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目が覚めたら戦車に乗ってた

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「うう」
 俺は目覚めた。そこは戦車の中だった。ぺたぺたと触っているうちに動き出してしまった。
『ゴゴゴゴゴゴ』
「う、ごきだした?」
 俺は戦車を操縦した。カメラから見るとそこは密林のようだった。俺は恐怖した。何か敵兵のようなものが見えたからだ。見ると俺は軍服を着ていた。どうも俺は軍人らしかった。俺は敵兵を探し始めた。いた。敵だ。俺はボタンを押して敵兵を攻撃した。兵と言っても無人機だ。無人機は爆発して四散した。俺はほっとため息をついた。
 ひとまずはジャングルの中を探索しなければならない。燃料や弾薬の補充も必要だ。このままでは干上がってしまう。俺は戦車を操縦した。
 静かだった。時折、鳥の声が聞こえた。
 するとまた敵兵が現れた。今度は大型だ。闘っても勝ち目はなさそうなので俺は逃げた。が、相手も追いかけてきた。俺は操縦を誤った。崖を滑り落ちてしまった。
「うわあああ~~~~~」
 俺は叫んだ。こんなところで死ぬなんていやだ。俺はハンドルを掴んだ。ぎゅっと掴んだ。
 戦車が地面に激突した。俺は意識を失った。
 意識を取り戻すとそこは謎の施設だった。俺はまだ戦車の中にいたが、カメラが生きていたのでわかった。そこがどこなのかわかった。
 うう、と俺はうめいた。
 すると声がした。
「お目覚めのようだね」
「だれだ」
「私はドクターマクマケンだ。いいかい君は落ちていたのだ。だから拾った。わかるね」
「わかる」
「よろしい。では君の戦車の情報を開示したまえ」
「知らない! いつの間にか乗っていたんだ」
「うそはよくないな。無人機ども、やってしまえ!」
 わらわらと無人機たちが近寄ってきた。俺は赤いボタンを殴って戦車を覚醒させた。
『おおおおおおおおーーーーーん・・・・』
「戦車が・・・泣いてる・・・?」
 マクマケンの驚愕が伝わってきた。俺は雄叫びをあげて戦車を覚醒させたまま動かした。無人機たちに次々と砲弾があたる。
「これほどまでとは・・・わがマクマケンシリーズの最高傑作は伊達ではないな・・・ぐ、ぐわー」
 マクマケンが爆発に巻き込まれて消し炭になった。
 俺はシャッターを撃ち抜いて外へ出た。もう夕方だった。
「くそ、こんなところで夜を迎えるなんて危険すぎる!」
 俺はハンドルを叩いた。すると地面に入り口が見えた。坂になっている。俺はそこへ滑り込んだ。
「なにがあるんだろう」
 俺は純真な興味にひかれて坂をおりた。
 中は洞窟になっていた。俺はきゅるきゅると進んだ。するとまたもや敵が現れた。俺は撃ちまくったが、落盤をまねいてしまった。
「う、うわー」
 俺は意識を失った。闇の中で、マクマケンの笑い声がした。



「う、うう」
「気がついた?」
 意識を取り戻すとそばに別の戦車がいた。
「きみは」
「私は階級8のエリート大尉よ。あ、エリートは名前じゃないからね」
「そうか。俺は階級3の普通の少尉だ。よろしく大尉」
「ええ、よろしく」
 俺とエリート大尉はカメラ越しに握手した。
「ここは?」
「かつて軍が建設した地下通路よ。あなたは落盤に巻き込まれたの・・・そこを私が通りかかったってわけ」
「なるほど・・・ありがとう助かったよ」
「どういたしまして。もう弾薬をいただいたからお礼はいいわ」
「あ、このやろう!」
「うふふ」
 俺たちは和気藹々として通路を進んだ。
「出口は?」
「もうすぐよ」
「これでやっと基地に帰れる」
「そうね、私もPXの食事が待ち遠しいわ」
 だが、エリート大尉が基地に帰ることはなかった。突如頭上が落ちてきた怪物にエリート大尉の戦車は押し潰されてしまった。
「大尉、大尉ーっ!」
 もう大尉の返事はない。怪物は戦車のハッチから首を突っ込んで何かをむさぼり食らっていた。
「こ、この野郎! 貴様はいったいなにものだ! どこの所属だ!」
「grrrrrrrr」
「言葉も通じないのか・・・けだものめ!」
 俺は戦車砲をぶっ放した。ぶっ放しつつ、情報をコンピュータから引き出した。
「なんだって・・・あれが異種生命体デルタ・・・だというのか・・・!!」
 宇宙人と闘うのは初めてだった。しかしコンピュータにサポートしてもらって俺はデルタと奮闘した。だが劣勢だった。
「くそ、こんなときにちゃんと頑張れないなんて俺はなんてくそやろうなんだ・・・」
『あきらめないで!』
「っ! その声は・・・戦車・・・・!?」
『私がそばにいるわ・・・いつでも・・・』
 俺はハッチから緊急射出された。洞窟の地面に転がって、ばっと顔を上げた時にはもう、戦車が怪物に突っ込んでいくところだった。
「戦車、戦車ーっ!!!!!!!!!!!!」
『忘れないで・・・あなたは一人じゃない、ってことを』
「戦車あああああああああああ~~~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ちゅっどおおおおおおおおおんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 すべてが閃光に包まれて、俺は意識を失った。
 俺が助け出されたのは三日後のことだった。俺はあらいざらいを上司に話した。上司は涙ながらに俺の話を聞き、俺の戦車に名誉勲章をくれた。だがもう俺の戦車は戻ってこない・・・・勲章なんていくらもらったって、あの優しい戦車の声を聞くことはもうないのだ。



 俺は退役した。いまでも前線では憎むべき宇宙人やくそったれの宇宙信奉テロリスタたちの未来のない闘いが続いている。宇宙人と闘うのも、思想の合わない人間と争うのも、俺はもう嫌になった。そんなことを繰り返しているからいつまで経っても成長しないのだ・・・


 俺はあの洞窟で拾った戦車の欠片を今でも持っている。それを見るたびに勇気が湧くのだ。戦争はよくない・・・軍隊もくそったれだ。平和に生きていくことこそ一番なのだ。
 そう、戦車が言っているから。






「完」
10

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