。こちらの指示に従っていれば大丈夫よ。いますぐ入り口を開けて欲しいの。
WAVEが駆けつけてあなたを救出するわ」

マヤさんが機械の制御マニュアルを読みはじめた。

「…それで、解除されるはずよ。」

扉のロックが外れる音がした。
トオル、ハルカ、マイケル、ゆう それぞれが武器を構え、目配せした。
僕はそれに頷き構えた銃の先を追うように研究所に入った。

「地図を手に入れたわ、先ずは階段に向かって。そこから3時の方向の扉の先よ」

ドアに手をかけ開けながら銃を構える

「クリア」
慎重にかつ素早く降りていく

「要救助者のいるフロアに到着した、敵の姿は確認できず」

「やけに静かだな」

「暗くて何も見えねぇ… うっ!」
ライトをつけるとゆかはアンダーにやられた研究者の死体だらけだった。

「避けろ!!ゆう!!」
マイケルが叫んだ

鋭い爪がキラリと輝いき線を描いた
アンダーの奇襲にゆうが足をやられた

「うおおおおおおおお」

銃声がフロアに響き渡る アンダーを一体倒した

「大丈夫か」

「ああ大丈夫だ…、問題ない。」
ハルカがゆうの足を止血した
今回のアンダーはいつもより素早く賢い
先に占拠した敵より優位に立つにはフロアの状況を正確に確認することが必要だ
それにはまず生存者と接触を…


「おいあれ見ろ」
ゆうが目を丸くした

「な、なんだ…!?」

遠くで輝く人影が大きな目でこちらを見つめいる。

「マジかよ…聞いてないぜ…」

映像でしか見たことがない…、地上を地獄に変え 人類を滅亡させる事のできる存在


“宇宙人”がそこにいた。



つづく
3

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