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事件は起き、物語ははじまる。

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彼女が死んだ。
僕に告白した、その日に。

彼女が死んだと聞いた時、何故か

「人が一人死んでも世界は何も変わらないよ。」

と彼女が昔言っていたのを思い出した。

「個人レベルなら変化はあるんじゃねーの」

と返した僕に、だといいけどね、と彼女は微笑みかけていた。

さて、僕は何か変わったのか。
先に結論から言うと大して変化しなかった。
放課後すぐ学校を出るようになった、とかボードゲーム類をしなくなった、みたいな細かい変化ならいくらでもある。
けれども、心の中に穴が開いた、みたいな重要な物を失ったような感覚は全くない。

彼女の死を認めたくないだけなのかもしれない。
葬式にも通夜にもいってない。
周りから何と言われても、僕は泣けなかったし悲しめなかった。

一体僕はどうすればいいのだろうか?
彼女の死を今さら悲しむ?
後を追って自殺する?
彼女の死の真相でもでっちあげるか?

彼女が死んだ以上、僕は僕自身のために動かなくてはならない。
後悔などしないように。
さて、ここからが本番だ。

僕は彼女の遺書を持って知り合いのところに向かっていた。
その知り合いとは名探偵志望という過去から現在にかけて一度も繁栄したことなどのない希少種である。
以前、僕と彼女がちょっとしたごたごたに巻き込まれた時に知り合いになり、それからも何回か顔を合わせていた。
「志望」とは言っても腕は確かであり、信用できる人ではある。
変人なのだけれど。

以前もらった名刺に書いてあった住所を頼りに事務所に辿り着いた。
「名探偵 葛西 晴彦 探偵事務所」
ふざけた看板が立っていたので恐らく事務所はここで合っているだろうと判断を付けてドアを開ける。
「失礼します。」
・・・返事が来ない。
出かけているのだろうか。
帰って来るまで待とうか、そう思ってソファーに向かうと、探偵がそこに横たわっていた。
気持よさそうに寝息を立てていた。
いらつくほど幸せそうな寝顔だった。
とりあえず僕は探偵を蹴り起こすことにした。

3, 2

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