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14、デブ少年Aだったかもは別として

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 右近が立川さんを犯した件。
 これは雌性を吸われた人間が男性化し女を求める正常な行為である。
 保健室の先生はこうとも言っていた。
 オス化している右近が単純にメスを欲するようなものだと……。
 今後もこんなことは多々起こるだろうけど、驚かないように。
 そう僕はくぎを刺された。
 そして得た僕の結論。保健室の先生は百合好き。
 右近が女子である状態保たせておきたいなら。
 右近と立川女史がユリユリするところをただ鑑賞するにとどめておけと……。
 決してその行為を妨げてはいけないと……。
 そういうことなのか。
 な、なんという悪趣味な。
 同じ男として僕は保健室の先生を前よりちょっと好きになった。
 困ったな。
 どんな顔して右近に会おうか。 

 カチャ――――。

 玄関には僕の靴。そしてそれより少し大きい右近の靴がある。
 いつもの光景だ。
 が。
 右近の隣にあるさらに大きな男子用スニーカー。
 これは一体誰の物だろう。
 デカい靴だな。バスケ少年?
 否、右近も僕も知り合いにそんな男子はいない。
 だからバスケ少年路線は却下だ。
 右近よりもデカい女子? 多分そっちもないはず。
 にしても……、トンカツがこのサイズなら文句なしに喜ぶよ。これデブの性。
 腹の虫が小粋に奏でる空腹音に僕は軽くお腹をさすった。
 その時、足元にあるクール宅急便の箱に気づいた。

「来た! ママカレー」
 どうやら右近が僕のいない間に荷物を受け取っておいてくれたらしい。
 今日は久々に夜食が食べられそうだ。
「右近、誰か一緒かい……? 荷物のサインありがと……」
 
 
 いつも右近が昼寝をする僕のベッドの上。
 そこには風呂上がりの見た目男子を犯そうとする、体育会系のデカい男子が息も荒々しく覆いかぶさっていた。
 
 ぬああああああああ!
 ちょっとそこのコンロにいるフライパンさん、僕に力を!
 あとはもう、何か何だか覚えていない。
 

「ブーちゃん! ブーちゃん! そろそろ止めろ。先輩、死ぬ」
 ―――!? 
「そうだ、よしよし。どうどうどうどう」
 それはまるで豚を調教する飼育係の口調だった。
 と、思ってしまうと負けた気がするのでやめよう。
 しかし……。
 僕としたことが。デブ人生初、高校生フライパン撲殺事件を起こすところだった。
 それもこれも君の操のためなんだよ。
 右近、君は面白げに笑っているけど、その辺自覚あるのかい?
「紹介しようブーちゃん。そこの半死体の人こそ俺の先輩。弓道部主将の長瀬さんだ」
 初対面の長瀬さんは僕のベッドで血みどろ半死にだった。

 右近は神妙な顔で顎の無精髭を撫でている。
 長瀬先輩さんはというと、さきほど部の後輩によって保健室へ搬送されていった。 
「俺の解釈が外れていたと……」
 そういうことだよ右近。
 だから今後は自分の体のために、なすび妖精とお風呂に入るのは止めた方がいい。わかったね!と、強気になれない僕。デブ16歳マヨ好き。 
 っていうか、さっきから僕が一生懸命説明していること聞いてるの?
 保健室の先生が言っていたこと、ちゃんと君の耳にとどいているの?
「よしわかった。ならば俺はこのときをもって今一度立川さんのオッパイガーディアンとなることを誓おう」
 胸に手を当てるほどのことでもないと思うよ右近。
 ま……。君が立川女史のオッパイを守るのは構わないけど。
「でも右近、君自身もそのペットを……」
 どうにかしないといけないんだよ。
 ほれ、その、捨てるなりなんなり。
 あ、いや、嘘です。なんでもありません。
 怖い顔しないで。
 右近……。
 だから、またなんで脱ぎ始めるの。

「さ、風呂に入りなおしだ。先輩に変なことされちゃったしな」
「あ……そう」
 相変わらず脱いでもたたまない。
「にしても、長瀬先輩、一体いつになったら俺を女の友達として認めてくれるんだろう」

 ん?

「え、右近、それってどういう意味?」
 君は前に自分が女子であるのを隠すため、男としてアプローチした人間だと……。
「ああ、ブーちゃんは知らなかったな。長瀬先輩は俺とふれあうことで女子嫌いを克服しようとがんばっている真正ゲイ高校生だ」
「じ、じゃあ長瀬先輩さんは右近が女子だってこと――」
「もちろん。知ってるさ」 
 ……。
 そ、そんな。
 そんなゲイ高校生に本気モードで襲われるんじゃ右近、君はもう、女子として本当に遅れなんじゃ。
 そうですよね、保健室の先生……。

 
 つづく 
17, 16

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